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ラテン語入門 17 第2変化 (o幹) 名詞 (2) -er に終わる男性名詞

 先に第2変化名詞のうち,-us に終わる男性名詞を見ました.表でもう一度見ておきましょう.

第2変化名詞(o幹) -us に終わる男性名詞 dominus 「主人」
      単数  複数
主格  dominus 「主人は」 dominī 「主人たちは」
属格  dominī 「主人の」 dominōrum 「主人たちの」
与格  dominō 「主人に」 dominīs 「主人たちに」
対格  dominum 「主人を」 dominōs 「主人たちを」
奪格  dominō 「主人で,から」  dominīs 「主人たちで,から」
呼格  domine 「主人よ」 dominī 「主人たちよ」 = 複数は主格と同じ

 -er に終わる男性名詞は,基本的にこれと一部しか変るところがありません.つまり,単数主格と,単数呼格です.-er に終わる男性名詞は,二つのタイプに分類されます.変化表で見てみると……

      単数  複数        単数   複数
主格  puer 「少年は」 puerī 「少年たちは」
  主格  ager 「畑は」 agrī 「畑たちは」
属格  puerī 「少年の」 puerōrum 「少年たちの」
  属格  agrī 「畑の」 agrōrum 「畑たちの」
与格  puerō 「少年に」 puerīs 「少年たちに」
  与格  agrō 「畑に」 agrīs 「畑たちに」
対格  puerum 「少年を」 puerōs 「少年たちを」
  対格  agrum 「畑を」 agrōs 「畑たちを」
奪格  puerō 「少年で,から」  puerīs 「少年たちで,から」
  奪格  agrō 「畑で,から」  agrīs 「畑たちで,から」
呼格  puer 「少年よ」 puerī 「少年たちよ」
  呼格  ager 「畑よ」 agrī 「畑たちよ」


 赤のマーキングがしてある e をみるなら,一方の puer では,主格の e がそれ以外の格(斜格と呼びます)でも puerī, puerō のように保たれていますが,ager のほうは,斜格では agrī, agrō のように,呼格以外は e が消えています.いずれも,単数呼格に -e は付かずに,主格と同じ形になります.まとめると:

  (A) puer, puerī 型……単数主格が斜格の語基と同じもの
  (B) ager, agrī 型……斜格の語基が単数主格と異なり,r の前の e が欠落するもの

 このような二つの形が生まれたのは,実はラテン語の歴史が絡んでいます.まず,どちらも単数主格の本来の形は 語基がそれぞれ r に終わる *puer-, *agr- に,単数主格の格語尾の(後に-us となるはずの) -os のついた,*pueros,*agros でした.

 (A) の *pueros の語尾の o は,重い音節(長母音または子音二つ分が母音に続く音節,あるいは多音節)の後の語末の音節で r もしくは t と s の間の o が消失するという音変化(公式: (i, o) > ø / (t, r)_s# ただし重い音節の後で)を受け,*pueros > *puers となります.その後 rs > rr により *puerr >,rr の二重子音は語末ではゆるされず,単音化するので *puer となります.

 (B) は元の形が元々 e のない *agros で,これも r もしくは t と s の間の o が消失するという音変化をうけて *agrs になります.r はこの時,母音扱いされて *ags となり,この が母音+ r となって agers > agerr > ager となります.つまり,本来の agr- の語基は斜格には agrī, agrō のようにそのまま残されたのですが,主格でのみ語基と r の間に e が後から生じて,ager となり,あたかも puer と同様 -er に終わることとになったのです.

 (A) puer, pueri 型に属する名詞は……

  gener, generī m. 義息  socer, socerī, m. 義父  vir, virī m. 男(語幹に e は入っていませんが)
  vesper, vesperī m. 夕暮れ lūcifer, lūciferī, m. 明けの明星
  līberī, līberōrum m.pl. 子供  posterī, posterōrum m.pl. 子孫  
  īnferī, īnferōrum m.pl. 冥界の住人,死者  superī, superōrum m.pl. 天上の住人=神々

 最後四つは,通常単数がなく,複数形のみが主に集合名詞的に使われる名詞(まれに単数にも使われる).プルーラーリア・タントゥム(plūrāria tantum「只複数だけ」)と呼ばれます.このような名詞は,複数形の主格と属格があげられ,性の後に複数を意味する pl. が添えられます(これについて網羅的に集めているのが Kühner-Holzweissig: pp. 501 以下です).
 逆に単数しか使われない語もあり,こちらは シングラーリア・タントゥム(singulāria tantum「只単数だけ」)と呼ばれます.上の lūcifer のように,一つしかない天体,物質名詞などがシングラーリア・タントゥムになります.ただし,どちらも例外がたまに見つかる場合もありますから,絶対一方の形しかないとも言えません.
  
 (B)に属する名詞は……

  aper, aprī m. 猪  caper, caprī m. 山羊
  liber, librī m. 本(上の līberī「子供」と混同しないよう!)
  magister, magistrī m. 教師  faber, fabrī m. 職人  minister, ministrī, m. 召使い
  culter, cultrī, m. 小刀

 ラテン語の基本的語彙の中では,上の例ぐらいしかないようです(基本単語帳などを目視で探した限りでは).ラテン語全体の語彙ではもっと沢山あると思いますが,大体これだけで代表的な語彙はすべて出尽くしていると思います.また気がついたら追加すると思います.

 なお,辞書では,もし属格の形を省略形で表記するなら,puer のほうは puer, -erī, m. のように,また ager のほうは ager, -grī, m. のように記述されされます.ここでは余計な混乱を避けるため,形を全部あげるようにします.


最後に練習.上の語彙で,変化表を作ってみて下さい.(答えは上の単語にカーソルを当てるとでます)

名詞変化表

     単数複数
主格 
属格 
与格 
対格 
奪格 
呼格 
  
 
 
 
 
 

      


動詞も少し復習しましょう.直説法現在時制能動態の人称変化を作って下さい.さすがに全部に解答は付けなくていいですね…….secō と rīdeō だけ解答を付けました.(動詞のところ少し誤植があったので訂正しました)

  castīgō, castīgāre, castīgāvī, castīgātum 「叱る」
  secō, secāre, secāvī, sectum 「切る,切り裂く」
  dōnō, dōnāre, dōnāvī, dōnātum 「贈る」
  laudō, laudāre, laudāvī, laudātum「讃える,褒める」
  fleō, flēre, flēvī, flētum 「泣く」
  rīdeō, rīdēre, rīsī, rīsum 「笑う」


     単数複数
一人称 
二人称 
三人称 
  
 
 

      




ラテン語は日本語に,日本語はラテン語に訳してみてください.文にカーソルで解答がでます.
Magister puerīs librōs dōnat.   
Puerī magistrō librum dōnant.   
Socer generō aprum dōnat.   
先生は少年たちに本を与える.   
男は職人らに山羊を与える.   
Magistrum puerī laudāmus.   
Dominus magistrum līberōrum laudat.   
Ministrī līberōs fabrī laudant.   
召使いらは少年達を褒めている.   
職人は子供達の教師らを讃えている.   
Virī ministrōs ignāvōs castīgat.   
 (ignāvus 「怠惰な」.形容詞はまだやっていませんが,修飾する語の語尾の形に語尾を変化させればOK)
Magistrī nōn puerōs īgnāvōs laudant.   
Dominus līberōs īgnāvōs castīgat.   
教師は怠惰な少年を叱っている.   
我々は怠惰な職人たちを叱っている.   
Virī cultrīs aprōs secant.   
Minister cultrō aprum secat.   
cultrīs caprum secāmus.   
召使いらは小刀で山羊を切っている.   
Puer, quid rīdēs?   
 (quid なぜ?)
ō magister, quid līberōs dominī rīdēs?   
 (rīdeō は「対格を笑う」の形でも使われる)
Virī, quid flētis?   
義父よ,あなたはなぜ泣いているのか.   
男よ,お前はなぜ怠惰な職人らを笑っているのか.   
      






【2013/10/26 01:45】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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