FC2ブログ
ラテン語徒然  ラテン語の翻訳・覚え書きなど
log-in  ラテン語入門 作家別インデックス 文法資料 リンク集 ギリシア語フォントについて アーカイブ他
歴史地図 伊北 伊南 希北 希南 小ア PHI Perseus POxy KVK CiNii L-S Georges Gildersleeve 省略記号 Text Archive BMCR DCC BMCR 日本西洋古典学会

ホラーティウス『詩論』453-476 (完結)

ut mala quem scabies aut morbus regius urget
aut fanaticus error et iracunda Diana,
vesanum tetigisse timent fugiuntque poetam  455
qui sapiunt; agitant pueri incautique sequuntur.
hic, dum sublimis versus ructatur et errat,
si veluti merulis intentus decidit auceps
in puteum foveamve, licet 'succurrite' longum
clamet 'io cives', non sit qui tollere curet.    460
si curet quis opem ferre et demittere funem,
'qui scis an prudens huc se proiecerit atque
servari nolit?' dicam, Siculique poetae
narrabo interitum: deus immortalis haberi
dum cupit Empedocles, ardentem frigidus Aetnam 465
insiluit. sit ius liceatque perire poetis;
invitum qui servat idem facit occidenti.
nec semel hoc fecit, nec si retractus erit iam
fiet homo et ponet famosae mortis amorem.
nec satis apparet cur versus factitet, utrum   470
minxerit in patrios cineres, an triste bidental
moverit, incestus: certe furit, ac velut ursus,
obiectos caveae valuit si frangere clatros,
indoctum doctumque fugat recitator acerbus;
quem vero arripuit, tenet occiditque legendo,  475
non missura cutem nisi plena cruoris hirudo.

悪い疥癬か,王の病*1か,
神懸かりの狂気,すなわち怒れるディアーナ*2が苛む者の如く,
狂気の詩人に触れることを,良識ある人々は
恐れ,これを避けます.子供たちは苛めたて,恐れも知らず後を追います.
この者が,頭を高くして詩を吐き彷徨い歩くうちに,
あたかもクロウタドリ*3に熱中している鳥刺しのように,
もし井戸か穴に落ちたなら,たとえ「助けてくれ,
おーい,市民たち」と長々と叫んだとしても,引き上げようとする者はいないでしょう.
もし誰かが力を貸して縄を下ろしてやろうとすれば,
「どうして君はわかるのかね,彼は望んでここに身投げしたのではなく,
助けてもらいたいのだ,などと?」と私は言うでしょう,そしてシチリアの詩人の
死のことを語るでしょう.不死の神と思われることを
エンペドクレース*4は欲して,灼熱のエトナ山に,冷えた心*5
飛び込みました.詩人には死ぬ権利と自由があるべきです.
厭がっている者を助ける人は,殺す人と同じことをしているのです.
また,彼は一度ならずこれをしていますし,もし引っ張りだしても,もはや,
真人間になって美しい死への愛を捨てることは,ないでしょう.
彼がなぜ詩をつくってばかりいるのか,十分に明らかではありません.
先祖の遺灰に小便をしたのか,それとも恐ろしい落雷の跡*6
荒らして不浄の者となったのか.確かに彼は狂っています,そして,あたかも熊の如く,
檻に取り付けられた格子を破る力があったら,
見境なく朗読して学ある者もない者も逃げ惑わせます.
しかしもし誰かを捕まえれば,放さずに朗読し殺します.
血で満腹するまで皮膚を放そうとせぬ蛭なのですから.


*1 黄疸のこと.
*2 ディアーナはギリシア神話の狩りの女神アルテミスと同一視される.アルテミスはさらに月の女神セレーネーとも同一視された.狂気は月によって引き起こされるとされた.
*3 wikipedia参照
*4 前493頃-433頃.シチリアの哲学者,科学者.物の根源は四大元素で,その友愛(集合)・憎悪(離散)で万物が作られるとされた.また,転生を信じ,それを避けて神となることができるとした.
*5 日本語の語感で連想される「冷静な頭で」という意味ではない.愚者の心(横隔膜)の辺りには,冷たい血が流れるとされ,おそらくここの「冷えた心」は「愚かさ」「不活発さ」を意味する表現.
*6 雷に打たれた場所は,聖なる場所とされ,羊の生け贄を捧げる儀式で清められ,柵で囲われた.



【2012/09/14 23:28】 Horatius De arte poetica | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


この記事に対するコメント

TOPへ


この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

TOPへ


この記事に対するトラックバックトラックバックURL
→http://litterae.blog8.fc2.com/tb.php/2156-9b9fd6f2

TOPへ


PROFILE

  • Author:メレアグロス
  • 気が向いた時にラテン語を訳したりしています.
    ヘレニズムのギリシア語もたまに訳しています.

    問い合わせ先(メールフォーム)
  • RSS1.0
  • CM, TB, ARCHIVE

    COMMENT
  • メレアグロス [06/06 15:20] 
  • outis [06/05 21:42] 
  • メレアグロス [06/05 10:37] 
  • outis [06/01 22:33] 
  • メレアグロス [05/28 18:31] 
  • outis [05/26 23:35] 
  • Succarum [09/24 20:12] 
  • メレアグロス [09/24 00:15] 
  • Succarum [09/23 16:32] 
  • メレアグロス [11/06 01:49] 
    TRACKBACK
  • えいじゅなすの本棚 - 英語, 医学, 投資の専門書レビューブログ:Wheelock's Latin(05/26)

  • ARCHIVE
  • 2019年03月 (1)
  • 2018年11月 (1)
  • 2018年08月 (1)
  • 2018年05月 (3)
  • 2018年03月 (20)
  • 2018年02月 (25)
  • 2016年07月 (1)
  • 2016年05月 (1)
  • 2016年01月 (1)
  • 2015年08月 (1)
  • 2015年07月 (1)
  • 2015年06月 (1)
  • 2015年05月 (2)
  • 2015年04月 (1)
  • 2015年03月 (4)
  • 2015年02月 (1)
  • 2015年01月 (1)
  • 2014年12月 (4)
  • 2014年11月 (24)
  • 2014年10月 (6)
  • 2014年08月 (1)
  • 2014年07月 (3)
  • 2014年06月 (10)
  • 2014年04月 (3)
  • 2014年03月 (3)
  • 2014年02月 (1)
  • 2014年01月 (2)
  • 2013年12月 (3)
  • 2013年11月 (4)
  • 2013年10月 (25)
  • 2013年09月 (1)
  • 2013年08月 (5)
  • 2013年07月 (6)
  • 2013年06月 (1)
  • 2013年05月 (2)
  • 2013年04月 (1)
  • 2013年03月 (1)
  • 2013年02月 (2)
  • 2013年01月 (2)
  • 2012年12月 (1)
  • 2012年10月 (6)
  • 2012年09月 (27)
  • 2012年08月 (32)
  • 2012年07月 (47)
  • 2012年06月 (50)
  • 2012年05月 (3)
  • 2009年10月 (1)
  • 2009年09月 (2)
  • 2009年08月 (12)
  • 2009年07月 (7)
  • 2009年06月 (14)
  • 2009年05月 (2)
  • 2009年03月 (40)
  • 2009年02月 (14)
  • 2009年01月 (75)
  • 2008年12月 (26)
  • 2008年11月 (22)
  • 2008年10月 (60)
  • 2008年09月 (95)
  • 2008年08月 (68)
  • 2008年07月 (42)
  • 2008年06月 (54)
  • 2008年05月 (49)
  • 2008年04月 (49)
  • 2008年03月 (35)
  • 2008年02月 (9)
  • 2008年01月 (27)
  • 2007年12月 (40)
  • 2007年11月 (35)
  • 2007年10月 (26)
  • 2007年09月 (43)
  • 2007年08月 (10)
  • 2007年05月 (33)
  • 2007年04月 (8)
  • 2007年03月 (61)
  • 2007年02月 (51)
  • 2007年01月 (75)
  • 2006年12月 (68)
  • 2006年11月 (23)
  • 2006年10月 (56)
  • 2006年07月 (1)
  • 2006年06月 (7)
  • 2006年05月 (125)
  • 2006年04月 (77)
  • 2006年02月 (34)
  • 2006年01月 (69)
  • 2005年12月 (54)
  • 2005年11月 (50)
  • 2005年10月 (7)
  • 2005年09月 (106)
  • 2005年08月 (38)
  • 2005年07月 (4)