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Graecia capta ferum victorem cepit

 前に投稿した翻訳記事の冒頭は,数あるラテン語の格言のなかでも有名な一節です.『アウグストゥス宛書簡』の殆ど中央部にあるのですが,前後を合わせてなかなか読む機会はないかと思います.読める翻訳は,実質的には田中・村上訳しかないわけなので(例の全集は読むのは無理),再版するか,これも新たに西洋古典叢書で出すかしてもらいたいですね.

 半分ほど訳が終わった段階で,Brinkの例の注釈書が届きました.

C. O. Brink. Horace on Poetry: Epistles Book II: The Letters to Augustus and Florus. Cambridge: Cambridge U.P., 1982. paperback, 2011.

早速開封する際に,ページで指を切ってしまいました.どうやら神の如き注釈は生き血で宥められることを要求しているようです…… というのはともかく,これがなかなかすごい注釈でした.もちろん初心者にはおすすめし難いところもありますが,これを読めばどのように一流の学者が理解のために,思い悩み,データーを集め,諸学説をまとめ,自分の解釈を提示するかが判ります.ちょっとした記述にも,極普通に一言一句に悩みながら,それに対する解答を地道に準備しているというのが見える,非常に人間的な注釈書だと思います.本来母語でなかった英語も,むしろ我々には非常に判りやすいですね.

 Wikipediaを調べたら,Brinkの記事がありました.元々ドイツ生まれ(1907年)のいわゆるユダヤ人で,名前もユダヤ系のKarl Oskar Levyだったそうです.Brinkは,後にプロテスタント教会に入信した時に変えた名前で,さらにイギリスに移住して,市民権を得てから,名前をCharles Oskarにしたとのこと.1994年没.ナチスの迫害と第二次大戦など,大変な時期を生き抜いた世代だったのですね.


【2012/07/17 04:04】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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