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漱石直筆

有名なPaul MaasのTextual Criticismの冒頭など,いきなり「ギリシア・ラテンの原本は存在しない」で始まるとおり,西洋古典の著者が書いたオリジナルなどは本当に存在しないのですが,日本の近現代では結構直筆本が残っていて,時には直筆原稿などが古書店で凄い値段で売られていることもあります(大抵1-2ページ程度ですが).その中で,夏目漱石の『坊ちゃん』の直筆原稿を丸ごとすべて画像にしたのがこの本です:

夏目漱石『直筆で読む「坊ちゃん」』集英社新書ビジュアル版.東京:集英社,2007.

文豪という名前から来るイメージで,毛筆で書かれた読めないほどの達筆を予想していたのですが,ペン字書きで,作品同様,非常に丁寧な読みやすい文字でした.昔の変体仮名は使われているとはいえ,これだけ読みやすければほとんど問題にはならないでしょうし,p.62-65などできちんと解説してあり,また個別には画像の下に注が入っています.色々な楽しみ方ができるでしょうが,漱石が文章を直したところなどは,直す前と比べてみても面白いですし,学生にとっては,国文学の授業のためのちょっとした夏目漱石レポートのネタとしても貴重なものがあると思います.

 しかしこういう新書がでたことは,本当に画期的ですね.どうも最近の学術関係の新書は,概論の授業で売りさばくのを目的としたような,なんというか,うすら楽しい手抜き入門とでもいうようなものが多くて辟易としていたもので,ここまで徹底してくれるのは本当に嬉しいです.せっかく200ページ前後があるわけですから,古典関係の新書も,ちょっとした詩などは対訳で1巻分はできるでしょうし,個別作家の最新概説も可能でしょうから,どしどし妥協のない新書がでて欲しいですね.


【2008/06/19 23:52】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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