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バッハ研究者礒山雅先生死去

 日本でのバッハ研究の第一人者礒山雅先生が,先週の2月22日に永眠されていました.昨年末には博士論文『バッハの《ヨハネ受難曲》―その前提、環境、変遷とメッセージ』を完成,ブログ『I招聘教授の談話室』<http://prof-i.asablo.jp/blog/>には,1月26日の投稿記事に,この博士論文の口述試験を行ったことが記されており,この翌日の転倒事故後は意識不明だったとのことで,そのブログ記事が最後の投稿となったようです.ご冥福をお祈りいたします.

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【2018/02/28 22:46】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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キケロー『カエリウス弁護』7



(7) quam quidem partem accūsātiōnis admīrātus sum et molestē tulī potissimum esse Atratīnō datam. neque enim decēbat neque aetās illa postulābat neque, id, quod animum advertere poterātis, pudor patiēbātur optimī adulēscentis in tālī illum ōrātiōne versārī. vellem aliquis ex vōbīs rōbustiōribus hunc male dīcendī locum suscēpisset; aliquantō līberārius et fortius et magis mōre nostrō refūtārēmus istam male dīcendī licentiam. tēcum, Atratīne, agam lēnius, quod et pudor tuus moderātur ōrātiōnī meae et meum ergā tē parentemque tuum beneficium tuērī dēbeō.

(7) 実に告発のこの部分がアトラティーヌス君に任されたことに私は驚き,とりわけ遺憾に思っているのです.というのも,それは相応しいことではなかったし,彼の年齢もそれを要求するものではなかったし,これはあなた方もお気付きのことでありますが,この最も優れた若者の羞恥心は,このような弁論に彼が取り組むのを我慢できなかったのです.あなた方より年季の入った方々の誰かが,この悪口を言う役割を引き受けて下さるとよかったのですが.私はずっとより滔々と力強く,より私流に,あなた方の悪口の言いたい放題に論駁するところなのですが.君にはだ,アトラティーヌス君,私は穏便にやるとしましょう,というのも君の羞恥心は私の弁論を手加減させてしまうし,私の君と君の親に対する好意は私は守る義務があるのですから.


【2018/02/28 01:25】 Cicero Pro Caelio | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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再度もう少し『MLAハンドブック 第8版』


 前のところで触れていなかったのですが,何より第8版で異なっているのは,「出版地」情報が消えて無くなっているということです.例えば第6版の様式で記述(下線のみ斜体字にしました)するとすれば,以下のようになります.

旧MLA:
Dickey, Eleanor. Learning Latin the Ancient Way: Latin Textbooks from the Ancient World. Cambridge: Cambridge UP, 2016.

MLA第8版:
Dickey, Eleanor. Learning Latin the Ancient Way: Latin Textbooks from the Ancient World. Cambridge UP, 2016.

 旧MLAの赤の太字で強調した出版地情報は,MLA第8版ではまったく姿を消してしまうことになります.
 実は日本での論文などの書誌の慣習も,日本で出版された本は出版地を書かないという不思議な風習があったのですが,それはなぜか日本の出版物は全部東京で出版されるものとされていたらしいです(京都の出版社の方々にとっては屈辱そのものの制度でしょうね).
 MLA第8版での出版地の省略の理由はよくわかりませんが,大抵の本はもうWorld Cat などでネットで検索可能の上,AmazonとInternet Archiveを使えば大抵の本がネットで入手できる,という事情があるのかもしれませんね.しかし,ある程度の大国のメジャー出版社ならまだしも,例えば小国や無名の小さい市の書籍,マイナーな出版社がネット登場以前に出版した本,さらにそのような条件下で出版された少部数のあまり知られていない本だと,ネットを使って本にたどり着くことが難しく,出版地情報があるほうが望ましい,ということはありそうです.出版地が複数にわたったりする場合,確かに記述がやっかいなことはありますが,それでも情報として書く必要がないとするのはちょっと抵抗はありますね.

 他にも色々問題がありそうなので,気がついた範囲でまた書いていこうと思います.ただ,MLA第8版の出版で,もう我々は「MLAに準拠」というやり方をすることはもうできなくなったことは確かだと思います.MLAに準拠しながら……のみこの方式にする,というやり方をとるか,さもなければ全部独自に決めるか,新メディアが扱われる可能性がない研究分野であれば,MLAの旧版に準拠,などという形になるでしょうか.このブログではまあ適宜,旧MLA式もどきの記述を続けると思います.



【2018/02/26 23:59】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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キケロー『カエリウス弁護』6



(6) equidem, ut ad mē revertar, ab hīs forēnsis labor vītaeque rātiō dēmānāvit ad exīstimātiōnem hominum paulō lātius commendātiōne ac iūdiciō meōrum.

(6) 実際この私自身,私のことに立ち戻るために申し上げますが,これらの源泉から,法廷の仕事と生業が始まり,それは少しばかりより大きい流れとなって人々の評価へと広まっていったのですが,それは私の周りの人々の後押しと判断のおかげなのです.

 nam quod obiectum est dē pudīcitiā quodque omnium accūsātōrum nōn crīminibus sed vōcibus maledictīsque celebrātum est, id numquam tam acerbē feret M. Caelius, ut eum paeniteat nōn dēfōrmem esse nātum. sunt enim ista maledicta pervolgāta in omnīs, quorum in adulēscentiā fōrma et speciēs fuit līberālis. sed aliud est male dīcere, aliud accūsāre. accūsātiō crīmen dēsīdeat, rem ut dēfīniat, hominem notet, argūmentō probet, teste cōnfirmet; maledictiō autem nihil habet prōpositī praeter contumēliam; quae sī petulantius iactātur, convīctum, sī facētius, urbānitās nōminātur.

 品行について非難されたこと,そして告発者皆の起訴理由ではなく,文句と悪口によって表明されたことについてですが,マールクス・カエリウス君は,それを心苦しく感じるあまり,なんで自分が醜く生まれなかったんだと悔いてしまうようなことは決してないでしょう.というのも,この手の悪口は,若い頃に見目形の優れた方々皆に言われる非常にありふれたものですから.しかし,悪口を言うことと,告発することとは全く別物です.告発というものは,事態を正確に把握し,当事者を挙げ,証拠により証明し,証人により立証するために,起訴理由を必要とするのです.しかるに,悪口というものは,貶め以外の何らの目的も持ちません.それをもっとしつこく言い続けるのなら罵詈雑言と呼ばれますし,まだ気の利いたやりかたでそうされれば,ユーモアと呼ばれます.


【2018/02/26 22:59】 Cicero Pro Caelio | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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改めて『MLAハンドブック 第8版』

 先に『MLAハンドブック 第8版』の記事を書いていましたが,アメリカAmazonでの評価がかなり低いので,現物を購入して確かめてみました.

長尾和夫 監訳,フォースター紀子 訳,トーマス・マーティン 訳『MLAハンドブック 第8版』東京:秀和システム,2017年.

 で,個人的な見解としてはですが,購入して悪いことはないと思いますが,強くおすすめできるかというと,それはちょっと厳しいところです.
 その理由は,現時点のメディアの多様化と,それから今後も加速度的に多様化し続けることを考えると,この第8版が仮に優れたものであっても,出版の時点からすでに時代遅れになってしまうからです.というかもうなりつつあります.つまり,MLAが定期的に本の形で出ることに意味はあるかとなると,多分もうないのですね.現時点の情報を扱うようなテーマの論文(たとえばツイッターやLineの情報が犯罪発生にどうやって関わってくるかなどの研究など)でないかぎり,紙媒体かそれに準ずる媒体(ネット上にあっても紙媒体の実質的コピー)を扱う論文であれば,それには「ある程度」よく対応していると思います.ただ,こちらも時々旧版のほうが使い勝手がいいところが多い(これも全てではない)ようにも思います.
 もちろん,参考になることも書かれています.例えば,ネット上にある学術文献にはデジタルオブジェクト識別子 DOI が割り当てられていることがあって,これらは変更しないことが約束されているので URL よりは DOI をつけることがのぞましい(p. 67, pp. 165-66),などということですね.
 ツィッターについては,「ツイートのテキスト全部をそのまま変更なくコピーしてタイトルの代わりに入れる」(p. 39)やり方がなるほどとおもいました.例えばこんな感じですね:

MLA第8版
@Cristoforou. "『今を生きる』で破られてる文学の教科書、あれってローレンス・ペリンの『音と意味』(これは超ベストセラー教科書)とブルックス&ウォレン『詩を理解する』をパロってんだよね?違う?" Twitter, 2018年2月19日 22:55., twitter.com/Cristoforou/status/965842452358803458

しかしこれも,今は文字制限が倍になっている上,ツィート中に画像・動画などのメディアや他のツィートの引用もあることが多いので,もうこのやり方もちょっと難しいでしょうか.
 個人的には,他のツィートと区別できる程度の部分の冒頭のみを引用するやり方が多分いいのではないかと思います.以下のは僕の試案ですが…….

試案:
@Cristoforou. "『今を生きる』で破られてる文学の教科書..." Twitter, 2018年2月19日 22:55., twitter.com/Cristoforou/status/965842452358803458

でどうでしょうか.

 旧MLA方式との差異は結構あります.どちらがいいかとなると難しいです.やや旧の良さが勝るような気もします.
 まず,旧MLAでは,ページ数は p. や pp. をつけませんでしたが,第8版ではつけることになりました.
 それから,ジャーナルでは「巻数と号数の両方を使っている」(太字は原著)ものがある(p. 53)と書かれている一方,「巻数を使わずにすべて連続する号数でナンバリングする学術誌もある」とあり,巻数を vol. で,号数を no. で表すようです.このあたり,vol. か no. の区別が難しい例が出てきそうです.旧MLAでは,ジャーナルの号番号と発行された月は無視し,さらに vol. や no. などは使わないとあるので(『MLA英語論文の手引き(第6版)』pp. 212-13) そういう問題は起こらないのですが.いずれにせよ,旧MLAとは相当体裁が変わります.例えば次の論文で比較すると:

旧MLA:
Yanagisawa, K. "The 'Parentage' Topos: Horace, "Odes" 2.13.1–12 and Ovid, "Amores" 1.12." Museum Helveticum 57 (2000): 270-74.

MLA第8版:
Yanagisawa, K. "The 'Parentage' Topos: Horace, "Odes" 2.13.1–12 and Ovid, "Amores" 1.12." Museum Helveticum, vol. 57. no. 4, 発行月?? 2000, pp. 270-74.

という具合になります.上の Museum Helveticum の第57巻の4号の発行月はおそらくは現物を見ない限りわかりませんが,書いたところで 2000年度(本当の出版年月日は異なる可能性あり)の第57巻のページ数は号を通して通し番号となっていますから,上の論文を探す場合にほとんど意味はありません(号も同様).ただ,ページの p. や pp. をつけるのは悪くないかとおもいます(数字だけだとやはり不安なので).折衷案で,おそらく次のようにするのが簡潔だと思います.

折衷案:
Yanagisawa, K. "The 'Parentage' Topos: Horace, "Odes" 2.13.1–12 and Ovid, "Amores" 1.12." Museum Helveticum 57 (2000): pp. 270-74.

 上でちょっと触れたデジタルオブジェクト識別子 DOIですが,次のように書くことになるようです.次の雑誌論文はネット上にもあって,URLは<https://www.cambridge.org/core/journals/classical-quarterly/article/virtue-in-platos-symposium/1013731823C132601A4FD473616F3B42>となっていますが,これは変動する可能性があります.
 このページにはもうひとつ<https://doi.org/10.1093/clquaj/bmh045>というリンクがあります.この doi.org/ のあとの10.1093/clquaj/bmh045が DOI となります.こちらは変動しないので,もしDOIがあるのであれば,こちらを引用すべきとのことです.DOIの記述方法は,小文字で doi: の後に続けるとのこと.折衷案と組み合わせてみると:

White, F. C. "Virtue in Plato’s Symposium." Classical Philology 54 (2004): pp. 366-78. doi: 10.1093/clquaj/bmh045.

という具合になるかと思います.まあ doi はない場合もあるので,その場合にはURLか,もしくはこれもあればですが,固定のパーマリンクとなります.その場合は http:// や https:// は省くとのこと(基本的にURLではすべて不要ということです.個人的にはついていれば pp. などのように,URLだとすぐわかるという安心感があるような気もしますが).

White, F. C. "Virtue in Plato’s Symposium." Classical Philology 54 (2004): pp. 366-78. www.cambridge.org/core/journals/classical-quarterly/article/virtue-in-platos-symposium/1013731823C132601A4FD473616F3B42.

まだネット上の情報を扱う際の色々な決まりなどで注目すべきものはありますが,長くなったのでこの辺りでやめます.

 まあ最後に,『MLAハンドブック 第8版』の本について,僕の意見ですが,お金に余裕があれば買ったほうがいいでしょう.それなりに役に立つことが書いてありますが,取捨選択をする必要があります.あれば便利でしょうが,まあ図書館で使うのが妥当というところでしょうか.もし,3000円ぐらいを使うとすれば,僕としてはおすすめは,この前の日本語で出た最後の版である第6版の翻訳を,古書という形になりますが,入手するといいと思います(が,これもまともな大学図書館ならあるはずですね).

ジョゼフ・ジバルディ著,原田敬一 監修,樋口昌幸 訳編『MLA英語論文の手引 第6版』東京:北星堂書店,2005年.

 いずれにしても,参考文献表の作成などは,論文を初めて書く方は,最後に作ればいいと思っている人が非常に多いですが,実際に作り始めると,ちゃんと統一がとれた文献表をつくるのは意外と難しいことがわかります.特に論文の締め切り間近,内容の推敲と訂正にたっぷり時間を使わなければいけない時になってから参考文献表を作り始めると,絶対にまともな参考文献表はできません.MLAのマニュアルを購入するかどうかはともかく,このような本をちゃんと見て,自分でどのように参考文献表を作るか,実際に参考文献表を作りながら,よく考える必要があることを最後に強調しておきたいと思います.



【2018/02/24 03:16】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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キケロー『カエリウス弁護』5



(5) Nam quod est obiectum mūnicipibus esse adulēscentem nōn probātum suīs, nēminī umquam praesentī Praetuttiānī maiōrēs honōrēs habuērunt, iūdicēs, quam absentī M. Caeliō; quem et absentem in amplissimum ōrdinem cooptārunt et ea nōn petentī dētulērunt, quae multīs petentibus dēnegārunt. īdemque nunc lēctissimōs virōs et nostrī ōrdinis et equitēs Rōmānōs cum lēgātiōne ad hoc iūdicium et cum gravissimā atque ōrnātissimā laudātiōne mīsērunt. Videor mihi iēcisse fundāmenta dēfēnsiōnis meae, quae firmissima sunt sī nītuntur iūdiciō suōrum. neque enim vōbīs satis commendāta huius aetās esse posset, sī nōn modo parentī, tālī virō, vērum etiam mūnicipiō tam inlūstrī ac tam gravī displiceret.

(5) さて,その若者が,彼の同郷市民たちにはよく思われていないと非難されていることについては,こう言いましょう.裁判官の皆さん,プラエトゥッティイー*1の人々は,地元にいる誰にも,地元から離れているマールクス・カエリウス君に与えた以上の栄誉を与えなかったのです.彼らは地元から離れているその彼を,最も重要な序列に選出し,そして多くの人が欲していても与えなかったものを,欲してもいない彼に授与したのです.その同じ人々は,今や我々の階級に属する人々とローマ騎士の精選された人々を,使者とともに,また,極めて重々しく極めて立派な推薦状ともに,この裁判に送ってきたのです.思うに,彼の関係者の判断に支えられているとすれば極めてしっかりしたものとなる弁護の礎石を私は置き終えたと思います.というのも,これほどの人物である父親にのみならず,かくも著名で重要な自治都市にも嫌われているとすれば,この年齢の人物があなた方に十分推賞されることなどないはずなのですから.


*1 この地図の H e 中央やや北東にある町 Interamnia (現テラモー)に住んでいた住民.この Interamnia は Interamnia Praetuttiōrum と呼ばれる自治都市.



【2018/02/22 19:40】 Cicero Pro Caelio | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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キケロー『カエリウス弁護』4



(4) equitis autem Rōmānī esse fīlium crīminis locō pōnī ab accūsātōribus neque hīs iūdicantibus oportuit neque dēfēndentibus nōbīs. nam quod dē pietāte dīxistis, est ista quidem nostra exīstimātiō, sed iūdicium certē parentis. quid nōs opīnēmur audiētis ex iūrātīs; quid parentēs sentiant, lacrimae mātris incrēdibilisque maeror, squālor patris et haec praesēns maestitia, quam cernitis, lūctusque dēclārat.

(4) しかし,そのローマの騎士の息子であることが告発者らによって起訴理由とされたことは*1,それはここにおられる裁判官諸氏から見ても,我々弁護陣から見ても,なされるべきことではありませんでした.さて,親思いの念についてあなた方が語ったことについて言えば,そのあなた方の評価は,確かに我々の思うところでもありますが,しかし,それは親が判断することであることは確かです.この我々がどのような見解を持つかは,あなた方は裁判官諸氏から聞くことになるでしょう.両親がどう思っているかについては,母親の涙と信じ難いほどの悲しみ,父親のやつれ様と,あなた方が見ているところのこの眼前の悲しみ様と悲嘆が物語っております.

*1 キケローは原告に不利な感情を裁判官らに持たせるために起訴理由をわざと不正確に歪めている.


【2018/02/22 02:35】 Cicero Pro Caelio | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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キケロー『カエリウス弁護』3



(3) Ac mihi quidem vidētur, iūdicēs, hic introitus dēfēnsiōnis adulēscentiae M. Caelī maximē convenīre, ut ad ea, quae accūsātōrēs dēfōrmandī huius causā et dētrahendae spoliandaeque dignitātis grātiā dīxērunt, prīmum respondeam. obiectus est pater variē, quod aut parum splendidus ipse aut parum piē tractātus ā fīliō dīcerētur. dē dignitāte M. Caelius nōtīs ac maiōribus nātū etiam sine meā ōrātiōne tacitus facile ipse respondet; quibus autem propter senectūtem, quod iam diū minus in forō nōbīscumque versātur, nōn aequē est cognitus, hī sīc habeant, quaecumque in equite Rōmānō dignitās esse possit, quae certē potest esse maxima, eam semper in M. Caeliō habitam esse summam hodiēque habērī nōn sōlum ā suīs sed etiam ab omnibus, quibus potuerit aliquā dē causā esse nōtus.

(3) さて裁判官諸君,私としては実際,次のように若者マールクス・カエリウス君の弁護を開始するのが,最も適切だと思われます.すなわち,原告らが,この者を貶めんがため,その威信を引き下げ剝ぎ取らんがために語ったことごとに対して,私が答えるという形でです.父親*1が様々な仕方で非難されております.というのも,あるいはご自身があまり立派ではない,あるいは息子からあまり孝行されていないと言われているとかいう理由でです.しかしこのマールクス・カエリウス氏は,知人や年上の方々には,私の弁論なぞなくとも,黙したままで容易にご本人が答えているところです.だが彼も高齢のため,もうずっと長いことフォルムで私どもと交わることもなかったゆえ,それと同じ程度には彼のことをご存じない方々もいらっしゃるが,その方々にはこのようにお考えいただきたい.ローマの騎士にありうるいかなる威信も(そしてそれは間違いなく最高のものでありうるものですが),常にこのマールクス・カエリウス氏の中に最高峰のものとして存在すると思われてきたし,今日も存在すると思われているのです.それは,ただ近親者の人々にだけそう思われているだけではなく,何らかの理由で彼と知り合いになったような方々にもそう思われているのです.

*1 息子と同名の父親マールクス・カエリウス(翻訳ではマールクス・カエリウス氏として区別).


【2018/02/20 02:21】 Cicero Pro Caelio | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ツィッター登録

 ツイッターはやる気はないのですが,登録しておくと某サイトにログインできるので,とりあえず登録だけして放置していました.今日たまたま友達を見つけるボタンを押してみたら,キリル文字の名前のお友達がたくさん出てきました.ロシア人と友達になった覚えはありませんが,一体どうなっているのでしょう.



【2018/02/19 03:03】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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キケロー『カエリウス弁護』参考文献

 『カエリウス弁護』の参考文献などを挙げておきます.

 日本語訳は今の所ネット上にしかないようです.

  世界の古典つまみ食い 『カエリウス弁護』対訳版

 こちらで対訳版で出ているので,うちのブログで翻訳する意味はもう大方ないようなものですが,僕のリハビリですからご容赦ください.「世界の古典つまみ食い」さんのサイトでは卜占論も全訳が出ているほか,キケローはかなり手がけていて,多くは対訳になっています.

 『カエリウス弁護』自体は難解というわけではなく,むしろ初学者用のテキストとしてはかなりたくさん出ていて,それも文法が終わった直後の,念入りな文法解説付きの初心者用の注釈書も多いですね.日本語訳が出ていないのが不思議です.

 定番の校訂本はとなると,次のものが最新です.

  Maslowski, Tadeusz ed. Orationes in P. Vatinium testem, pro M. Caelio. Stuttgart u. Leipzig:
    Teubner, 1995. Reprint. Berlin: de Gruyter, 2014.

 最新ではないですが,一冊校訂本ということになると,Austin のコメンタリー付きで十分間に合うでしょう.

  Austin, R. G. Cicero: Pro M. Caelio Oratio. Edited with Introduction and Commentary by.
    3rd ed. Oxford: Clarendon Press, 1960.

 文法を終わった初心者が一番最初に手に取る注釈書としては次の Ciraolo のものが懇切丁寧です.

  Ciraolo, Stephen. Cicero: Pro Caelio. Text, Notes, Bibliography. Wauconda: Bolchazy-Carducci,
    3rd Ed. 2003.

 次の二つもほぼ同レベルの初心者用注釈書.Keitel and Crawford のほうは,巻末に重要語彙集(全語彙ではない)もついているので,単語暗記用に大変便利だと思います.

  Englert, Walter. Cicero: Pro Caelio. Bryn Mawr Commentaries. Bryn Mawr: Thomas Library,
    Bryn Mawr College, 1990.

  Keitel, Elizabeth and Jane W. Crawford. Cicero: Pro Caelio. Edited with an Introduction and Notes by.
    Focus Classical Commentary. Newburyport: Focus, 2010.

 もう少し詳しい最新の注釈書.

  Dyck, Andrew R. Cicero: Pro Caelio. Edited by. Cambridge Greek and Latin Classics.
    Cambridge: Cambridge University Press, 2013.


 日本語論文でちょっと気になるものでも.ローマ法学者によるキケロー論文ですから,非常に興味深いです.

   柴田 光蔵 「「カエリウス弁護論Pro Caelio」素描(キケローMarcus Tullius Ciceroの法廷弁論をめぐって-2-)-1- 」
    「「カエリウス弁護論Pro Caelio」素描(キケローMarcus Tullius Ciceroの法廷弁論をめぐって-(2)-)-2完- 」
    『法学論叢』83号(1), pp. 90-111, 83号(3), pp. 88-100, 1968.

 なお,英訳など他国語との対訳版は Loeb, Reclam などありますが,Loeb は1960年ぐらいのもののはずで,相当古いです.ほかの翻訳が入っているにしても,買う意味があるかどうか…….それなら普通に Perseus を使うのをお勧めしたいですね.ドイツ語対訳の Reclam は1994年出版で最新ではないですが,Amazon で637円ですから,コスパはまあいいでしょうね.



【2018/02/19 02:47】 Cicero Pro Caelio | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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キケロー『カエリウス弁護』2



(2) Etenim sī attendere dīligenter atque exīstimāre vērē dē omnī hāc causā volueritis, sīc cōnstituētis, iūdicēs, nec dēscēnsūrum quemquam ad hanc accūsātiōnem fuisse, cui utrum vellet licēret nec, cum dēscendisset, quicquam habitūrum speī fuisse, nisī alicuius intolerābilī et nimis acerbō odiō nīterētur. sed ego Atratīnō, hūmānissimō atque optimō adulēscentī, meō necessāriō, ignōscō, quī habet excūsātiōnem vel pietātis vel necessitātis vel aetātis. sī voluit accūsāre, pietātī tribuō, sī iussus est, necessitātī, sī sperāvit aliquid, pueritiae. cēterīs nōn modo nihil ignōscendum sed etiam ācriter est resistendum.

(2) なんとなれば,もし真摯に注意を向け,そうして本当にこの裁判全体について判断を下すつもりになれば,裁判官諸君,あなた方は次のように判断されることでしょう.すなわち,するしないのどちらの選択も強制されないのであれば,誰であれ,この告発に及ぶような真似などしないはずで,もしそんな真似をしたとすれば,誰かに対する耐え難く且つ度を超えて激しい憎しみに依存しているのでなければ,何の成果の希望も持ち得ないはずだと.しかし,私としては,最も人間味溢れ,そうして最良の若者であり,私にとってかけがえない人物であるアトラティーヌス君は容赦したい.彼は,あるいは親思いか,あるいは必要性か,あるいは年齢かのいずれかの事情があるのです.もし告発したかったのであれば,それは親思いのためと,もし命じられたのなら,それは必要性のためと,もし何かを望んでのことなら,未熟のためと私はしましょう.他の者に対しては,私は何ら容赦はしないどころか,激しく抵抗せねばなりません.


【2018/02/19 01:22】 Cicero Pro Caelio | TRACKBACK(0) | COMMENT(1) | 記事修正

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スカリゲル研究

 色々お世話になったにくさんのブリル本が休眠中にでていました.なんと西洋古典学にも馴染みの深いスカリゲル研究でした.

Kuni Sakamoto. Julius Caesar Scaliger, Renaissance Reformer of Aristotelianism: A Study of His “Exotericae Exercitationes.” History of Science and Medicine Library 54; Medieval and Early Modern Philosophy and Science 26. Leiden: Brill, 2016. viii + 214 pp. $135.
Julius Caesar Scaliger, Renaissance Reformer of Aristotelianism: A Study of His Exotericae Exercitationes (History of Science and Medicine Library / Medieval and Early Modern Science)


書評も読める範囲では好意的なようで,よかったです.こちらも今年中には出版されるようです.






【2018/02/17 10:02】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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MLAハンドブック 第8版


 この記事を書いたあとに海外Amazonの評価をみると,第7版に比べてわかりにくくなっているとのことでした.日本版を入手してから書き換えると思います.

 MLAの論文マニュアルの日本語訳版は北星堂書店から『MLA英語論文の手引』として出版されていたのですが,第6版を最後に10年近くも最新版の翻訳がでていなませんでした.昨年末にようやく違う出版社から翻訳がでました.

  トーマス・マーティン 訳 フォースター紀子 訳 長尾和夫 監修『MLAハンドブック 第8版』東京:秀和システム,2017年.

 持っていたら論文が書けるという指南書ではありませんが,参考文献などの記述の仕方は,初めて論文を書く人には意外に難物なので,こういう本で書き方を覚えるしかありません(ちなみに,日本人の書いた論文の書き方を扱った書籍では,意外に参考文献の記述がいい加減なものが多く,手近にあるこの手の本を参考に書き方を真似る,というやり方をすると,でたらめな書き方を引き継いでしまう可能性があります).この最新刊では,SNSの情報の引用の仕方までどう引用すればいいかという方針を示してくれるので,色々役立つはずです.合衆国大統領までツイッターでつぶやくこの時代,西洋古典学関係者も多数つぶやいておられるようですから,それらの引用の仕方を知っていて損はないと思います.

 原著はこちら.値段は日本語版の6割ぐらいになります.

MLA Handbook (Mla Handbook for Writers of Research Ppapers)

 こちらのKindle版はもっと安くて1200円です.




【2018/02/17 00:50】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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キケロー『カエリウス弁護』1



Pro Caelio

(1) Sī quis, iūdicēs, forte nunc adsit ignārus lēgum iūdiciōrum cōnsuētūdinisque nostrae, mīrētur profectō, quae sit tanta atrōcitās huiusce causae, quod diēbus fēstīs lūdīsque pūblicīs, omnibus forēnsibus negōtiīs intermissīs, ūnum hoc iūdicium exerceātur, nec dubitet, quīn tantī facinoris reus arguātur, ut eō neglēctō cīvitās stāre nōn possit. īdem cum audiat esse lēgem, quae dē sēditiōsīs cōnscelerātīsque cīvibus, quī armātī senātum obsēderint, magistrātibus vim attulerint, rem pūblicam oppugnārint, cotīdiē quaerī iubeat, lēgem nōn improbet, crīmen quod versētur in iūdiciō, requīrat; cum audiat nūllum facinus, nūllam audāciam, nūllam vim in iūdicium vocārī sed adulēscentem inlūstrī ingeniō, industriā, grātiā accūsārī ab eius fīliō, quem ipse in iūdicium et vōcet et vōcārit, oppugnārī autem opibus meretrīciīs, Atratīnī ipsīus pietātem nōn reprehendat, libīdinem muliebrem comprimendam putet, vōs labōriōsōs exīstimet, quibus ōtiōsīs nē in commūnī quidem ōtiō liceat esse.

『カエリウス*1弁護』*2

(1) 裁判官諸君,もし誰か我々の法律・裁判・慣習に不案内な人物が今たまたまここにいたなら,その人は間違いなく驚くことでしょう,祝日で公の見世物が開催される中*3,全ての法廷の仕事が中断されているという時に,一つだけこの裁判が行なわれるからには,本件のかくほどまでの悪質さとは何であるのか,と.そして,これを無視するなら国家が立ち行かなくなる可能性のあるほどの,それほどの巨悪の被告が告発されていることを,その人は疑いもしないでしょう.その同じ人物が,武装して元老院を占拠しては官吏らに暴力を振るい国家に楯突く反逆的で邪な市民どもについてはいかなる日でも審理すべしと命ずる法律*4がある,ということを聞かされれば,その人は法律に異を唱えたりせず,どんな起訴理由*5がその裁判で問題になっているのかと,尋ねることでしょう.が,いかなる悪事も,いかなる暴挙も,いなかる暴力も裁判にかけられているわけではなく,輝かしい才能・勤勉さ・魅力に溢れた若者*6が,彼自身が今告発してもいるし,過去告発したところの人物のその息子*7によって告発され,さらには売春婦*8の資力を使って攻撃されているということをその人が聞けば,アトラティーヌス自身の親思いを責めはせず,その女の好き勝手こそ掣肘すべきと考え,公の休日の日でさえ休むことさえ許されぬようなあなた方は,忙しいにもほどがあると思うことでしょう.

複雑な背景については別に解説予定.ここでは注は最小限.( )内の数字は Scot 版のもの.
*1 Mārcus Caelius Rūfus (前87/86年-前43年3月末).
*2 Lūcius Semprōnius Atratīnus (*前73?-7)による告発に対する,キケローのCaelius の弁護演説.告発内容はナポリでの暴動加担,アレクサンドリアからの使者への攻撃,その一員の哲学者ディオーンの殺害,パッラという人物からの財産没収,クローディアの毒殺未遂.裁判は前56年4月3日か4日に行われた.
*3 4月4日はマグナ・マーテルのためのメガレーンシア(Megalēnsia)という祝日.
*4 lēx Plautia dē vī「暴力に関するプラウティウス法」で,おそらく前70年に制定.カエリウスも有罪となればこれにより裁かれる.
*5 crīmen はラテン語では起訴,あるいは起訴理由であって,「犯罪」の意味にはならない.
*6 *1 のカエリウス.
*7 Bestia Semprōnius Atratinus をカエリウスはすでに告発しており(この時のBestia の弁護人はキケローその人で無罪放免),現時点でも告発を行っていた.その息子のアトラティーヌスはここで逆にカエリウスを告発している.
*8 Clōdia Metelli (前93-?歿年はこの裁判後であること以外は不明)を指す.カトゥッルスでレスビアと呼ばれる女性は実はこの女性だと言われる.


【2018/02/15 00:13】 Cicero Pro Caelio | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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Black is the colour of my true love's hair
 疲れたのでこんな曲でも.







【2018/02/14 23:58】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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『デトロイト』評問題

 映画『デトロイト』は僕は全然見ていないのですが,なんだかネット上で(というか久しぶりにツイッターでSaebouさんをお見かけして,そこにこの記事の話が投稿されたり引用されてあった),この映画を評した国際政治学者三浦瑠麗さんの発言がネットで話題になっているようなので,もともとの映画評を読んでみました.

  http://www.asahi.com/and_M/articles/SDI2018012418151.html

 まあ読んでみてですが,なんか話おかしくないかな,というのが最初の感想でした.なんでおかしいかを色々考えてみましたが,こんなところに原因があるのではないかと思います.

 たぶん致命的なのは4段落目ですね.「経済問題が解消すれば白人の偏見はなくなり、黒人側の差別的な状況も解消されるのではないかと思います」という文章です.この文章で,「経済問題」の解消で差別問題は全部解決されるかのようにいいながら,その次の段落の冒頭「また、共感の欠如が、暴動や白人警官の弾圧につながっているというのもあります」とあります.ここでは「共感の欠如」もやっぱり原因だということになり,いきなり矛盾が突きつけられます.最後の段落でも「苦しんでいるものを助けるという人として当たり前の行動こそが解決策であり、希望につながる」と言っているので,やっぱり解決策は経済問題だけじゃない,となってしまう.これが大変気持ちが悪い(僕としてはですが).
 これをまあちょっと話をいじってやって,「経済問題の解決はある意味重要かもしれないが,それだけではない」「共感の欠如という面も暴動弾圧につながっているかもしれない」「経済問題の解決だけでなく,苦しんでいるものを助ける行動を即すのが解決策だ」ぐらいにすると話がつながってもうちょっと筋がすっと通りそうな気がします.

 本当のこの人の主義主張はこの矛盾が気になってよくわかりませんが,もし誤解でなければですが,この方のものの考え方で気になるのは,アメリカを全部均質なものとして論じている,というところですかね(まあそう仮にしておかないと,短い文章ではなにも論じることができないのかもしれませんが).アメリカは場所によっては人種差別はかなりひどいようで,デトロイトはこんな映画が作られるぐらいなので大変なのでしょうが,これがアメリカ全土で均一に起こっているわけではないと思います.
 それから,全体としては,アメリカは差別の克服にむけて,かなりゆっくりでしょうが,進んでいる方向にあると思います(昔は野球も黒人はいっしょにできなかったぐらいですからね).それがやっぱり経済的な問題だけで解決していっているようには,僕には見えないのですが,これも僕の印象ですから,違うかもしれません.

 ともあれ,『デトロイト』自体は映画としては面白そうですから,そのうち見にいこうと思います.見てから僕も映画評でも書いてみようかとおもいます.

 関係ありませんが,評者の一人パトリック・ハーランって誰かとおもったら,Eテレとかで出てたパックンだったんですね.


【2018/02/14 23:54】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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キケロー『カエリウス弁護』

 リハビリをかねてキケロー『カエリウス弁護』をやろうと思います.前まともにラテン語やったのが『カティリーナ弾劾』ですから,3年前ですね.まるっきりのブランクでラテン語がきもちいいぐらいに完全に頭から抜けきっているのですが,久しぶりに読んでみたら案外これが色々面白いのですね.人間勉強をしないことでわかることもたまにはあるようです(強がり).

 とりあえずラテン語に取り掛かる前に,写本の情報でもまとめておきましょう.手に入れられる最新の校訂本は高くて買えません(Maslowsky の Saurの1995年. 現時点で Amazon 価格17,000円).すみません.古い注釈の Austin (Oxford 1960)の校訂情報と,Dyck の注釈 (apparatus criticus なし, Cambridge 2013) の短い解説から,想像たくましくしつつ,なんとか読みとってみた写本関係はこんな感じのようです.

 祖本 Ω から出る枝は大きく三つ.

 1. P (パリ写本7794で9世紀前半)が一つの枝.
 2. 下位の祖本 ω (Austin では π ですが,パピューロスとまぎわらしいのでやめた方がいいでしょうね).これは G (Brussel 5345,11世紀初め)と E (Berlin Lat. fol. 2º 2520) とひょっとすると H (Herley 4927, 12世紀前半)から再構成されます(Austin では下位の祖本を構成するため g, e, h と小文字で表記されますが同じ写本).ただし,H は P の直接の子孫の可能性もあるようです.
 3. もう一つの重要な枝は Cvで表される,失われたクリューニー修道院の写本から欄外などに書き写された抜粋です(Austin では Σ).簡単に図にすると(うまく表示されているかどうか……)

     Ω
   ╱ \ ╲
  P   ω  Cv
     ╱┃╲
    G  E  H (?)

という感じのようです.
 Austin では b と ψ からなる下位祖本 δ も考慮に入れられているようですが,今は主要写本としては取り上げられないようですね.B で表記される Cod. Laur. LIV の抜粋集 (Austin の校訂本ではよくCv と一致しています) も取り上げられないようです.校訂作業では,使わないでよい写本は無駄な作業を回避するためどんどん削っていくので,まあそうした判断の結果しょう.
 他に,Π で表されるのはパピューロス資料で,§§ 26-55 のあたりの残骸が,どの程度かわかりませんが,残っているようです.現物がネットに転がっているといいのですが,まあないでしょうね.

 参考文献など書こうとおもっている間にこんな時間になったので,もう寝ます.このまままた休眠サイトになったら笑えます…….




【2018/02/14 03:45】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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古代演劇クラブ

 色々今は次元の違ったことが日本の古典の世界では起こっているようです.おそらくですがこういうところから新しい研究も出てくるのではないかと思います.その一つが,なんと古典ギリシア語の演劇を原語でやってしまおうというもの.東京大学文学部西洋古典学研究室周辺の学生で行われているようです.



 他の動画はこちらにあります.

  https://www.youtube.com/channel/UCR-60RJ31xmj4OWxltoN1fA/featured

 惜しむらくはやっぱり t と th, p と ph, k と kh を区別するところまでは徹底していないようです(パソこんのスピーカーが悪いせいかも知れませんが).そこまでできれば本当にすごいですが,要求しすぎでしょうね.
 この区別のコツはむしろ p, t, k の発音の方にあります.p t k は勢いよく発音しているとほとんどすべて気息が入ってしまいます.普通の日本語でも少し入っています.p, t, k の方をむしろ b, d, g に少し近く発音すると,後ろに気息が入らない音になります(実際ラテン人はギリシア語の p t k を b d g に時に聞き間違えていたようです).英語の p t k の音は s の後にくる時を除いてギリシア語の気息つきの ph th kh ですから,ph th kh は英語風に発音してやればだいたい大丈夫でしょう.

この動画に参加されている佐藤二葉さんはなんとリュラ奏者で漫画家でもあります.

  FUTABA SATO
  http://amethyst.secret.jp/futaba/

漫画の方は以下で読むことができます.

  『うたえ!エーリンナ』
  http://sai-zen-sen.jp/comics/twi4/erinna/

 実際にどうだったかわからないものを,具体的な形にしてしまうことは,もちろん不要な先入観を知らずに強化してしまうという面はあるとは思います.そういう点でこういう活動に西洋古典広報的な意味は認めても,あまり賛同はしない人もいるかとは思いますが,こうやって実際に演じられているのを聞いているだけでも,辞書を引き引き読んでいるだけでは感じられないものが相当あるということに気付かされます.是非是非,ソポクレースやエウリーピデース,セネカなどの劇を実際に演じているのを見てみたいものですね.


【2018/02/12 20:28】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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Cambridge Greek and Latin Classics シリーズ Kindle で格安販売中(誤報でした)

 Cambridge Greek and Latin Classics シリーズで,出版年の古いものが Amazon の Kindle で7-8冊ほど100円前後で投げ売りされていました.Vergilius の農耕詩 I-II,オウィディウス変身物語13巻,ユウェナーリス,プラトーン,ソポクレースなどです.「Cambridge Greek and Latin Classics」のキーワードで洋書のコーナーで検索してみてください.
 Amazonでなぜか全く別の本に関係付けられていました.間違って買わないようにしてください.誤報申し訳ありませんでした.しばらくこの記事は上げておいたのちに消去します.


【2018/02/12 10:32】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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光文社古典新訳文庫『オイディプス王』

 光文社古典新訳文庫から,オイディプス王の翻訳も出ていました.

  ソポクレス,河合祥一郎 訳『オイディプス王』光文社古典新訳文庫.東京:光文社,2017年.

 この方実は英文学者で,シェイクスピアの専門家で,演劇の演出も多数されている方だそうです.原文のギリシア語からではなく,英訳からの重訳のようですね.どうして若手古典学者の翻訳じゃないのか,事情はわかりませんが,ひょっとして古典学の世界には適任あらずと判断されたのでしょうか…….まああと5-6年もすれば旧来の先生がたの太刀打ちできない新進気鋭の学者だらけになるはずですから,中途半端な翻訳が今出るよりは,もう少し待って万全な翻訳を期待したほうがいいのかもしれませんね.それにこういう本も参考にする必要があるとおもいますし:

  P. J. Finglass ed. Sophocles: Oedipus the King. Cambridge Classical Texts and Commentaries, 57.
    Cambridge: Cambridge U. P., 2018/3/31 (forthcoming).


 光文社古典新訳文庫からはセネカもでていました.

  セネカ,中澤務 訳『人生の短さについて 他2篇』光文社古典新訳文庫.東京:光文社,2017.

 中澤務先生はプラトーンの翻訳を出されている古代ギリシャ哲学専門の方です.どうして若手ラテン語学者の翻訳じゃ(以下略)



【2018/02/12 01:27】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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リンク集がめちゃくちゃに…… 高橋宏幸『ホラーティウス:書簡詩』

 リンク集ですが,かなり行方不明になってしまいました.徐々にアップデートさせていきたいですが,もし有用なリンク先などあったらお知らせくださると幸いです.古いリンク先で移動先が不明なものは一定期間残してから削除する予定です.
 それとは関係ありませんが,これこそ書いておきたかった訳書.

  ホラーティウス 高橋宏幸 訳『書簡詩』講談社文庫.東京:講談社,2017.

 これを使ってブログの翻訳をアップデートさせるためにブログに再投稿し始めたようなものです.詳しい感想は照らし合わせて読んでからですね.
 そろそろホラーティウスも新たな翻訳で一通り塗り返されそうな予感がします.この後はたぶん『談話集』あたりでしょうか.これのしっかりした翻訳が出たらそれこそ日本の西洋古典の業績としては記念碑的なことになりますね.



【2018/02/09 22:43】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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カエサルのものはカエサルに返せ猿


OCT で『内乱記』が登場していました.もう3年前でしたね.その校訂状況も本になっています.

Cynthia Damon, C. Iuli Caesaris Commentariorum Libri III De Bello Ciuili. Recognovit brevique adnotatione critica instruxit C. D.. Oxford; New York: Oxford University Press, 2015. Pp. cx, 227. ISBN 9780199659746. $75.00.

Cynthia Damon, Studies on the Text of Caesar's 'Bellum civile'. Oxford; New York: Oxford University Press, 2015. Pp. 329. ISBN 9780198724063. $115.00.



高橋宏幸先生もガリア戦記と内乱記の翻訳を出されたのちにアフリカ戦記なども完訳されていました.これはちょっと記念碑的なものでしょうね.一冊3000円とちょっと高めですが,売れたら文庫化されるでしょう.

  高橋宏幸 訳『カエサル戦記集』ガリア戦記,内乱記,アレクサンドリア戦記・アフリカ戦記・ヒスパーニア戦記.
    東京:岩波書店,2015, 2015, 2016.



【2018/02/08 11:09】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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DCC カッリマコス


Dickinson College Commentaries の無料注釈つきテキストの中に,カッリマコスの『縁起集』が入っていました.Susan Stephens 教授の校訂・注釈です.パピュロスも利用可能ならリンクされているので,ネット時代ならではの注釈ですね.

  http://dcc.dickinson.edu/callimachus-aetia/preface

 このブログでも『縁起集』は冒頭と別な一箇所しか訳していませんが,いい機会なのでまた訳してみようかとも思います.

 カッリマコス久しぶりに読んだらぜんぜん読めなくて焦りますね.ラテン語やるにはギリシア語の専門家よりギリシア語できなければダメだと言われる意味がよくわかります.まあ西洋古典やるにはドイツ語の専門家よりドイツ語ができなければいけませんし,英語の専門家よりも英語ができなければいけないし,フランス語の専門家よりイタリア語の専門家より仏伊語ができなければいけないのですが,そういえばみんなそんなに語学できてたっけ??



【2018/02/08 10:39】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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「まんどぅーか」管理人さん逝去


 リンク集を整理していたら,その他諸言語のところにリンクをあげていたまんどぅーかさんがお亡くなりになっていたことに,今更ながらですが気がつきました.サイトの情報によると,2015年にすでに亡くなられていたようです.インド関係の諸言語,古楽への関心からキリスト教と進まれ,すでに3.11の時点で死を覚悟されていたかのようです.ほんの僅かなご縁でしたが,遅まきながらご冥福をお祈り申し上げます.



【2018/02/07 20:10】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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お久しぶりです 山下太郎『ラテン語を読む——キケロー「スキーピオー」の夢』

 もう来る人も殆どいないようですが,皆様がたお元気でしょうか.久々にラテン語をじぶんの翻訳で読もうと思ったら広告で読みにくくなってしまったので,広告消しがてらの投稿です.何を書いたらいいかもよくわかりませんが,とりあえず本などについて幾つか投稿しておこうと思います.

 まずはやっぱりこれを先にあげておかなければいけません.

  山下太郎『ラテン語を読む——キケロー「スキーピオー」の夢』東京:ベレ出版,2017.
    <https://www.beret.co.jp/books/detail/651 (正誤表リンクあり)>

 これは欧米の初心者用の注釈では幾つかある,ほぼ完全な語形・文法解説を隅々まで行った,大変な労作です.この手の仕事は日本の大学ではほとんど無視されてきていますが,それを初めて手がけた,歴史的な購読入門書ということになると思います.
 構成としては,まず原文が掲げられ,それから注釈では,手間を厭わずに原文と翻訳が並べられ,それから逐一語句と文法の解説が並べられ,語形・語法についてはもちろん,歴史的・文学的背景まで解説が添えられています.解説の後には,逐語訳があげられており,これでそれぞれの語や表現がどの日本語に対応するか確認できるので,たいへん便利です.巻末には通しでの翻訳があげられていますが,ここにも日本語訳だけでも背景などがわかる程度の簡潔な注釈が添えられていて,その上単語集まで付いている訳ですから,今までにない懇切丁寧さです.実は,僕自身も,実際に似たようなことを大分以前にやろうとしたことがありますが,作業の大変さに気が遠くなってしまい(ついでにパソコンもクラッシュして),頓挫してしまいました.以下,ちょっとだけ注文(というよりはラテン語出版への注文ですね)はつけますが,本当にこの本は,相当の労力と,何よりラテン語を愛しそれを広めたいという愛情の結晶であって,決して価値を引き下げる意図など毛頭ないことを先に申し上げておきます.
 
 それにしても,もう一歩残念なのは,これでもう少ししっかりした体系的な文法書があれば,もう一歩学習者が先に進めるはずだということです.部分的には中山先生の『古典ラテン語文典』を参照されたりしていますが,この本ももう少し力足りないところがあり,全てを参照できるほどとは言えないですね.
 山下先生の本に戻りますが,p.20 の一節についての注釈で言えば,in Africam の in はなぜ in なのか(つまり,方向の対格ではなぜないのか),その後の ad quartam legionem はなぜ ad なのか(これは OLD s.v. ad 18 b),方向の要素が二つ並べられているだけなのは気にならないか(ラテン語では方向の要素は並列される)なども参照先があると楽ですし,学習者にも体系的ラテン語文法知識を頭の中に作るのに大変有益だと思うのです.
 特に,初心者は ut 恐怖症に陥りがちですから(はずかしながら僕もですが),p. 20 の一節で出てくる二つの ut は,恐怖症発症の引き金になりそうな部分だと思うのです.一つは ut scitis (ちなみにテキストとしてはこの挿入句は前後をコンマで区切った方が初心者用にはわかりやすい文面だと思います)は Kühner-Stegmannなら I. p. 711 のような箇所,nihil mihi potius fuit quam ut Masinissam convenirem の解説では,「接続法を導く名詞節を導」くのは確かですが,これが文法書では結果文のところに入り,主語として用いられる結果文であること(Kühner-Stegmann の II. p. 213 b 並びに p. 214 下から12行目のこの例と周辺の類例)など,やはりもうちょっと文法体系の中での位置を明確にする解説が可能であったらと思います.
 とはいえ,引いているだけで上半身の筋肉が30パーセントぐらいアップしそうなハンドブックの Kühner-Stegmannを参照しても初心者の恐怖症をますます煽るばかりですから,やっぱり初心者のための,簡潔であってもしかし全てが体系的に作られている文法書が,間に一冊あってほしいなあとつくづく思うわけです(というか,おそらくですが,すでに著者はこのような本をすでに予定されているのではないかと希望しつつ想像しています).

 先に申し上げたように,以上のことはこの本の欠点などではもちろんありません.この本を使えば,初心者でも徒らに語の形を探し求めて辞書と文法書の中を這いずり回ることなくキケローの原文を購読することができ,その分の時間を重要事項の暗記などに充てられるわけですから,最初の一冊目の読本として,誰にも有意義な本となると思います.

 まだ全部を詳細に見てはいないので,ラテン語のリハビリを兼ねて,もっと詳細にこの本を使って勉強してから何か書こうと思います.そんな気力が出てきたら,僕なりのリファレンス文法解説などをこちらで書いていけたらと思っています(休眠サイト化しなければですが).



【2018/02/07 17:10】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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