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『クレオパトラ』

 ホラーティウス『歌集』37歌などという,ラテン詩と政治的状況がいかに分離不能なまでに表裏一体となっているかを示す詩を訳しました.もちろんここにはオクタウィアーヌスによる,対アントーニウス・クレオパトラへの世論操作が反映されいて,歴史的事実をおさえないと解釈は難しいですね.幸い,最近,客観的な事実を確認するために格好の本が出ているので,ここで紹介します.

シェンツェル,クリスティアン=ジョルジュ(北野徹 訳)『クレオパトラ』文庫クセジュ.東京:白水社,2007.(原著:Christian-Georges Schwentzel. Cléopâtre. Collection QUE SAIS-JE?. Paris: Presses Universitaires de France, 1999.)

 この本は,非常に脚色された先入観が入り込んでいるクレオパトラ像を,客観的に言えることから描き出し,さらには,どの時代にどういった描かれ方をしたかを,同時代の証言,ラテン文学から,中世を通って,現代の映画や音楽,ついでにマンガ(!)まで取り上げて,ざっとではありますが解説してくれています.歴史を調べる時に,日本語で書かれた本に感じる難点は,どこまでが共通の見解で,どこからが著者の意見かが非常に曖昧になりがちで,その上主観と客観がしばしば入り交じっていたりすることがあることですが,著者は非常に慎重に,言える事を選び出し,客観的事実を見出すのが難しい時は,資料にのみ語らせることで,読者に判断を委ねさせます.原著の出版は1999年ですから,最新とは言えないものの,概説的情報としては十分新しいといえるでしょう.翻訳は,最近立て続けにローマ関係のクセジュ文庫を翻訳されていらっしゃる北野徹氏で,この本でも読みやすい翻訳をされている上に,適切な訳注と,幾つかの有用な追加図版に用語解説まで作成して下さっていて,頭が下がります.


【2007/09/18 01:21】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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