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ホラーティウス『エポーディー』8歌 (改訂版)

Rogare longo putidam te saeculo
 viris quid enervet meas,
cum sit tibi dens ater et rugis vetus
 frontem senectus exaret
hietque turpis inter aridas natis    5
 podex velut crudae bovis!
sed incitat me pectus et mammae putres,
 equina qualia ubera,
venterque mollis et femur tumentibus
 exile suris additum.          10
esto beata, funus atque imagines
 ducant triumphales tuum,
nec sit marita, quae rotundioribus
 onusta bacis ambulet;
quid quod libelli Stoici inter Sericos 15
 iacere pulvillos amant?
illitterati num minus nervi rigent
 minusve languet fascinum?
quod ut superbo provoces ab inguine,
 ore allaborandum est tibi.      20

17 minus codd.: magis Heinsius:

幾星霜も過ぎ去って老いさらばえた君が聞くってのかい,
 何が僕の精力を萎えさせるのかって?
あなたの歯は真っ黒け,老齢は皺を
 君の額に鋤を入れ,
枯れた尻の間には嫌らしいケツが,(5)
 ちょうど消化不良の牛のそれみたいに,口を開けているってのに!
僕を興奮させようとしてるのは,ちょうど馬の乳房みたいな
 胸と朽ちた乳房だよ?
柔らかい腹や,膨れ上がった臑に
 くっついた,痩せこけた太腿もだ*1.(10)
あなたは幸福であれ,そうして,凱旋をした先祖の胸像が
 あなたの葬列を率い,
あなたのよりも真ん丸い真珠をじゃらじゃら付けた
 奥さんなどいないように!
ストア派の巻き物*2が,よく中国風のクッションの下に転がっているのは (15)
 どういうことなんだ?
それで目に一丁字もないやつらが,陰茎をあまり固くならなくしたり,
 陽物を余り萎えさせないなんてことがあるかね?*3
これを傲慢な男根からひきだすには,
 あなたがお口で御奉仕しなきゃね.(20)


*1 腿が痩せて臑が膨れているのは一般に醜いプロポーションだったらしい.
*2 注釈者は幾つか,このストア派の本の存在について書いています.どれもまあありそうでもなさそうでもある感じなので,個人的な解釈の可能性を書いておきます.
(1)このストア派の本の出てくる下りは,単にこの男の無教養の描写の一部だと思います.大抵はlibellusは,恋愛詩などで,特に小さい寸法のものが,女性に読まれていたようですが,この女性の枕の下にあったのもそのようなものでしょう.ところが,この男は文字が読めないわけですから,本ときたら哲学書かなにかと思っていて,そんなものはアレには役立たないと,無教養を思いっきりむき出しにしてしまうわけです.その後,この最低の教養の男は,高貴な女性に御奉仕をさせようというわけで,とんでもない皮肉で終わるというのが,この最後のところの面白みだと思います.
(2)上の解釈を考えてから,この女性は本当にストア派の本を読んでいたのかもしれないと思い始めました.つまり,この男のナニが萎えているのを,ストアの哲学によって克服しようと考えていたのではないかと(笑).そうすると,冒頭のrogareの意味は,この男への問いであったと同時に,哲学的問いの伏線だったのかもしれませんし,そのほうが面白いでしょう(いわゆるring compositionですね).ちょっと気になっていた,15行の,繋ぎなしでのquid, quod ... も,ベットを見たらストアの哲学書が転がっていて,「なんだこりゃあ?こんなもので勉強しとんのかい?」と,男が驚き馬鹿にする様を活き活きと描いている意味も分ります.次ぎの注で扱うことがもうすこし生きてくるかなあと思います.
*3 テスクトを,通常とられるHeinsiusのmagisではなく,minusで解釈してみました.この場合,「ナニが固くならなくなったり,あまり萎えなくなったりするってのかい?」となり,これは多分自然科学的な現象の説明を暗示しているのではないかと思います(例えば月の満ち欠けなど).哲学には疎いので,よくわかりませんが,ルクレーティウスなどでは,無知なもの達はたしか死の恐怖に怯えたりするが,哲学者は現象を知ることでそれに打ち勝つ,などといった高踏的な哲学の意義付けがあったような気もしますが,illitterati「文字も読めないやつら」は,それの皮肉なのかもしれませんね.

韻律:iambic trimeter + iambic dimeter
x-U- x||-U- x-U- x-UU
  x-U- U-UU

こちらのサイトの翻訳を見て,僕も試しに翻訳してみたくなりました(笑).注釈なども下のサイトのほうが充実しています.
http://d.hatena.ne.jp/prokopton/20051119/p1#seemore


【2005/11/20 06:29】 Horatius Iambi (Epodi) | TRACKBACK(0) | COMMENT(5) | 記事修正

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この記事に対するコメント

リンクありがとうございます


こちらには以前からひそかに覗きに伺っておりました。さすがはよくこなれた訳文になっていますね。メレアグロス様の訳を参考に,私の訳にもいくつか訂正を加えてみました(libelliを「(小)冊子」とするのは拙かったかな・・・など)。


【2005/11/20 13:55】 URL | prokopton #ZeAUyEbg [ 編集]

難しいですね


はじめまして.こちらのprokopton様の翻訳には随分助けていただきました.

 しかし,この詩の最後の所はまだよく解らないですね.17行のHeinsiusのmagisの改訂も,必要かどうかちょっと考えています.magisを読むと,17と18は両方とも「おっ勃つってのかい?」となりますが,写本のminusだと,「より立たなくなるとか(17),/あまり萎えないってことになるのかい?(18)」となって,「勃ったり萎えたり」も悪くないような気がします.ストア派の教義とかは解らないですが,例えば月の満ち欠けなんかの現象を解いたりもしているとすれば,それを暗示しているのかもしれないですね.僕は「お固い本=お固いナニ」という解釈はちょっと疑問ではあります.


【2005/11/20 15:25】 URL | メレアグロス #1N3OCQkI [ 編集]

そうですね


たしかに17-18行目は難しいですね。「お固いストア派=お硬いナニ」解釈は,このlibelliがとくにストア派の本とされている点を説明してくれるように思ったので採用してみたのですが,他の解釈の可能性も色々と考えられそうですね。この箇所については註釈書に書いてあることもまだよく理解できていないくらいなので,もっと検討してみたいと思います。


【2005/11/22 00:34】 URL | prokopton #ZeAUyEbg [ 編集]

ストア派の知識が……


こちらも,ストア派の知識がないもので,これを機会にストア派の概説書でも読んでみようと思います.日本語の文献があればいいのですが…….


【2005/11/23 04:41】 URL | メレアグロス #2P4Bp8Z2 [ 編集]

おお!


ストア派入門といえば、prokoptonさんが思想という雑誌にのっけた論文がおすすめです!


【2005/11/23 07:49】 URL | にく #- [ 編集]

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