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ラテン語入門 21 第3b変化(i 幹)動詞,第4変化(ī 幹)動詞の直説法現在時制能動態の人称変化

 大分時間が空いてしまいました.今回は規則動詞ののこり二つのタイプ,第3b変化動詞と第4変化動詞の現在時制の変化です.

 第3b変化は,第3変化の亜種のようにみえますが,たまたま現在時制能動態不定詞の形が,第3変化のそれと同じ -ere であるため,第3変化とひとくくりにされたものです.比較的最近になって,歴史的にみると,第4変化動詞とまとめられるべきものということがわかりました.しかも,実は第3b変化のほうが基本的な形で,第4変化のほうが音変化してできた形です.ですから,第3b変化を第4変化として,第4変化を第4b変化とするほうが実態にはあっていますが,以前の分類を踏襲しないと,他の文法書などと統一がとれないことになるので,従来通りの名前でいくことにします.日本の文法書では,第3b変化を第5変化と分類しているものがありますが,第5変化という名称は,その文法書のみでしか通用しないので,注意して下さい.

第3b変化動詞 capiō, capere, cēpī, captum 「掴む,捕まえる」直説法現在時制能動態
  単数 複数
一人称 capiō 「私は掴む」  capimus 「私達は掴む」
二人称 capis 「君は掴む」 capitis 「君達は掴む」
三人称 capit 「彼(彼女,それ)は掴む」 capiunt 「彼ら(彼女ら,それら)は掴む」


第4変化動詞 audiō, audīre, audīvī, audītum 「聞く」直説法現在時制能動態
  単数 複数
一人称 audiō 「私は聞く」  audīmus 「私達は聞く」
二人称 audīs 「君は聞く」 audītis 「君達は聞く」
三人称 audit 「彼(彼女,それ)は聞く」 audiunt 「彼ら(彼女ら,それら)は聞く」



 幹末母音は第3b変化は短い i, 第4変化は長い ī となっています.どちらも,三人称複数形 capiunt, audiunt で,第3変化動詞にみられた幹母音が挿入されています.
 第3変化では,全てが短母音の i となっており,第4変化では本来は長母音 ī でしたが,これも前述の規則にしたがって,単数一人称と三人称,複数三人称で,幹末母音が短母音化して,audiō, audit, audiunt となります.

 この i ないし ī の幹末母音の由来は,実は両方とも同じで,これは -je/o- 現在と呼ばれる,現在時制を形成する後接辞に由来します.これは実は第1変化動詞などでも元々はあったものなのですが,第1変化動詞では,半母音 j は,母音間で消失するため,消えてしまっています(例えば「君は贈る」*dōnā-je-s > *dōnā-e-s > 古典ラテン語 dōnās「君は贈る」).
 一方で,第3b, 第4変化では,子音の直後に半母音が付いているために消失しなかったのです.
 第3b変化では,この j はそのまま短母音の i となりますが,第4変化では,「Sieversの法則」が働き,長母音となります.これは,長母音を含む音節または短母音でも二つ以上の子音が続く場合に,半母音・流音が長くなるという規則(ラテン語ではさらに,二音節以上の語幹の後すべてに一般化)で,これにより,audiō, sentiō 「感じる」, hauriō 「汲む」 の場合は,語幹は *aud-je/o- sent-je/o- haur-je/o- から Sievers の法則により aud-ije/o sent-ije/o- haur-ije/o となり,aud-īe/o- sent-īe/o- haur-īe/o- となります.
 それ以外の,短母音+1子音に終わる語幹は,たとえば capiō, faciō 「なす,作る」, fugiō 「逃げる」 などでは,cap-je/o, fac-je/o, fug-je/o から cap-ie/o fac-ie/o- fug-ie/o- となり,第3b変化となります.
 このまま現在時制の人称変化をつくると,第3b変化も第4変化も,*capiō, *capies, *capiet, *capiemus, *capietis, *capiont ないし *audīō, *audīes, *audīet, *audīemus, *audīetis, *audīont となり,古典ラテン語では capiō, †capies, †capiet, †capiemus, †capietis, capiunt,あるいは audiō, †audies, †audiet, †audiemus, †audietis, audiunt となるはずなのですが,†のついている語形では,幹母音が落ちます.他の印欧語ではこの幹母音が残っており,ラテン語でのこの幹母音の脱落は原因はよくわかっていないようです.最終的には,上の表のように,第3b変化では,capiō, capis, capit, capimus, capitis, capiunt (o > u は弱化による),第4変化では audiō (母音前で ī 短母音化) audīs, audit (末尾音の t の前で ī 短母音化), audīmus, audītis, audiunt (母音前で ī 短母音化,o > u は弱化による)となります.
 不定詞は第3b変化動詞では -ere になりますが,これは弱化によるものす(-r-の前では開音節短母音は e に弱化).つまり,たとえば *capire > capere となります(このため,第3変化 legere などとと同じ語尾になっており,第3変化の亜種とされてしまった).第4変化では,長母音になっているため,弱化は起こらす(基本的に長母音で弱化は起こらない),audīre となります.
 なお,古い文法書では,capiunt, audiunt の幹母音は,第3変化の類推によるものとされていますが,今は上述のように,元々あった幹母音ということがわかっています.


 まあ説明をすると以上のようになりますが,単純に語尾の変化を覚えておけば初級のうちは(というか比較言語学をやるのでなければ)大丈夫でしょう.
 早速変化の練習をしましょう.変化表を作ってみてください.○のついているものには,カーソルをあてると解答がでます.


     単数複数
一人称 
二人称 
三人称 
  
 
 

      


第3b変化動詞
rapiō, rapere, rapuī, raptum 奪う○
accipiō, accipere, accēpī, acceptum 受け取る○
cupiō, cupere, cupīvī/cupiī, cupītum 欲する
faciō, facere, fēcī, factum する○
iaciō, iacere, iēcī, iactum 投げる
fugiō, fugere, fūgī, fugitūrus 逃げる○
corripiō, corripere, corripuī, correptum 引っ掴む

第4変化動詞
aperiō, aperīre, aperuī, apertum 開ける
audiō, audīre, audīvī, audītum 聞く○
dormiō, dormīre, dormīvī, dormītum 眠る○ (完了形勘違いしてました.ご指摘感謝!)
ērudiō, ērudīre, ērudīvī, ērudītum 教育する
hauriō, haurīre, hausī, haustum 汲む○
fīniō, fīnīre, fīnīvī, fīnītum 終える
pūniō, punīre, punīvī, punītum 罰する○
sciō, scīre, scīvī, scītum 知る○
nesciō, nescīre, nescīvī, nescītum 知らない
sentiō, sentīre, sēnsī, sēnsum 感じる
veniō, venīre, vēnī, ventum 訪れる○



名詞の復習.これも○印のみ解答付きです.わからなかったら以前の復習を是非してみて下さい.

     単数複数
主格 
属格 
与格 
対格 
奪格 
呼格 
  
 
 
 
 
 

      


hasta, ae, f. 槍
epistula, ae, f. 手紙○
fīlius, ī, m. 息子○
puer, puerī, m. 少年○
servus, ī, m. 奴隷○
puella, ae, f. 少女
amīcus, ī, m. 友人
pecūnia, ae, f. お金
ager, agrī, m. 畑○
thesaurus, ī m. 宝
aerārium, ī, n. 宝庫○
vir, virī, m. 男
oppidum, ī, n. 町○
forum, ī, n. 広場
lēgātus, ī, m. 使者
urna, ae, f. 瓶

ラテン語を日本語に,日本語をラテン語にしてみてください.カーソルをあてると訳語がでます.

第3b変化動詞
frūmentum ex agrīs rapiunt.   
 ex, ē (h 除く子音の前)+奪格「……から」
saepe puerī pōma rapiunt.   
pecuniam ex aerāriō rapit.   
なぜ(quid?)お前達は宝物(thesaurus, ī, m.)を宝庫から奪うのか.   
quid facis? — nihil faciō.   
 quid? 「何を?」 nihil 「何も…ない」
servī nihil faciunt.   
お前達はなにをしているのか?私達は何もしていない.   
cotīdiē ā fīliīs epistulās accipimus.   
 accipiō は 前置詞 ab, ā (h を除く子音の前) + 奪格 で「…から受け取る」の意味になる.
fīliī saepe epistulās ab amīcīs accipiunt.   
fīlius pecūniam ab amīcīs accipit.   
しばしば男は金を息子から受け取る.   
私はしばしば手紙を友人たちから受け取る.   
ex oppidō fugimus.   
quid fugis?   
populus ex oppidō fugit.   
息子達は町から逃げている.   
なぜ君たちは町から逃げているのか.   

(第4変化動詞)
dormītisne?   
 -ne 「……なのか?」疑問文をつくる後接語.ただし,ラテン語ではこれ無しでも疑問文は可能.
puella dormit.   
servī nōn dormiunt.   
puer bene dormit.   
 bene 「よく」この場合は「ぐっすりと」
奴隷よ,お前は寝ているのか?   
息子達はよく寝ている.   
cotīdiē urnā aquam haurīs.   
urnā は道具の奪格.「瓶で」
puellae urnīs aquam hauriunt.    
奴隷達は毎日瓶で水を汲んでいる.   
legātī Rōmam veniunt.   
 Rōmam は Rōma の方向の対格.固有名詞は前置詞なしで方向を表す(これについて使い分けなどは後述).
saepe Rōmam venīmus.   
しばしば君たちはローマを訪問する.   
dominus servōs pūnit.   
servōs graviter pūnīs.   
 graviter 重く,厳しく
なぜお前達は奴隷達を罰するのか.   
Latīnē scīmus.   
 Latīnē, Graecē 「ラテン語で」「ギリシャ語で」副詞.sciō, nesciō は「知っている」「知らない」.
 Latīnē, Graecē sciō (nesciō) で「ラテン語,ギリシア語ができる,わかる(わからない)」
Latīnē et Graecē scīs.   
puerī Latīnē nesciunt.   
君たちはラテン語ができる.   
私はギリシア語ができない.   
nōn audīs? — audiō.    
saepe in forō vōcem puerōrum audīmus.   
 in + 奪格 「……で」(場所) vōcem 「声を」(vōx, vōcis f. 「声」(第3変化名詞)の単数対格)
君たちは聞いていないのか.——我々は聞いている.   
我々はしばしば森(silva, ae, f.)の中でツグミ(turdus, ī, m.)たちの声を聞く.   


最後にいくつか古典原文から.まだやっていない項目もはいりますが,なんとなく意味でもわかればいいです.

Aquila nōn capit muscās.  鷹は蝿を捕まえない.(諺)
aquila, ae, f. 鷹 musca, ae, f. 蝿

tum magnam corripit hastam et iacit. その時,彼は大きな槍を引っ掴み,そして投げつける.(Verg.Aen.10.335-36)
 magnus, a, um 巨大な hasta, ae, f. 槍 corripiō 引っ掴む iaciō 投げる
 magnam は hastam を修飾.詩のみならず散文でも,形容詞は修飾する名詞から離れていることがよくあります.
 それからこの現在時制は,歴史的現在という,過去の事実をあたかも今行われているかのように描写するものです.

officia etiam ferae sentiunt. (Seneca, De Beneficiis 1.2.5)
獣たちでさえ,恩寵を感じるのである.
 officium, ī, n. 奉仕,恩寵,義務 etiam …でさえ fera, ae, f. 獣

lētum nōn omnia fīnit. 死は全てを終わらせるわけではない. (Prop.4.7.1)
 lētum, ī, n. 死 omnia (omnis「全ての」の中性複数対格) 全てのものを 

lēgātī in castra veniunt. (Cic.Pro Roscio Amerino 25)
 使者たちは陣営の中へ到着する.
 in + 対格「……(の中)へ」 castra, ōrum, n.pl. 陣営(プルーラーリア・タントゥム)


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【2013/12/27 20:42】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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風間喜代三『オウィディウスでラテン語を読む』

 
  風間喜代三『オウィディウスでラテン語を読む』東京:三省堂,2013.

 オウィディウスが日本語の対訳で読めるというのは,本当にありがたいことではあります.ラテン語で対訳あるいは注釈付き読本などは,ガリア戦記第1巻(カエサル『ガリア戦記』遠山一郎編,東京:大学書林,2009)を覗くと,普通に入手できるのは,大学書林語学文庫に収録されている,今となっては50年以上前に出版された対訳シリーズになります.それらがどれぐらい読まれているかとなると,結局はあまり読まれていないと思います.
 とはいえ,最初の1冊ぐらいは,外国語を通してラテン語を学ぶ際の不安感なしに,日本語の訳文と解説で安心してしっかりとラテン語の基礎を固めたいものではあります.風間先生のこの本のコンセプトは,日本でも人気の高いラテン詩人(といっても古典をある程度やっている人の間のみですけど)の作品を使って,入門を終えられた学生に,母語である日本語の対訳と解説をとおして,ラテン語のさらなる基礎固めを可能にしてくれるはずのものだったと思います.もし,これが万全の形で出版されていれば,日本のラテン語学習者にとってはこの上ない手引きとなるばかりか,日本のラテン語研究のレベル自体が大きく上がることにもつながることでしょう.



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【2013/12/17 01:34】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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休止すみません

1ヶ月ぐらい入門が休止してしまって申し訳ありません.

先ほどこの本を入手して,ちょっと色々考えています.

オウィディウスでラテン語を読むオウィディウスでラテン語を読む
(2013/09/28)
風間 喜代三

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敢えて言えば……おすすめはできないかな,という感じですね…….詳しくはまた後ほど.




【2013/12/14 12:12】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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