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ラテン語入門 9 文字と発音など(9) 子音(5) 閉鎖音(黙音)

 最後は閉鎖音です.これも古い用語では,黙音と呼ばれていました.
 ラテン語の閉鎖音は,無声閉鎖音 p t c (k) と有声閉鎖音 b d g があります.さらに,無声帯気閉鎖音 ph, th, ch が,ギリシア語の影響で使われます.調音点はそれぞれ順に唇,歯茎,軟口蓋になります.これらをまとめて表にすると……

  唇    歯茎    軟口蓋  
 無 声 ptk
 有 声 bdg
 無声帯気 phthch

 無声閉鎖音 p t c は,t が若干注意が必要なぐらいでしょう.t はタティ(!)トゥ(!)テトの音になります.p はパピプペポの音,c (k) はカキクケコの音です.発音の難しさは,p t c ではほとんどないと思いますが,ここでもヨーロッパの現代語を勉強している人には,c が [s] (フランス語の ciel など)や [tʃ] (イタリア語 cielo など)の発音にならないように注意してください.c は常時 [k] の発音です.例を挙げると……

  porcus「豚」ポルクス  cīvis「市民」キーウィス  caput「頭」カプト
  vetus「古い」ウェトゥス  taceō「黙る」タケオー  piscis「魚」ピスキス
  populus「市民」ポプルス  

 c について補足ですが,ラテン語では,文字導入の際に,[k] の音を表すのに,C と K と Q の文字があり,当初は K は後ろに a の母音,C は e i の母音,Q は o u の母音が続く時に使われていましたが,次第に C のみで [k] を表すようになり,古典期には K は Kalendae「ついたち」カレンダエ(カレンダーの語源)にしか使われないようになりました.Q のほうは,後で書きますが,QU の組み合わせで [kᵂ] の発音を表すためだけに使われるようになりました.

 有声閉鎖音 b d g についてもそれほど問題はないと思いますが,d は日本語のダヂヅデドではなく,ダディ(!)ドゥ(!)デドの音になるのは注意.他はそのまま b はバビブベボ,d は,g はガギグゲゴの音です.

  bibō「飲む」ビボー  barba「ヒゲ」バルバ  ūber「ウーベル」肥沃な
  dēdūcō「引き下ろす」デードゥーコー  medicus「医者」メディクス  damnum「損害」ダムヌム
  ager「畑」アゲル  nūgae「悪戯」ヌーガエ  gravis「重い」グラウィス

 追記:なお,有声閉鎖音 b が,p t c s f といった無声子音の前にくる時,無声閉鎖音 p になります(公式化すると b > p / _ p t c s f ).例えば……

  urbs「都」ウルプス  obsidēs「人質たち」オプシデース obtineō「占拠する」オプティネオー

同じ現象は,d g が無声子音の前にくる時にも起こり,それどころか単語の境界をはさんでも起こるようです.Leumann: p.196 では at tēgulās (= ad tēgulās)「瓦屋根に(?)」アトテーグラースなどが引用されていますが,まあ入門でそこまで気にすることはないかもしれませんし,個人的にはそう発音される時もあれば,そうでないこともある,というようなバリエーションであったかもとも思います.
  
 無声帯気音 ph th ch は,音声記号で書くと [pʰ] [tʰ] [kʰ] のようになります.これらは気息音を伴った [p] [t] [k] で,プファ,プヒ,プフ……トハ,トヒ,トフ,クハ,クヒ,クフのようになります.実は英語やドイツ語の他の子音が前後にない p, t, k の発音はこの音です.元々ラテン語にはない音で,外来語の人名などに見られたものだったのですが,紀元前100年頃,ギリシア語の帯気音の発音をラテン語本来の p t c にまで適用することが流行り,乱用された時期がありました(カトゥッルスはそれを皮肉った詩を書いていますhttp://litterae.blog8.fc2.com/blog-entry-177.html).この流行にはさすがに抵抗もあり,結局本来の p t k は概ね元通りに発音することになったのですが,それでも幾つかの単語にその名残が残っているほか,碑文などでも散発的に本来的でない帯気音の表記が見られるようです.キケローも一時期すべて帯気音の発音をやめていたと発言しているぐらいですから,発音できなければ普通の p t c と同じでもおそらく差し支えはないと思います.下の単語は,キケローがその後に帯気音付きで発音することにしたものです.

  pulcher「綺麗な」プルクヘル  triumphus「凱旋式」トリウンプフス
  Carthāgō「カルタゴ」カルトハーゴー  Cethēgus「ケテーグス(家名)」ケトヘーグス



【2013/10/12 13:08】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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