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ラテン語入門 15 規則動詞の直説法現在時制能動態 (2) 規則動詞の概観と第1変化 (ā幹) 動詞

 書き直しました


 前回では,第2変化動詞の直説法現在時制能動態の変化を覚えました.ここでは,規則変化動詞の5タイプを一旦全て見ておきましょう.


規則動詞dōnō「贈る」, videō「見る」, legō「読む」, capiō「つかむ」,audiō「聞く」の直説法現在時制能動態の変化と現在時制能動態不定詞

第1変化(ā幹) 第2変化(ē幹) 第3変化(子音幹・u幹) 第3b変化(i幹) 第4変化(ī幹)

一人称「私は」 dōnō「私は贈る」 videō「私は見る」 legō「私は読む」 capiō「私は掴む」 audiō「私は聞く」
二人称「君は」 dōnās vidēs legis capis audīs
三人称「彼は」 dōnat videt legit capit audit

一人称「私達は」 dōnāmus vidēmus legimus capimus audīmus
二人称「君達は」 dōnātis vidētis legitis capitis audītis
三人称「彼らは」 dōnant vident legunt capiunt audiunt
現在能動態不定詞
 dōnāre「贈ること」
 vidēre「見ること」
 legere「読むこと」
 capere「つかむこと」
 audīre「聞くこと」


 先に見たように,規則動詞は,幹末母音(赤色)の違いにより,5つのタイプに別れます.幹末音は第一変化では ā,第二変化では ē,第3b変化では i,第4変化では ī,となります(第1変化の一人称単数 dōnō の幹母音消失は,この記事後半で説明します).
 第3変化では音色が i と u になり,不定詞は e が入っています.これは元々の由来が,幹母音と言われる,挿入母音に由来します.これは,例えば leg- のような,子音などに終わる語幹部分と,語尾の部分の直接接触を避けるためのクッションのようなもので,発音のしにくさの回避と語幹と語尾の独立性をたもつために挟まれた挿入母音です.これが,母音と -nt- の前では o, それ以外は e という現れをしていたのです.これはラテン語になってから,語頭アクセントによる弱化を受けて,e だったものは i に,o だったものは u に変化したものです(厳密にいうと,もう少し詳しい説明が必要になるので,それは別の機会に書くと思います).第3b変化,第4変化の三人称複数では,実は幹末母音 i と ī のあとに,この幹母音があるはずなのですが,殆ど脱落し(この原因はまだ解明には至っていないようです),三人称複数のみに,これも弱化で u になった幹母音の名残が見られます(このあたりは,第3変化,第3b変化,第4変化を覚える際に,もう少し詳しく説明します).
 第3変化以降は,やや幹末母音の統一性が乱れるところはありますが,赤くマーキングしている幹末母音と幹母音の部分を除くと,語尾の部分はすべて -o -s -t -mus -tis -nt となっていることがわかります.ですから,覚えることは多いとは言え,関連性は十分あるので,前回の第2変化を覚えた今となっては(覚えていればですが),覚えにくいことはないと思います.

 表の一番下の欄は,現在能動態不定詞です.これは,「……すること」の意味を表す,動詞の名詞的な形態です.英語でいえば,to 不定詞にあたるものです.ラテン語では,不定詞には -re という語尾を動詞語幹につけます(実は元は -se で,母音間で s > r となる,ロータシズムという有名な変化が起きた).dōnā-re,vidē-re, audī-re についてはこの語尾はそのままついています.第3変化は,これも leg- に -re を付けるのですが,やはり幹母音が加わって,legere になりました(弱化は受けているのですが,r の前では e に弱化するだけなので,かわらない).第3b変化は,これももとは i 幹で *capire だったのですが,これも弱化を経て capere になりました.このあたりは,第3b変化,第4変化を覚える際に,もう少し詳しく説明します.

 ラテン語の動詞は,直説法現在時制能動態の一人称単数の形に,現在能動態不定詞の形を添えると,上の5つのタイプのどれかが判明します.一人称単数の形だけだと,第1と第3変化が dōnō と legō で同じ形なのでわかりませんし,不定詞では第3と第3b同じで legere と capere なので,わかりません.両方で5つのタイプを区別します.そして,この5つのタイプの区別がわかれば,動詞の変化のほぼ半分ぐらいが自明となります.さらに,直説法完了時制能動態一人称単数,スピーヌムとよばれる形の2つを加えると,今度は全ての変化がわかります.そのため,辞書の見出しは,

  直説法現在時制能動態一人称単数,現在能動態不定詞,直説法完了時制能動態一人称単数,スピーヌム

という順で四つの形があげられます.上の表の動詞の,辞書での見出しは普通

  dōnō, dōnāre, dōnāvī, dōnātum「贈る」
  videō, vidēre, vīdī, vīsum「見る」
  legō, legere, lēgī, lēctum「読む」
  capiō, capere, cēpī, captum「つかむ」
  audiō, audīre, audīvī, audītum「聞く」

のようになっているはずです(辞書によっては,不定詞は -āre など,語尾で表されたり,自明の時は変化のタイプを数字で表すなど,多少違う形になっていることもあるので,その辞書の方針をよく見て下さい).この4つの形を,動詞基本型と呼びます.まだ完了形やスピーヌムの説明はしていませんが,これからは,新しい動詞をあげる時には,動詞4基本型を常にあげて行きます.特に完了形とスピーヌムは,上の動詞の5つの変化とは別に,単語によってとる形が決まっているので,セットで覚える必要があります.
 ちなみに,前回の練習で用いた第2変化動詞の動詞4基本型は……

  taceō, tacēre, tacuī, tacitum「黙る」 
  rīdeō, rīdēre, rīsī, rīsum「笑う」
  fleō, flēre, flēvī, flētum「泣く」
  valeō, valēre, valuī, valitūrus「元気である」

となります.第2変化の不定詞の形も,ここで覚えてしまってください.ちなみに valeō には目的分詞形がないので,未来分詞 valitūrus で代用.ラテン語ではこのように,一部の変化形が欠けていることがあります.


 さて,動詞の全体像を見たあとで,こんどは第1変化(ā幹)動詞をマスターして行きましょう.まずは変化表から.

第1変化 (ā 幹) 動詞 dōnō「贈る」直説法現在時制能動態の変化
  単数 複数
一人称 dōnō 「私は贈る」  dōnāmus 「私達は贈る」
二人称 dōnās 「君は贈る」 dōnātis 「君達は贈る」
三人称 dōnat 「彼(彼女,それ)は贈る」 dōnant 「彼ら(彼女ら,それら)は贈る」

 上述のように,第1変化動詞は,幹末母音(上の表で赤で示しています)の ā が特徴です.
 一人称単数 dōnō では,この幹末母音があらわれません.上でも簡単に解説しましたが,もう少し詳しく説明すると次のようになります.
 まず,元は *dōnāō.これが,moneō の一人称単数で起こったように,母音の前で長母音が短母音化(公式:Ṽ > / _V)し,*dōnāō > *dōnaō となります.母音 a o が接触していると融合します.この場合は,後ろの長母音 ō の音色になり,dōnaō > dōnō となります.
 dōnat と dōnant の短母音 a は,videō の第2変化動詞の場合と同じです.三人称単数で *dōnāt が dōnat となるのは,語末の -r -l -m -t の前では,長母音は短母音化するためで,三人称複数で *dōnānt が dōnant となるのは,流音 (r l) 鼻音 (m n) 半母音 (i [j] v) + 子音の前で,長母音は短母音化するためです(オストホフの法則).

 さて,第1変化動詞の変化を暗記してしまいましょう.

 動詞変化表

     単数複数
一人称 
二人称 
三人称 
  
 
 

      


以下の第一変化の動詞でも練習してみて下さい.単語にカーソルを当てると,変化がでます.

  cantō, cantāre, cantāvī, cantātum 「歌う」
  saltō, saltāre, saltāvī, saltātum 「踊る」
  clāmō, clāmāre, clāmāvī, clāmātum 「叫ぶ」
  amō, amāre, amāvī, amātum 「愛する」
  habitō, habitāre, habitāvī, habitātum「住む」

ついでに,いくつか他の単語も覚えましょう.

 接続詞の et と -que も覚えましょう.どちらも「そして」にあたりますが,et は A et B で「A と B」,-que は後ろの単語の後ろにつくエンクリティックで,「A Bque」となります.この時,-que の直前の音節にアクセントが来ます.

  cantat et saltat. = cantat saltátque. 彼は歌い,踊る.

 amō 「愛する」という動詞がありながら,目的語がないのは少し寂しいので,代名詞の目的語の形を二つだけ,簡単なので覚えて下さい.

  tē 「君を」 mē 「私を」   例: tē amat. 「彼は君を愛している」

 ラテン語では語順は比較的自由です.ですから,「私は君を愛する」は,tē amō. でも,amō tē. でもかまいません(が,tē amō. がどちらかというと普通です).

 前回の nōn「……ない (英語の not)」ですが,全文を否定する時には,動詞の前におきます.文の一部を否定する時には,その前におきます.

   例: tē nōn amat. 「彼は君を愛していない(彼は君を愛しているの全体を否定)」 
      nōn tē amat.「彼は君のことは愛していない(君だけを否定.別な人を愛している,など)」
       (下のような場合はちょっと翻訳が難しくなりますね)

 日本語はラテン語に,ラテン語は日本語に訳して下さい.問題文にカーソルを当てると解答がでます.

dōnās.    
nōn dōnat.    
dōnāmus.    
君たちは贈らない.    
私は贈る.    
nōn tē amō.    
tē nōn amat.    
mē amātis.    
彼らは私を愛していない.    
君は私を愛している.    
clāmant.    
clāmātis.    
nōn clāmō.    
彼は叫ばない.    
君は叫ぶ.    
cantat saltatque.    
cantāmus saltātisque.    
cantō et saltās.    
私は歌い,そして君達は踊る.    
彼らは歌い,そして踊る.    
Rōmae habitō. (Rōmae は「ローマに」)    
nōn Rōmae habitāmus.    
Rōmae habitātis.    
君はローマに住んでいる.    
彼らはローマには住んでいない.    
clāmātis.    
cantat et saltat.    
nōn mē amat.    
nōn dōnās.    
Rōmae habitātis.    
彼らは叫んでいない.    
彼らは贈る.    
君たちは踊り,私は歌う.    
我々はローマに住んでいる.    
君は私を愛していない.    
      



最後に有名な一文.

  cum tacent, clāmant. 彼ら(=元老院議員たち)は黙っていることによって,叫んでいるのだ(キケローのカティリーナ追放すべしという意見に賛同して).(キケロー『カティリーナ弾劾』1.21)

語句:taceō, tacēre, tacuī, tacitum「黙る」(前回も上でもでていますが)
 cum は時間を表す従属文を導く接続詞ですが,ここでは「……する時,そのことによって」という意味になります.
 



【2013/10/19 13:18】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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