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キケロー『カエリウス弁護』8



(8) illud tamen tē esse admonitum volō, prīmum, ut, quālis es, tālem tē omnēs esse exīstiment, ut, quantum ā rērum turpitūdine abes, tantum tē ā verbōrum lībertāte sēiungās; deinde, ut ea in alterum nē dīcās, quae, cum tibi falsō respōnsa sint, ērubēscās. quis est enim, cui via ista nōn pateat, quis est, quī huic aetātī atque istī dignitātī nōn possit, quam velit, petulanter, etiam sī sine ūllā suspiciōne at nōn sine argūmentō male dīcere? sed istārum partium culpa est eōrum, quī tē agere voluērunt; laus pudōris tuī, quod ea tē invītum dīcere vidēbāmus, ingenī, quod ōrnātē polītēque dīxistī.

(8) しかしながら,君には次のことを忠告されていただきたい.まず,すべての人々が君をあるがままの姿で評価するようにするため,君が色々な物事の醜悪さから離れている程度,言葉を出任せに話すことから君は離れるように,ということ.次に,君に対しても出鱈目で言われたなら君が赤面してしまうようなことは,他の人にも君は言わないように,ということです.というのも,誰が君のやっているやり方が行えない者があるでしょうか,誰がこの年端と君程度の威厳に対して,思うがままにしつこく,たとえ何の疑いもないのに,しかしちゃんと論拠を立てて悪口をいうことができないでしょうか.しかしながら,君が担った役割の咎は,君がその役を担うことを望んだ人々のそれなのです.我々は君が嫌々それを言っているのを見ているわけだから,君の羞恥心は賞賛に値します.君は見事に洗練された形で語ったのだから,君の才能は賞賛に値します.


【2018/03/01 20:31】 Cicero Pro Caelio | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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キケロー『カエリウス弁護』7



(7) quam quidem partem accūsātiōnis admīrātus sum et molestē tulī potissimum esse Atratīnō datam. neque enim decēbat neque aetās illa postulābat neque, id, quod animum advertere poterātis, pudor patiēbātur optimī adulēscentis in tālī illum ōrātiōne versārī. vellem aliquis ex vōbīs rōbustiōribus hunc male dīcendī locum suscēpisset; aliquantō līberārius et fortius et magis mōre nostrō refūtārēmus istam male dīcendī licentiam. tēcum, Atratīne, agam lēnius, quod et pudor tuus moderātur ōrātiōnī meae et meum ergā tē parentemque tuum beneficium tuērī dēbeō.

(7) 実に告発のこの部分がアトラティーヌス君に任されたことに私は驚き,とりわけ遺憾に思っているのです.というのも,それは相応しいことではなかったし,彼の年齢もそれを要求するものではなかったし,これはあなた方もお気付きのことでありますが,この最も優れた若者の羞恥心は,このような弁論に彼が取り組むのを我慢できなかったのです.あなた方より年季の入った方々の誰かが,この悪口を言う役割を引き受けて下さるとよかったのですが.私はずっとより滔々と力強く,より私流に,あなた方の悪口の言いたい放題に論駁するところなのですが.君にはだ,アトラティーヌス君,私は穏便にやるとしましょう,というのも君の羞恥心は私の弁論を手加減させてしまうし,私の君と君の親に対する好意は私は守る義務があるのですから.


【2018/02/28 01:25】 Cicero Pro Caelio | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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キケロー『カエリウス弁護』6



(6) equidem, ut ad mē revertar, ab hīs forēnsis labor vītaeque rātiō dēmānāvit ad exīstimātiōnem hominum paulō lātius commendātiōne ac iūdiciō meōrum.

(6) 実際この私自身,私のことに立ち戻るために申し上げますが,これらの源泉から,法廷の仕事と生業が始まり,それは少しばかりより大きい流れとなって人々の評価へと広まっていったのですが,それは私の周りの人々の後押しと判断のおかげなのです.

 nam quod obiectum est dē pudīcitiā quodque omnium accūsātōrum nōn crīminibus sed vōcibus maledictīsque celebrātum est, id numquam tam acerbē feret M. Caelius, ut eum paeniteat nōn dēfōrmem esse nātum. sunt enim ista maledicta pervolgāta in omnīs, quorum in adulēscentiā fōrma et speciēs fuit līberālis. sed aliud est male dīcere, aliud accūsāre. accūsātiō crīmen dēsīdeat, rem ut dēfīniat, hominem notet, argūmentō probet, teste cōnfirmet; maledictiō autem nihil habet prōpositī praeter contumēliam; quae sī petulantius iactātur, convīctum, sī facētius, urbānitās nōminātur.

 品行について非難されたこと,そして告発者皆の起訴理由ではなく,文句と悪口によって表明されたことについてですが,マールクス・カエリウス君は,それを心苦しく感じるあまり,なんで自分が醜く生まれなかったんだと悔いてしまうようなことは決してないでしょう.というのも,この手の悪口は,若い頃に見目形の優れた方々皆に言われる非常にありふれたものですから.しかし,悪口を言うことと,告発することとは全く別物です.告発というものは,事態を正確に把握し,当事者を挙げ,証拠により証明し,証人により立証するために,起訴理由を必要とするのです.しかるに,悪口というものは,貶め以外の何らの目的も持ちません.それをもっとしつこく言い続けるのなら罵詈雑言と呼ばれますし,まだ気の利いたやりかたでそうされれば,ユーモアと呼ばれます.


【2018/02/26 22:59】 Cicero Pro Caelio | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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キケロー『カエリウス弁護』5



(5) Nam quod est obiectum mūnicipibus esse adulēscentem nōn probātum suīs, nēminī umquam praesentī Praetuttiānī maiōrēs honōrēs habuērunt, iūdicēs, quam absentī M. Caeliō; quem et absentem in amplissimum ōrdinem cooptārunt et ea nōn petentī dētulērunt, quae multīs petentibus dēnegārunt. īdemque nunc lēctissimōs virōs et nostrī ōrdinis et equitēs Rōmānōs cum lēgātiōne ad hoc iūdicium et cum gravissimā atque ōrnātissimā laudātiōne mīsērunt. Videor mihi iēcisse fundāmenta dēfēnsiōnis meae, quae firmissima sunt sī nītuntur iūdiciō suōrum. neque enim vōbīs satis commendāta huius aetās esse posset, sī nōn modo parentī, tālī virō, vērum etiam mūnicipiō tam inlūstrī ac tam gravī displiceret.

(5) さて,その若者が,彼の同郷市民たちにはよく思われていないと非難されていることについては,こう言いましょう.裁判官の皆さん,プラエトゥッティイー*1の人々は,地元にいる誰にも,地元から離れているマールクス・カエリウス君に与えた以上の栄誉を与えなかったのです.彼らは地元から離れているその彼を,最も重要な序列に選出し,そして多くの人が欲していても与えなかったものを,欲してもいない彼に授与したのです.その同じ人々は,今や我々の階級に属する人々とローマ騎士の精選された人々を,使者とともに,また,極めて重々しく極めて立派な推薦状ともに,この裁判に送ってきたのです.思うに,彼の関係者の判断に支えられているとすれば極めてしっかりしたものとなる弁護の礎石を私は置き終えたと思います.というのも,これほどの人物である父親にのみならず,かくも著名で重要な自治都市にも嫌われているとすれば,この年齢の人物があなた方に十分推賞されることなどないはずなのですから.


*1 この地図の H e 中央やや北東にある町 Interamnia (現テラモー)に住んでいた住民.この Interamnia は Interamnia Praetuttiōrum と呼ばれる自治都市.



【2018/02/22 19:40】 Cicero Pro Caelio | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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キケロー『カエリウス弁護』4



(4) equitis autem Rōmānī esse fīlium crīminis locō pōnī ab accūsātōribus neque hīs iūdicantibus oportuit neque dēfēndentibus nōbīs. nam quod dē pietāte dīxistis, est ista quidem nostra exīstimātiō, sed iūdicium certē parentis. quid nōs opīnēmur audiētis ex iūrātīs; quid parentēs sentiant, lacrimae mātris incrēdibilisque maeror, squālor patris et haec praesēns maestitia, quam cernitis, lūctusque dēclārat.

(4) しかし,そのローマの騎士の息子であることが告発者らによって起訴理由とされたことは*1,それはここにおられる裁判官諸氏から見ても,我々弁護陣から見ても,なされるべきことではありませんでした.さて,親思いの念についてあなた方が語ったことについて言えば,そのあなた方の評価は,確かに我々の思うところでもありますが,しかし,それは親が判断することであることは確かです.この我々がどのような見解を持つかは,あなた方は裁判官諸氏から聞くことになるでしょう.両親がどう思っているかについては,母親の涙と信じ難いほどの悲しみ,父親のやつれ様と,あなた方が見ているところのこの眼前の悲しみ様と悲嘆が物語っております.

*1 キケローは原告に不利な感情を裁判官らに持たせるために起訴理由をわざと不正確に歪めている.


【2018/02/22 02:35】 Cicero Pro Caelio | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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キケロー『カエリウス弁護』3



(3) Ac mihi quidem vidētur, iūdicēs, hic introitus dēfēnsiōnis adulēscentiae M. Caelī maximē convenīre, ut ad ea, quae accūsātōrēs dēfōrmandī huius causā et dētrahendae spoliandaeque dignitātis grātiā dīxērunt, prīmum respondeam. obiectus est pater variē, quod aut parum splendidus ipse aut parum piē tractātus ā fīliō dīcerētur. dē dignitāte M. Caelius nōtīs ac maiōribus nātū etiam sine meā ōrātiōne tacitus facile ipse respondet; quibus autem propter senectūtem, quod iam diū minus in forō nōbīscumque versātur, nōn aequē est cognitus, hī sīc habeant, quaecumque in equite Rōmānō dignitās esse possit, quae certē potest esse maxima, eam semper in M. Caeliō habitam esse summam hodiēque habērī nōn sōlum ā suīs sed etiam ab omnibus, quibus potuerit aliquā dē causā esse nōtus.

(3) さて裁判官諸君,私としては実際,次のように若者マールクス・カエリウス君の弁護を開始するのが,最も適切だと思われます.すなわち,原告らが,この者を貶めんがため,その威信を引き下げ剝ぎ取らんがために語ったことごとに対して,私が答えるという形でです.父親*1が様々な仕方で非難されております.というのも,あるいはご自身があまり立派ではない,あるいは息子からあまり孝行されていないと言われているとかいう理由でです.しかしこのマールクス・カエリウス氏は,知人や年上の方々には,私の弁論なぞなくとも,黙したままで容易にご本人が答えているところです.だが彼も高齢のため,もうずっと長いことフォルムで私どもと交わることもなかったゆえ,それと同じ程度には彼のことをご存じない方々もいらっしゃるが,その方々にはこのようにお考えいただきたい.ローマの騎士にありうるいかなる威信も(そしてそれは間違いなく最高のものでありうるものですが),常にこのマールクス・カエリウス氏の中に最高峰のものとして存在すると思われてきたし,今日も存在すると思われているのです.それは,ただ近親者の人々にだけそう思われているだけではなく,何らかの理由で彼と知り合いになったような方々にもそう思われているのです.

*1 息子と同名の父親マールクス・カエリウス(翻訳ではマールクス・カエリウス氏として区別).


【2018/02/20 02:21】 Cicero Pro Caelio | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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キケロー『カエリウス弁護』参考文献

 『カエリウス弁護』の参考文献などを挙げておきます.

 日本語訳は今の所ネット上にしかないようです.

  世界の古典つまみ食い 『カエリウス弁護』対訳版

 こちらで対訳版で出ているので,うちのブログで翻訳する意味はもう大方ないようなものですが,僕のリハビリですからご容赦ください.「世界の古典つまみ食い」さんのサイトでは卜占論も全訳が出ているほか,キケローはかなり手がけていて,多くは対訳になっています.

 『カエリウス弁護』自体は難解というわけではなく,むしろ初学者用のテキストとしてはかなりたくさん出ていて,それも文法が終わった直後の,念入りな文法解説付きの初心者用の注釈書も多いですね.日本語訳が出ていないのが不思議です.

 定番の校訂本はとなると,次のものが最新です.

  Maslowski, Tadeusz ed. Orationes in P. Vatinium testem, pro M. Caelio. Stuttgart u. Leipzig:
    Teubner, 1995. Reprint. Berlin: de Gruyter, 2014.

 最新ではないですが,一冊校訂本ということになると,Austin のコメンタリー付きで十分間に合うでしょう.

  Austin, R. G. Cicero: Pro M. Caelio Oratio. Edited with Introduction and Commentary by.
    3rd ed. Oxford: Clarendon Press, 1960.

 文法を終わった初心者が一番最初に手に取る注釈書としては次の Ciraolo のものが懇切丁寧です.

  Ciraolo, Stephen. Cicero: Pro Caelio. Text, Notes, Bibliography. Wauconda: Bolchazy-Carducci,
    3rd Ed. 2003.

 次の二つもほぼ同レベルの初心者用注釈書.Keitel and Crawford のほうは,巻末に重要語彙集(全語彙ではない)もついているので,単語暗記用に大変便利だと思います.

  Englert, Walter. Cicero: Pro Caelio. Bryn Mawr Commentaries. Bryn Mawr: Thomas Library,
    Bryn Mawr College, 1990.

  Keitel, Elizabeth and Jane W. Crawford. Cicero: Pro Caelio. Edited with an Introduction and Notes by.
    Focus Classical Commentary. Newburyport: Focus, 2010.

 もう少し詳しい最新の注釈書.

  Dyck, Andrew R. Cicero: Pro Caelio. Edited by. Cambridge Greek and Latin Classics.
    Cambridge: Cambridge University Press, 2013.


 日本語論文でちょっと気になるものでも.ローマ法学者によるキケロー論文ですから,非常に興味深いです.

   柴田 光蔵 「「カエリウス弁護論Pro Caelio」素描(キケローMarcus Tullius Ciceroの法廷弁論をめぐって-2-)-1- 」
    「「カエリウス弁護論Pro Caelio」素描(キケローMarcus Tullius Ciceroの法廷弁論をめぐって-(2)-)-2完- 」
    『法学論叢』83号(1), pp. 90-111, 83号(3), pp. 88-100, 1968.

 なお,英訳など他国語との対訳版は Loeb, Reclam などありますが,Loeb は1960年ぐらいのもののはずで,相当古いです.ほかの翻訳が入っているにしても,買う意味があるかどうか…….それなら普通に Perseus を使うのをお勧めしたいですね.ドイツ語対訳の Reclam は1994年出版で最新ではないですが,Amazon で637円ですから,コスパはまあいいでしょうね.



【2018/02/19 02:47】 Cicero Pro Caelio | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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キケロー『カエリウス弁護』2



(2) Etenim sī attendere dīligenter atque exīstimāre vērē dē omnī hāc causā volueritis, sīc cōnstituētis, iūdicēs, nec dēscēnsūrum quemquam ad hanc accūsātiōnem fuisse, cui utrum vellet licēret nec, cum dēscendisset, quicquam habitūrum speī fuisse, nisī alicuius intolerābilī et nimis acerbō odiō nīterētur. sed ego Atratīnō, hūmānissimō atque optimō adulēscentī, meō necessāriō, ignōscō, quī habet excūsātiōnem vel pietātis vel necessitātis vel aetātis. sī voluit accūsāre, pietātī tribuō, sī iussus est, necessitātī, sī sperāvit aliquid, pueritiae. cēterīs nōn modo nihil ignōscendum sed etiam ācriter est resistendum.

(2) なんとなれば,もし真摯に注意を向け,そうして本当にこの裁判全体について判断を下すつもりになれば,裁判官諸君,あなた方は次のように判断されることでしょう.すなわち,するしないのどちらの選択も強制されないのであれば,誰であれ,この告発に及ぶような真似などしないはずで,もしそんな真似をしたとすれば,誰かに対する耐え難く且つ度を超えて激しい憎しみに依存しているのでなければ,何の成果の希望も持ち得ないはずだと.しかし,私としては,最も人間味溢れ,そうして最良の若者であり,私にとってかけがえない人物であるアトラティーヌス君は容赦したい.彼は,あるいは親思いか,あるいは必要性か,あるいは年齢かのいずれかの事情があるのです.もし告発したかったのであれば,それは親思いのためと,もし命じられたのなら,それは必要性のためと,もし何かを望んでのことなら,未熟のためと私はしましょう.他の者に対しては,私は何ら容赦はしないどころか,激しく抵抗せねばなりません.


【2018/02/19 01:22】 Cicero Pro Caelio | TRACKBACK(0) | COMMENT(1) | 記事修正

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キケロー『カエリウス弁護』1



Pro Caelio

(1) Sī quis, iūdicēs, forte nunc adsit ignārus lēgum iūdiciōrum cōnsuētūdinisque nostrae, mīrētur profectō, quae sit tanta atrōcitās huiusce causae, quod diēbus fēstīs lūdīsque pūblicīs, omnibus forēnsibus negōtiīs intermissīs, ūnum hoc iūdicium exerceātur, nec dubitet, quīn tantī facinoris reus arguātur, ut eō neglēctō cīvitās stāre nōn possit. īdem cum audiat esse lēgem, quae dē sēditiōsīs cōnscelerātīsque cīvibus, quī armātī senātum obsēderint, magistrātibus vim attulerint, rem pūblicam oppugnārint, cotīdiē quaerī iubeat, lēgem nōn improbet, crīmen quod versētur in iūdiciō, requīrat; cum audiat nūllum facinus, nūllam audāciam, nūllam vim in iūdicium vocārī sed adulēscentem inlūstrī ingeniō, industriā, grātiā accūsārī ab eius fīliō, quem ipse in iūdicium et vōcet et vōcārit, oppugnārī autem opibus meretrīciīs, Atratīnī ipsīus pietātem nōn reprehendat, libīdinem muliebrem comprimendam putet, vōs labōriōsōs exīstimet, quibus ōtiōsīs nē in commūnī quidem ōtiō liceat esse.

『カエリウス*1弁護』*2

(1) 裁判官諸君,もし誰か我々の法律・裁判・慣習に不案内な人物が今たまたまここにいたなら,その人は間違いなく驚くことでしょう,祝日で公の見世物が開催される中*3,全ての法廷の仕事が中断されているという時に,一つだけこの裁判が行なわれるからには,本件のかくほどまでの悪質さとは何であるのか,と.そして,これを無視するなら国家が立ち行かなくなる可能性のあるほどの,それほどの巨悪の被告が告発されていることを,その人は疑いもしないでしょう.その同じ人物が,武装して元老院を占拠しては官吏らに暴力を振るい国家に楯突く反逆的で邪な市民どもについてはいかなる日でも審理すべしと命ずる法律*4がある,ということを聞かされれば,その人は法律に異を唱えたりせず,どんな起訴理由*5がその裁判で問題になっているのかと,尋ねることでしょう.が,いかなる悪事も,いかなる暴挙も,いなかる暴力も裁判にかけられているわけではなく,輝かしい才能・勤勉さ・魅力に溢れた若者*6が,彼自身が今告発してもいるし,過去告発したところの人物のその息子*7によって告発され,さらには売春婦*8の資力を使って攻撃されているということをその人が聞けば,アトラティーヌス自身の親思いを責めはせず,その女の好き勝手こそ掣肘すべきと考え,公の休日の日でさえ休むことさえ許されぬようなあなた方は,忙しいにもほどがあると思うことでしょう.

複雑な背景については別に解説予定.ここでは注は最小限.( )内の数字は Scot 版のもの.
*1 Mārcus Caelius Rūfus (前87/86年-前43年3月末).
*2 Lūcius Semprōnius Atratīnus (*前73?-7)による告発に対する,キケローのCaelius の弁護演説.告発内容はナポリでの暴動加担,アレクサンドリアからの使者への攻撃,その一員の哲学者ディオーンの殺害,パッラという人物からの財産没収,クローディアの毒殺未遂.裁判は前56年4月3日か4日に行われた.
*3 4月4日はマグナ・マーテルのためのメガレーンシア(Megalēnsia)という祝日.
*4 lēx Plautia dē vī「暴力に関するプラウティウス法」で,おそらく前70年に制定.カエリウスも有罪となればこれにより裁かれる.
*5 crīmen はラテン語では起訴,あるいは起訴理由であって,「犯罪」の意味にはならない.
*6 *1 のカエリウス.
*7 Bestia Semprōnius Atratinus をカエリウスはすでに告発しており(この時のBestia の弁護人はキケローその人で無罪放免),現時点でも告発を行っていた.その息子のアトラティーヌスはここで逆にカエリウスを告発している.
*8 Clōdia Metelli (前93-?歿年はこの裁判後であること以外は不明)を指す.カトゥッルスでレスビアと呼ばれる女性は実はこの女性だと言われる.


【2018/02/15 00:13】 Cicero Pro Caelio | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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