FC2ブログ
ラテン語徒然  ラテン語の翻訳・覚え書きなど
log-in  ラテン語入門 作家別インデックス 文法資料 リンク集 ギリシア語フォントについて アーカイブ他
歴史地図 伊北 伊南 希北 希南 小ア PHI Perseus POxy KVK CiNii L-S Georges Gildersleeve 省略記号 Text Archive BMCR DCC BMCR 日本西洋古典学会

ペトローニウス『サテュリカ』
 ローマ文学の中で,何が奇書といって,ネロ宮廷の趣味の判断者ペトローニウスの『サテュリカ』程,抱腹絶倒エログロナンセンスな本はないでしょうね.
 ギリシア・ローマでは余り残されていないのですが,ジャンルとしては,メニッポス風サトゥラというもので,散文に韻文が混ぜ合わせられている独特の文体です(他にはセネカのアポコロキュントシス』があるぐらいです).詩がたまにはさまれている小説といっていいでしょうか.
 全体はかなり大部なもので,現在残っているのはその僅かな部分(16,17巻らしい)に過ぎません.復元される筋は,不品行の代名詞のような主人公がなんらかの悪行で,プリアポスの怒りを買って不能となり,彼の愛人ギトーンと離れたりくっついたり間にライバル(これも相当のつわものです)が入ったりしながら,ギリシア・ローマの世界を,この神の怒りによってひどい目に合いながら旅してあるく,という話のようです.もちろん,これはオデュッセイアのパロディーである一方,ギリシアで読まれていた小説を反映するものでもあります(これらはレベル的には低く,また余りに通俗的過ぎるため,殆どが写本伝承に入る事ができず,比較的新しいもののみが残っていますが,それらも読むに値するレベルとは思えません).
 幸い,国原吉之助先生による畢生の翻訳があって,楽しく読む事ができます(岩崎先生訳も存在します).
 表面はまあばかばかしい限りの話ですが,恐ろしいのはこれらの一見ばかばかしいジョークなどが,実は膨大なギリシア・ラテンの様々な知識を下敷きにして書かれたパロディーらしく,本当の意味が分るためには,この作者ペトローニウスが持っていたであろう膨大な知識を共有していなければいけないのです.そういうわけで,研究する際には,決して甘く見てはいけない作品なのです.それから,多くの部分を占める,『トリマルキオーの饗宴』の部分は,解放奴隷の成り金たちのパーティーなのですが,これが当時の下層の人々の言語状態を反映している貴重な俗ラテン語の言語資料でもあります.もちろん,これを理解するためには,基本的なラテン語文法を確実に抑えている必要があることはいうまでもありません.
 通俗的楽しみ方から,高度な知識を要求される解釈まで,この本の楽しみ方はさまざまですが,残念ながら,入手可能な範囲では,全体の注釈はまだありません.研究するなら,かなり古い注釈を,海外の図書館に注文する必要があります.

 以下で,めぼしい資料などを……

校訂本

Müller, Konrad Ed. Petroni Arbitri Satyricon Reliquiae. Bibliotheca Teubneriana. 4.Ed. Stuttgardiae/Lipsiae: Teubner, 1995.

Buecheler, Franciscus. Ed. Petronii Saturae et Liber Priapeorum. Adiectae sunt Varronis et Senecae Saturae Similesque Reliquae. 6. Ed. curavit Guilelmus Heraeus. apud Weidmannos: Berolini, 1922.

注釈

Smith, Martin S. Petronii Arbitri Cena Trimalchionis. Oxford: Clarendon Press, 1975. Paperback 1982.
『トリマルキオーの饗宴』のみの注釈.この本が出た時に,J.P.Sullivanによる注釈作成が進行中と言われていましたが,全然完成する気配もありません.

翻訳

Müller, Konrad Ed. Wilhelm Ehlers Tr. Petronius Satyrica: Schelmenszenen. Sammlung Tusculum. 3. Aufl. 1983.
このテクストは上のTeubnerの校訂本と同じですから,一冊買うとすれば(特にドイツ語に強ければ),これだけで何とか済みます.

ペトロニウス作,国原吉之助訳『サテュリコン : 古代ローマの諷刺小説』岩波文庫 赤-122-1.東京:岩波,1991.
有り難い翻訳.これだけで楽しめます.

映画

フェデリコ・フェリーニ監督『サテリコン』イタリア,1969.
未見でしたが,最近レコード屋さんに見つけました.買ってみたらなにか報告します(というか実はこの為にのみ,投稿を作りました(笑)).


ちなみに……題名がしばしばSatyriconとなっていますが,これは本来はSatyricaが正式な題名で,これのギリシア語式の属格になって,Satyricon libriとなっていたものを,間違えてSatyriconというのが題名だと思ったようです.意味は『サテュロス的物語』というぐらいのものでしょう.

【2005/09/20 04:27】 ORATIONES SOLUTAE LATINAE | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


この記事に対するコメント

TOPへ


この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

TOPへ


この記事に対するトラックバックトラックバックURL
→http://litterae.blog8.fc2.com/tb.php/138-af0d55bb

TOPへ


PROFILE

  • Author:メレアグロス
  • 気が向いた時にラテン語を訳したりしています.
    ヘレニズムのギリシア語もたまに訳しています.

    問い合わせ先(メールフォーム)
  • RSS1.0
  • CM, TB, ARCHIVE

    COMMENT
  • メレアグロス [06/06 15:20] 
  • outis [06/05 21:42] 
  • メレアグロス [06/05 10:37] 
  • outis [06/01 22:33] 
  • メレアグロス [05/28 18:31] 
  • outis [05/26 23:35] 
  • Succarum [09/24 20:12] 
  • メレアグロス [09/24 00:15] 
  • Succarum [09/23 16:32] 
  • メレアグロス [11/06 01:49] 
    TRACKBACK
  • えいじゅなすの本棚 - 英語, 医学, 投資の専門書レビューブログ:Wheelock's Latin(05/26)

  • ARCHIVE
  • 2019年03月 (1)
  • 2018年11月 (1)
  • 2018年08月 (1)
  • 2018年05月 (3)
  • 2018年03月 (20)
  • 2018年02月 (25)
  • 2016年07月 (1)
  • 2016年05月 (1)
  • 2016年01月 (1)
  • 2015年08月 (1)
  • 2015年07月 (1)
  • 2015年06月 (1)
  • 2015年05月 (2)
  • 2015年04月 (1)
  • 2015年03月 (4)
  • 2015年02月 (1)
  • 2015年01月 (1)
  • 2014年12月 (4)
  • 2014年11月 (24)
  • 2014年10月 (6)
  • 2014年08月 (1)
  • 2014年07月 (3)
  • 2014年06月 (10)
  • 2014年04月 (3)
  • 2014年03月 (3)
  • 2014年02月 (1)
  • 2014年01月 (2)
  • 2013年12月 (3)
  • 2013年11月 (4)
  • 2013年10月 (25)
  • 2013年09月 (1)
  • 2013年08月 (5)
  • 2013年07月 (6)
  • 2013年06月 (1)
  • 2013年05月 (2)
  • 2013年04月 (1)
  • 2013年03月 (1)
  • 2013年02月 (2)
  • 2013年01月 (2)
  • 2012年12月 (1)
  • 2012年10月 (6)
  • 2012年09月 (27)
  • 2012年08月 (32)
  • 2012年07月 (47)
  • 2012年06月 (50)
  • 2012年05月 (3)
  • 2009年10月 (1)
  • 2009年09月 (2)
  • 2009年08月 (12)
  • 2009年07月 (7)
  • 2009年06月 (14)
  • 2009年05月 (2)
  • 2009年03月 (40)
  • 2009年02月 (14)
  • 2009年01月 (75)
  • 2008年12月 (26)
  • 2008年11月 (22)
  • 2008年10月 (60)
  • 2008年09月 (95)
  • 2008年08月 (68)
  • 2008年07月 (42)
  • 2008年06月 (54)
  • 2008年05月 (49)
  • 2008年04月 (49)
  • 2008年03月 (35)
  • 2008年02月 (9)
  • 2008年01月 (27)
  • 2007年12月 (40)
  • 2007年11月 (35)
  • 2007年10月 (26)
  • 2007年09月 (43)
  • 2007年08月 (10)
  • 2007年05月 (33)
  • 2007年04月 (8)
  • 2007年03月 (61)
  • 2007年02月 (51)
  • 2007年01月 (75)
  • 2006年12月 (68)
  • 2006年11月 (23)
  • 2006年10月 (56)
  • 2006年07月 (1)
  • 2006年06月 (7)
  • 2006年05月 (125)
  • 2006年04月 (77)
  • 2006年02月 (34)
  • 2006年01月 (69)
  • 2005年12月 (54)
  • 2005年11月 (50)
  • 2005年10月 (7)
  • 2005年09月 (106)
  • 2005年08月 (38)
  • 2005年07月 (4)