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書き直し

 ラテン語入門の動詞の部分ですが,少し書き直さなければいけないところが出てきて,多分あとから動詞のあたりの解説など書き直すと思います.幹母音のあたりの用語を中心に解説を訂正すると思いますが,スマートな説明をするのにまだしばらく考えなければいけないですね.一旦単純に説明しておいて,詳しいことはそれ専用の解説を作るのがいいのかもしれません.多分印欧祖語の解説から始まるので,これはこれで怖いですが……(そもそもそんなもの書けるのかどうかわかりませんが).



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【2013/10/29 02:34】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ラテン語入門 18 第2変化名詞 (3) -um に終わる中性名詞

 第2変化(o幹)名詞の中性名詞も,実は殆ど -us に終わる男性名詞と同じで,異なるのは単複ともに主格と呼格だけです.

第2変化名詞(o幹) -um に終わる中性名詞 oppidum, -ī, n. 「町」
      単数  複数           単数  複数
主格  oppidum 「町は」 oppida 「町々は」     主格  dominus  dominī
属格  oppidī 「町の」 oppidōrum 「町々の」     属格  dominī  dominōrum
与格  oppidō 「町に」 oppidīs 「町々に」      与格  dominō  dominīs
対格  oppidum 「町を」 oppida 「町々を」     対格  dominum  dominōs
奪格  oppidō 「町で,から」  oppidīs 「町々で,から」     奪格  dominō  dominīs
呼格  oppidum 「町よ」 oppida 「町々よ」      呼格  domine  dominī


 上の表には,-us に終わる男性名詞を並べているので,比較してみて下さい.dominus, -ī と異なるのは,表で黄色の背景色で強調している部分です(単数対格は同じですが).主格と対格(ならびに呼格)の形が同じになっています.この主格と対格が同じ形になるということは,第2変化名詞以外でも常に共通します(ドイツ語などでも同じ事が起こっています).
 単数と複数それぞれで,黄色の部分が同じ形ですから,-us に終わる男性名詞の形がマスターできていれば,それほど難しくはないと思います.

 男性名詞の場合と同様に,-um に終わる中性名詞でも,-i に終わる語基のものがあります.中性名詞では単数属格のみが問題になります.

第2変化名詞(o幹) -i-um に終わる中性名詞 ingenium, -ī 「天性,才能」
      単数  複数
主格  ingenium 「才能は」 ingenia 「才能たちは」
属格  ingenī, ingeniī 「才能の」 ingeniōrum 「才能たちの」
与格  ingeniō 「才能に」 ingeniīs 「才能たちに」
対格  ingenium 「才能を」 ingenia 「才能たちを」
奪格  ingeniō 「才能で,から」  ingeniīs 「才能たちで,から」
呼格  ingenium 「才能よ」 ingenia 「才能たちよ」

 これも fīlius, -ī, m.「息子」の場合同様に,属格単数は ingénī が普通で(アクセントに注意!iī が融合する前の形のアクセント位置を保つ),ingeniī はやや少ないです(がこちらも使われます).複数与格・奪格は必ず ingeniīsで,融合しません(fīliīs と同様です).

 なお,ギリシア語とは異なり,中性複数の主語に対して,動詞が三人称単数になるようなことは,ラテン語ではほとんど起こりません.


 第2変化では,次の三つの単語のみ,-us に終わりながら,中性名詞となります.

  vīrus, -ī, n. 「毒」  vulgus, -ī, n. 「大衆」  pelagus, -ī, n.「海」

どれも単数でしか用いられない,シングラーリア・タントゥムです.主格と対格の形が同じになるという中性名詞の原則に従って,単数対格も vīrus, vulgus, pelagus になり,実際にこの形が対格として用いられます.その一方で,いきなり例外ですが,対格に vīrum, vulgum, pelagum の別形が時折現れます(これは古典作家でもあります).
 なお,vīrus は殆ど主格と対格しか用いられません.このように,変化形の一部が欠落して使われないか,殆ど使われないような名詞や動詞のことをデーフェクティーウァ(dēfectīva 欠如名詞,欠如動詞)といいます.

 
 練習に移りましょう.まずは上の表であげた oppidum, -ī, n.「町」 と ingenium, -ī, n.「天性,才能」の変化を覚えましょう.

名詞変化表

     単数複数
主格 
属格 
与格 
対格 
奪格 
呼格 
  
 
 
 
 
 

      


さらに以下の -um に終わる第2変化名詞の格変化表を作ってみてください.さすがにもう全部に解答は付けませんが,上の二つだけ,カーソルを当てると解答がでます.

  verbum, -ī, n.「言葉」
  proelium, -ī, n.「戦闘」
  bellum, -ī, n.「戦争」(bellum は全体としての戦争,その中での戦闘行動が proelium)
  castra, -ōrum, n.pl. 「陣営」(プルーラーリア・タントゥム!)
  perīculum, -ī, n.「危険」
  dōnum, -ī, n.「贈り物」
  vīnum, -ī, n.「葡萄酒」(ほぼシングラーリア・タントゥム.容器などで分けてある時には 複数も.)
  incendium, -ī, n. 「火災,火」
  aurum, -ī, n. 「金」(シングラーリア・タントゥム!)
  initium, -ī, n. 「開始」
  ferrum, -ī, n. 「鉄,刀(集合名詞として)」 (シングラーリア・タントゥム!)
  ōtium, -ī, n. 「休暇」 (シングラーリア・タントゥム.ただし詩で韻律の都合で複数も)

こちらは復習.

  dominus, -ī, m. 「主人」
  Rōmānus, -ī, m. 「ローマ人」
  Germānus, -ī, m. 「ゲルマン人」
  fīlius, -ī, m. 「息子」


動詞もしつこいですが復習してみてください(さすがに解答は付けませんが).なお,placeō は,「主語が与格に気に入られる」,「与格が主語を気に入る」という構文になります(Dōnum virō placet 男は贈り物を気に入っている). 一方で,dēlectō は「主語が対格を喜ばせる」「対格が主語を喜ぶ」という構文になります(Dōnum virum dēlectat 男は贈り物を喜んでいる).

  vāstō, vāstāre, vāstāvī, vāstātum 「荒廃させる」
  parō, parāre, parāvī, parātum 「準備する」
  expugnō, expugnāre, expugnāvī, expugnātum 「攻略する」
  dēlectō, dēlectāre, dēlectāvī, dēlectātum 「喜ばせる」
  placeō, placēre, placuī, placitum 「気に入られる」
  moveō, movēre, mōvī, mōtum 「動かす,移動させる」
  timeō, timēre, timuī, — 「恐れる」

     単数複数
一人称 
二人称 
三人称 
  
 
 

      


ラテン語は日本語に,日本語はラテン語に訳して下さい.

bella Rōmānīs placent.   
dōna fīliīs placent.   
ōtium dominum dēlectat.   
vīnum vulgus dēlectat.   
贈り物を主人は喜んでいる.   
大衆は休暇を気に入っている.   
Germānī bella parant.   
bellum nōndum parāmus.   
  nōndum「まだ……ない」
Rōmānī bellum parant.   
ゲルマン人らはまだ戦争の用意をしていない.   
彼らは戦争の用意をしている.   
Rōmānī incendiō oppidum vāstant.   
ferrō oppida vāstāmus.   
Germānī ferro et incendiō oppida vāstant.   
Rōmānī sine perīculō oppidum expugnant.   
  sine 前置詞「……なしに」 sine + 奪格の形で使われます.
お前達は町を火で荒廃させている.   
ローマ人らは剣で町々を荒廃させている.   
我々は危険なしに町々を攻略している.   
Rōmānī incendī perīculum timent.   
fīlī ingenium dominum dēlectat.   
vulgus incendium oppidī timet.   
ローマ人らは戦争の危険を恐れていない.   
戦闘の危険を大衆は恐れている.   
      








【2013/10/28 14:08】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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フォントの問題

 フォントをどうするかで,ちょっと見栄えの試験を.

 問題はフォントに色々装飾が付く場合なのですが,今のところ一番綺麗に見えるのが,MacOS X ではLucida Grande で,色々文字の装飾がついてもずれたりしなくて一番見栄えがいいのですが,Windowsに標準搭載されていないようですね.ダウンロードすれば使えるようになるなら,一応リンクをあげておこうとおもうのですが.Windows 版サファリを使うと使えるようになるようです.ただし,Windows では全角数字が Lucida Grande は駄目という話がネットでは言われているようで,どうなのかとも思います.もし大丈夫なようであれば,Lucida Grande を最優先させたい気もしますが.多少ずれますが,メイリオがまあ表示が綺麗なほうではあります.

Lucida Grande の例:

ā́ (ā にアクセント) r̥ (r の真下に 。) k̂ (k の上に ̂ ) V̆ (V に短音記号 ̆ ) V̄ (V に長音記号 ̄) u̯ (u の下に ̯ ) 1234567890(全角数字)


ヒラギノ角ゴシックProN の例:

ā́ (ā にアクセント) r̥ (r の真下に 。) k̂ (k の上に ̂ ) V̆ (V に短音記号 ̆ ) V̄ (V に長音記号 ̄) u̯ (u の下に ̯ ) 1234567890(全角数字)


メイリオ の例:

ā́ (ā にアクセント) r̥ (r の真下に 。) k̂ (k の上に ̂ ) V̆ (V に短音記号 ̆ ) V̄ (V に長音記号 ̄) u̯ (u の下に ̯ ) 1234567890(全角数字)


MS Pゴシック の例:

ā́ (ā にアクセント) r̥ (r の真下に 。) k̂ (k の上に ̂ ) V̆ (V に短音記号 ̆ ) V̄ (V に長音記号 ̄) u̯ (u の下に ̯ ) 1234567890(全角数字)


ブラウザの環境設定でフォントを Lucida Grande にしていれば自動で Lucida Grande にはなるようなので,フォント全部を綺麗に見たい方は,それで見れると思います.
僕のほうでは上は読み込んだら全部環境設定のフォントしか出てこないのですが,なにか間違ってるかな?
タグの打ち方がでたらめでした……



【2013/10/26 20:30】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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地震

 ラテン語入門の最新回を投稿したら,久々に長い地震が来ました.なんだか今でも揺れているような気がします.福島には1メートルの津波警報.そういえば護岸工事は予算の関係か結局適当なやつでごまかしたままということなので,1メートルはさすがに大丈夫でしょうが(とういうかそうであって欲しいですが)数メートルの津波だと,最悪の事態もありかなと思います.しかし福島自体は震度すごくはなかったようで,これは助かったかもしれません.今ベントで汚染された巨大な煙突に破断個所があるそうで,これが地震で折れでもしたら,周辺が10シーベルトぐらいの線量になって,本当に誰も近寄れない状態になるそうです.要するに致死量はもちろんですが,浴びてからうっかり間違って命が助かったら,全身のDNAが再生不能になって,生きたまま皮膚や肉が腐ってはがれ落ちる地獄の責め苦が待っているという線量です.まあ今は大丈夫でも,超高線量で補修等に近づけないでしょうから,いずれ腐食などが進んで折れることは確かなのでしょうね…….




【2013/10/26 03:09】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ラテン語入門 17 第2変化 (o幹) 名詞 (2) -er に終わる男性名詞

 先に第2変化名詞のうち,-us に終わる男性名詞を見ました.表でもう一度見ておきましょう.

第2変化名詞(o幹) -us に終わる男性名詞 dominus 「主人」
      単数  複数
主格  dominus 「主人は」 dominī 「主人たちは」
属格  dominī 「主人の」 dominōrum 「主人たちの」
与格  dominō 「主人に」 dominīs 「主人たちに」
対格  dominum 「主人を」 dominōs 「主人たちを」
奪格  dominō 「主人で,から」  dominīs 「主人たちで,から」
呼格  domine 「主人よ」 dominī 「主人たちよ」 = 複数は主格と同じ

 -er に終わる男性名詞は,基本的にこれと一部しか変るところがありません.つまり,単数主格と,単数呼格です.-er に終わる男性名詞は,二つのタイプに分類されます.変化表で見てみると……

      単数  複数        単数   複数
主格  puer 「少年は」 puerī 「少年たちは」
  主格  ager 「畑は」 agrī 「畑たちは」
属格  puerī 「少年の」 puerōrum 「少年たちの」
  属格  agrī 「畑の」 agrōrum 「畑たちの」
与格  puerō 「少年に」 puerīs 「少年たちに」
  与格  agrō 「畑に」 agrīs 「畑たちに」
対格  puerum 「少年を」 puerōs 「少年たちを」
  対格  agrum 「畑を」 agrōs 「畑たちを」
奪格  puerō 「少年で,から」  puerīs 「少年たちで,から」
  奪格  agrō 「畑で,から」  agrīs 「畑たちで,から」
呼格  puer 「少年よ」 puerī 「少年たちよ」
  呼格  ager 「畑よ」 agrī 「畑たちよ」


 赤のマーキングがしてある e をみるなら,一方の puer では,主格の e がそれ以外の格(斜格と呼びます)でも puerī, puerō のように保たれていますが,ager のほうは,斜格では agrī, agrō のように,呼格以外は e が消えています.いずれも,単数呼格に -e は付かずに,主格と同じ形になります.まとめると:

  (A) puer, puerī 型……単数主格が斜格の語基と同じもの
  (B) ager, agrī 型……斜格の語基が単数主格と異なり,r の前の e が欠落するもの

 このような二つの形が生まれたのは,実はラテン語の歴史が絡んでいます.まず,どちらも単数主格の本来の形は 語基がそれぞれ r に終わる *puer-, *agr- に,単数主格の格語尾の(後に-us となるはずの) -os のついた,*pueros,*agros でした.

 (A) の *pueros の語尾の o は,重い音節(長母音または子音二つ分が母音に続く音節,あるいは多音節)の後の語末の音節で r もしくは t と s の間の o が消失するという音変化(公式: (i, o) > ø / (t, r)_s# ただし重い音節の後で)を受け,*pueros > *puers となります.その後 rs > rr により *puerr >,rr の二重子音は語末ではゆるされず,単音化するので *puer となります.

 (B) は元の形が元々 e のない *agros で,これも r もしくは t と s の間の o が消失するという音変化をうけて *agrs になります.r はこの時,母音扱いされて *ags となり,この が母音+ r となって agers > agerr > ager となります.つまり,本来の agr- の語基は斜格には agrī, agrō のようにそのまま残されたのですが,主格でのみ語基と r の間に e が後から生じて,ager となり,あたかも puer と同様 -er に終わることとになったのです.

 (A) puer, pueri 型に属する名詞は……

  gener, generī m. 義息  socer, socerī, m. 義父  vir, virī m. 男(語幹に e は入っていませんが)
  vesper, vesperī m. 夕暮れ lūcifer, lūciferī, m. 明けの明星
  līberī, līberōrum m.pl. 子供  posterī, posterōrum m.pl. 子孫  
  īnferī, īnferōrum m.pl. 冥界の住人,死者  superī, superōrum m.pl. 天上の住人=神々

 最後四つは,通常単数がなく,複数形のみが主に集合名詞的に使われる名詞(まれに単数にも使われる).プルーラーリア・タントゥム(plūrāria tantum「只複数だけ」)と呼ばれます.このような名詞は,複数形の主格と属格があげられ,性の後に複数を意味する pl. が添えられます(これについて網羅的に集めているのが Kühner-Holzweissig: pp. 501 以下です).
 逆に単数しか使われない語もあり,こちらは シングラーリア・タントゥム(singulāria tantum「只単数だけ」)と呼ばれます.上の lūcifer のように,一つしかない天体,物質名詞などがシングラーリア・タントゥムになります.ただし,どちらも例外がたまに見つかる場合もありますから,絶対一方の形しかないとも言えません.
  
 (B)に属する名詞は……

  aper, aprī m. 猪  caper, caprī m. 山羊
  liber, librī m. 本(上の līberī「子供」と混同しないよう!)
  magister, magistrī m. 教師  faber, fabrī m. 職人  minister, ministrī, m. 召使い
  culter, cultrī, m. 小刀

 ラテン語の基本的語彙の中では,上の例ぐらいしかないようです(基本単語帳などを目視で探した限りでは).ラテン語全体の語彙ではもっと沢山あると思いますが,大体これだけで代表的な語彙はすべて出尽くしていると思います.また気がついたら追加すると思います.

 なお,辞書では,もし属格の形を省略形で表記するなら,puer のほうは puer, -erī, m. のように,また ager のほうは ager, -grī, m. のように記述されされます.ここでは余計な混乱を避けるため,形を全部あげるようにします.


最後に練習.上の語彙で,変化表を作ってみて下さい.(答えは上の単語にカーソルを当てるとでます)

名詞変化表

     単数複数
主格 
属格 
与格 
対格 
奪格 
呼格 
  
 
 
 
 
 

      


動詞も少し復習しましょう.直説法現在時制能動態の人称変化を作って下さい.さすがに全部に解答は付けなくていいですね…….secō と rīdeō だけ解答を付けました.(動詞のところ少し誤植があったので訂正しました)

  castīgō, castīgāre, castīgāvī, castīgātum 「叱る」
  secō, secāre, secāvī, sectum 「切る,切り裂く」
  dōnō, dōnāre, dōnāvī, dōnātum 「贈る」
  laudō, laudāre, laudāvī, laudātum「讃える,褒める」
  fleō, flēre, flēvī, flētum 「泣く」
  rīdeō, rīdēre, rīsī, rīsum 「笑う」


     単数複数
一人称 
二人称 
三人称 
  
 
 

      




ラテン語は日本語に,日本語はラテン語に訳してみてください.文にカーソルで解答がでます.
Magister puerīs librōs dōnat.   
Puerī magistrō librum dōnant.   
Socer generō aprum dōnat.   
先生は少年たちに本を与える.   
男は職人らに山羊を与える.   
Magistrum puerī laudāmus.   
Dominus magistrum līberōrum laudat.   
Ministrī līberōs fabrī laudant.   
召使いらは少年達を褒めている.   
職人は子供達の教師らを讃えている.   
Virī ministrōs ignāvōs castīgat.   
 (ignāvus 「怠惰な」.形容詞はまだやっていませんが,修飾する語の語尾の形に語尾を変化させればOK)
Magistrī nōn puerōs īgnāvōs laudant.   
Dominus līberōs īgnāvōs castīgat.   
教師は怠惰な少年を叱っている.   
我々は怠惰な職人たちを叱っている.   
Virī cultrīs aprōs secant.   
Minister cultrō aprum secat.   
cultrīs caprum secāmus.   
召使いらは小刀で山羊を切っている.   
Puer, quid rīdēs?   
 (quid なぜ?)
ō magister, quid līberōs dominī rīdēs?   
 (rīdeō は「対格を笑う」の形でも使われる)
Virī, quid flētis?   
義父よ,あなたはなぜ泣いているのか.   
男よ,お前はなぜ怠惰な職人らを笑っているのか.   
      






【2013/10/26 01:45】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ラテン語入門 16 名詞の格と第2変化 (o幹) 名詞 (1) -us に終わる男性名詞

 今までは動詞中心に見てきましたが,ここからは名詞です.まずは次の文章から見て下さい.

(A) dominus fīliōequum dōnat.
主人は息子に馬を贈る.

語彙:dominus「主人」 fīlius 「息子」 equus 「馬」 dōnō, dōnāre, dōnāvī, dōnātum 「贈る」
(注意:このように名詞が主語になる時には,動詞は三人称を使います.三人称単数か複数かは,主語の数に一致.この場合は主語が単数なので,三人称単数になっています)

 ここで登場する名詞は,いずれも同じタイプの動詞で,単数で主語になる時は,dominus, fīlius, equus と,-us に終わる名詞です.このタイプの名詞は,単数の主語を表す形「は」(あるいは「が」)の時は dominus 「主人は」のように -us で終わり,単数の「に」の形になる時は,fīliō 「息子に」のように,-ō に終わる形になりす.また,単数の「を」となる時には,equum 「馬を」のように,-um で終わる形になります.
 大雑把に言えば,語尾の部分の -us, -ō, -um が,日本語の「は」「に」「を」であるようです.

 ただし,これは実は微妙に日本語のそれとは異なります.上の文例(A)で登場する名詞を全て複数にしてみる(B)と……

(A) dominusfīliōequumdōnat.
主人息子贈る.
(C) dominīfīliīsequōsdōnant (三人称複数!).
主人らは息子らにたちを贈る.

(A)(B)の太字にしている,いわゆる「てにをは」の部分をあげるなら……

  「は」「たちは」-us vs. -ī,
  「に」「たちに」-ō vs. -īs,
  「を」「たちを」-um vs, -ōs.

 ラテン語のほうでは,「は」「に」「を」にあたる要素,それから複数を表す「たち」にあたる要素を抽出することはほぼ不可能で,6つの形は共通点のない,ほぼ独自の形になっています.

 動詞その他の品詞に対して,ある名詞がどのように関わるか,その関わり方が「格」と呼ばれます.日本語の上の例の「は」「に」「を」も格を表す助詞なので,「格助詞」と言われます.「格助詞」は僕たちも「は」「に」「を」というぐあいに抽出できて,意識することができることから,単独では使えないものの,「語」であるといえるでしょう.しかし,ラテン語の上の us, ō, ī, のほうは,切り離されたとたん意味のない音になります.また,日本語で,格を無視して「主人」「馬」ということはできますが,ラテン語ではそれはできません.つまり,†domin,†equ という語は存在できません.現れる形は,つねに dominus「主人は」equum「馬を」 など,語尾がついた形になります.この語尾は,動詞の場合同様に,そのつど要求される「格」に応じて,折り曲げるように変形される語の一部であり,屈折語尾なのです.

 ラテン語の名詞は,語尾のタイプにより,第1-第5変化まで,5つの変化に分けられます.上の dominus, fīlius, equus は,第2変化に属します.名詞の人称語尾は,音変化などを大きく受けており,この5つの変化のタイプ同士では,音変化と語尾自体の付け替えなどで,動詞ほど目立つ共通点はあまり残っていません.例えば,上の(A)を,第1変化名詞でやってみると,(C)のようになります.語尾を対比させて見て下さい.

(A) dominus fīliōequum dōnat.
主人は息子に馬を贈る.
(C) fīlia puellae rosam dōnat.
娘は少女に薔薇を贈る.


 共通点は,対格に -m が見いだされる程度(これは実際に共通するものですが)しかありません.ですから,その単語が,どの変化をするかは,それぞれ別個にしっかり覚えなければいけません.

 ラテン語の名詞は,語尾の他にも,「性」によってで3つのカテゴリー,つまり男性名詞・女性名詞・中性名詞に分けられます.このカテゴリー分けは,第3変化ではいずれの性も多数含まれますが,第1変化と第4変化は大半が女性,第2変化と第5変化は大半が男性か中性となります.しかし,少数派も無視できるほど少なくはない重要語彙をもっています.この男性名詞・女性名詞・中性名詞のカテゴリー分けは,名詞に形容詞がつく時の形を決めるものですから,個々の名詞を覚える際には,名詞の語尾変化のタイプに加えて,性は必ず覚えなければいけません.なお,この性別は,自然性に対応するものも少なくありませんが,多くは文法的なカテゴリー分けで,性別をともないそうもない物質名詞や,抽象概念にも用いられます.

 さて,具体的に名詞の変化を見て行きましょう.格を説明するのに都合がいいので,第2変化(o 幹)名詞の男性名詞で説明していきます.なお,第2変化名詞は,主格が-us に終わる男性名詞(若干は女性名詞,稀に中性名詞)と,-er に終わる男性名詞,-um におわる中性名詞があります.-er に終わる男性名詞と,中性名詞のほうは別の回にまわします.

第2変化名詞(o幹) -us に終わる男性名詞 dominus 「主人」
      単数  複数
主格  dominus 「主人は」 dominī 「主人たちは」
属格  dominī 「主人の」 dominōrum 「主人たちの」
与格  dominō 「主人に」 dominīs 「主人たちに」
対格  dominum 「主人を」 dominōs 「主人たちを」
奪格  dominō 「主人で,から」  dominīs 「主人たちで,から」
呼格  domine 「主人よ」 dominī 「主人たちよ」 = 複数は主格と同じ

 ラテン語の名詞の格を表す部分は「格語尾」とよばれます.本来なら,名詞も動詞同様, 語基 + 幹母音 + 格語尾となるべきなのですが,古典ラテン語の段階では,上述のように,音変化を経た結果,音色が変ったり,幹母音と語尾が融合したりした上に,本来の形が別形にすげ替えられた部分もあります.名詞の格語尾という時は,語基を除いた全ての部分を言うことが普通です.上であげた第2変化名詞の dominus では,domin- が語基で,-us が格語尾です(本来なら u が幹母音(元は o が u に音変化),s が本来の意味での格語尾でした).上の表でいえば,黒字部分のことです.それを抜き出したのが,次の表です.

第2変化名詞(o幹)男性名詞の格語尾
      単数  複数
主格  -us 「は」 -ī 「たちは」
属格  -ī 「の」 -ōrum 「たちの」
与格  -ō 「に」 -īs 「たちに」
対格  -um 「を」 -ōs 「たちを」
奪格  -ō 「で,から」  -īs 「たちで,から」
呼格  -e 「よ」 -ī 「たちよ」 = 複数は主格と同じ


 ラテン語の名詞の格変化のタイプの分類は,主に主格と属格のペアで明確になるので,辞書の見出しにはこの組み合わせが必ず書かれます.その次に,男性・女性・中性の区別が書かれます.男性は m. = genus masculīnum, 女性は f. = genus feminīnum,中性は n. = genus neutrum の略号が使われるのが普通です.属格は自明の場合は格語尾のみであげられます.dominus を例にあげると:

  dominus, dominī, m. 主人  あるいは  dominus, -ī, m. 主人

 ラテン語の格は基本的に5つで,これがそれぞれ単数,複数となりますから,10個を覚える必要があります.第2変化の男性単数のみ,呼格が加わります.さらに場合により,もう一つ,地格単数というのが加わることがありますが,これについては別の回にします.それぞれの格が意味するものは,実は多岐にわたりますが,ここではごく基本的なものをあげておきます.

1. 主格……主語を表します.「は」

  dominus rīdet. 「主人は笑っている.」 fīliī cantant.「息子たちは歌う」

 なお,主語になる名詞の数の単複に応じて,動詞の数も同じ単複になります(上の文を参照).これを主語と動詞の数の一致と呼びます.

2. 属格……所属を表します.「の」

  equus dominī 「主人の馬」 equī fīliōrum「息子たちの馬たい」

 位置は名詞の後ろにも前にも置かれます.fīlius dominī = dominī fīlius 「主人の息子」

3. 与格……間接目的語を表します. 「に」

  dominus fīliō equum dōnat. 「主人は息子に馬を贈る.」 
  dominus fīliīs equōs dōnat.「主人は息子たちに馬たちを贈る.」

4. 対格……直接目的語を表します.「を」

  servus dominum laudat. 「奴隷は主人を賞賛する.」
  fīlius servōs laudat.「息子は奴隷たちを賞賛する.」

5. 奪格……分離の意味で「から」(ただし人の場合は前置詞がよく用いられる),道具の意味で「で」,場所を表す「で」など,用法が広いです.これは本来は3つの格だったものが一つにまとまったためでもあります.ここでは道具で例をあげます.

  fīlius gladium umerō portat. 「息子は肩で刀を運ぶ(=肩に刀を背負って運ぶ)」
  servī gladiīs lupum necat. 「奴隷たちは狼を剣で殺す」(ひどい例ですみません……)

6. 呼格……呼びかけに使います.感嘆の ō が添えられることもあります(がギリシア語のようにほぼ必須ではありません)「よ」第2変化名詞単数のみ特別な形で,それ以外はすべて主格と同じです.

  (ō) domine! おお主人よ! (ō) dominī!

 これらの格は,主格と呼格を除き,意味範囲が多岐にわたるのが普通です.また,特に対格と奪格(僅かに属格も)は,前置詞とともに使われる用法も多いです.類似の意味が,前置詞付きと前置詞なしの格で競合し,使い分けの条件があるという場合もあります.詳しい用法はまた別に見て行くことにしましょう.


 なお,英語と比較すると,今までの文で,少し気になるところがあると思います.英語では,a や the の冠詞が使われますが,今までそれにあたる要素は出て来ていません.ラテン語には,現代の殆どのヨーロッパ言語で見られる冠詞はありません.もし,「ある人」「その人」などを表したい時には,それを表す代名詞を付けますが,必須ではありません.ですから,文章や言語外現実で,servus が先に登場しているなら,servus cantat. は「その奴隷は歌っている」となり,英語なら The servant is singing などの英語になります.そうでなければ,「ある奴隷が歌っている」となり,A servant is singing. となります.

 それから語順ですが,ラテン語では格語尾と動詞人称語尾で,文章内での語の機能がわかるので,語順は比較的自由です.重要な要素は,ラテン語では文頭と文末にくるので,特に強調のない普通の文章の語順となると,主語と述語つまり動詞が前後に来ます.概ね以下の順になります.

   主語 間接目的語 直接目的語 動詞

ただし,これから外れることはごく普通にあり,英語のように語順を頼りに理解するということはせず,格語尾で理解するようにしなければいけません.なお,先にも出て来た否定辞 nōn は,全文を否定するなら動詞の直前,文の一部を否定するならその直前に置きます.

  nōn dominum laudāmus.「我々は主人は讃えない」 dominum nōn laudāmus. 「我々は主人を讃えない」


 最後に,同じ第2変化動詞の男性名詞で,語基が -i- に終わるものの変化表をあげておきます.赤字で強調したところを除き,同じ変化ではあるのですが……

      単数  複数
主格  fīlius 「息子は」  fīliī 「息子たちは」
属格  fīlī, fīliī 「息子の」  fīliōrum 「息子たちの」
与格  fīliō 「息子に」  fīliīs 「息子たちに」
対格  fīlium 「息子を」  fīliōs 「息子たちを」
奪格  fīliō 「息子で,から」   fīliīs 「息子たちで,から」
呼格  fīlī「息子よ」  fīliī 「息子たちよ」 = 複数は主格と同じ

 fīlius のように,語基が -i- で終わる場合,単数属格と単数呼格で,fīlī の形が用いられます.
 単数属格の場合,fīliī の形も用いられますが,一旦完全に fīlī になった後,類推で fīliī が別形でできたようで,数的にも少ないようです.
 単数呼格は,推定される†fīlie の形はなく,fīlī の形のみが用いられます(音変化の過程は不明のようです).
 一方で,複数主格 fīliī, 複数与格・奪格 fīliīs は,融合することはほぼ完全にありません.

 追記:例外は fluvius, -ī「川」の呼格 fluvie「川よ」で,これは形容詞由来であることによります.形容詞では -ius に終わる男性形の呼格は -ie になります.


 そろそろ練習に移りましょう.equus 以降は単語にカーソルを当てると変化形がでます.

  dominus, -ī, m.「主人」
  fīlius, -ī, m.「息子」
  equus, -ī, m. 「馬」
  gladius, -ī, m. 「剣」
  lupus, -ī, m.「狼」
  agnus, -ī, m.「羊」
  umerus, -ī, m.「肩」


名詞変化表

     単数複数
主格 
属格 
与格 
対格 
奪格 
呼格 
  
 
 
 
 
 

      


既習のタイプの動詞もついでに復習しておきましょう.直説法現在時制能動態の人称変化を作ってみて下さい.単語にカーソルで解答がでます.

  timeō, timēre, timuī, — 「恐れる」(スピーヌム欠落)
  laudō, laudāre, laudāvī, laudātum 「讃える」
  portō, portāre, portāvī, portātum 「運ぶ」
  necō, necāre, necāvī, necātum 「殺す」
  valeō, valēre, valuī, valitūrus 「健康である,元気である」

 動詞変化表

     単数複数
一人称 
二人称 
三人称 
  
 
 

      


 ラテン語は日本語,日本語はラテン語に訳してみて下さい.解答は文にカーソルを当てるとでます.

dominus fīlium nōn laudat.   
fīliī laudant servōs.   
servus laudat dominī fīliōs.   
奴隷たちは主人を讃えている.   
主人の息子は奴隷達を讃えない.   
servus gladium dominī timet.   
dominī fīlius timet lupum.   
lupus gladiōs servōrum nōn timet.   
奴隷たちは息子の剣を恐れている.   
狼たちは息子たちの剣を恐れない.   
servī lupum necant gladiīs.    
  (注:主語の奴隷が複数なので,剣も配分的に複数になる)
dominus gladiō fīlī lupōs necat.   
fīlius gladiō dominī servum necat.   
奴隷たちは剣で主人を殺している.   
主人の息子は剣で狼を殺している.   
servus umerīs lupum mortuum portat.    
 (mortuus は形容詞「死んだ」.この場合は対格の形 lupum にあわせて語尾変化している)
Dominus umerō gladium portat.   
servus umerīs agnum mortuum portat.   
息子は肩で剣を運んでいる.   
奴隷達は両肩で死んだ羊たちを運んでいる.   
serve, valēsne?   
 (注:serve, valēs? でも同じ意味の疑問文になりうるが,疑問文を作るエンクリティック-ne をつけるとはっきり疑問文になる.アクセントがエンクリティックの直前について valḗsne?となることにも注意.)
ō fīlī, valēsne?   
息子達よ,お前たちは健康か?   
      



また長くなってしまいました…….しかもあまりいい例文じゃないですね.少し例文探ししなくては.




【2013/10/21 23:01】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ラテン語入門 目次
ラテン語文法資料(かなり以前に作ったもの)

ラテン語入門 1 文字と発音など (1)
ラテン語入門 2 文字と発音など (2) 五つの母音とその長短,y
ラテン語入門 3 文字と発音など(3) 付記:ラテン語内での長母音記述の試み
ラテン語入門 4 文字と発音など(4) 二重母音
ラテン語入門 5 文字と発音など(5) 子音(1) 半母音の i [j] と v [w]
ラテン語入門 6 文字と発音など(6) 子音(2) 母音間の半母音の i [j]
ラテン語入門 7 文字と発音など(7) 子音(3) 共鳴音(流音 r l 鼻音 m n)
ラテン語入門 8 文字と発音など(8) 子音(4) 摩擦音 s f と気息音 h
ラテン語入門 9 文字と発音など(9) 子音(5) 閉鎖音(黙音)
ラテン語入門 10 文字と発音など(10) 子音(6) qu, ngu, su, gn, x, z, 二重子音など
ラテン語入門 11 文字と発音など(11) 音節の長短とアクセント規則
ラテン語入門 12 文字と発音など (12) 句読点
ラテン語入門 13 文字と発音など(13) 付記: 複数子音の前の母音の長短
ラテン語入門 14 規則動詞の直説法現在時制能動態 (1) 第 2 変化 (ē 幹) 動詞と動詞の分析 書き直しました
ラテン語入門 15 規則動詞の直説法現在時制能動態 (2) 規則動詞の概観と第1変化 (ā幹) 動詞 書き直しました
ラテン語入門 16 名詞の格と第2変化 (o幹) 名詞 (1) -us に終わる男性名詞
ラテン語入門 17 第2変化 (o幹) 名詞 (2) -er に終わる男性名詞
ラテン語入門 18 第2変化名詞 (3) -um に終わる中性名詞
ラテン語入門 19 第1変化名詞(ā 幹)名詞 第2変化(o 幹)名詞 (4) -us に終わる女性名詞,deus
ラテン語入門 20 第3変化 (子音幹,u幹) 動詞の直説法現在時制能動態の人称変化
ラテン語入門 21 第3b変化(i 幹)動詞,第4変化(ī 幹)動詞の直説法現在時制能動態の人称変化
ラテン語入門 22 第1・第2変化形容詞 (1)
以下鋭意作成中





【2013/10/20 04:25】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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すこし方針変更

 ラテン語入門,もうすこしひとつずつの回は短めにしないと,読んでて具合が悪くなりますね.改めて読み直して,最後の練習問題までで気力が尽きました.一つの項目でも,長さによっては早めに切り上げて,回をまたぐほうがいいかもしれません.入門400回ぐらいになるかもしれませんが…….

 ところで今日はこれを買いに行ってきました.

川島重成,茅野友子,古澤ゆう子(編)『——牧歌の源流と展開——』東京:ピナケス出版,2013.

パストラル―牧歌の源流と展開パストラル―牧歌の源流と展開
(2013/10)
川島 重成、 他

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 しばらくテオクリトスやウェルギリウス『選集』など読んでいませんでしたが,再度読みたい気分にさせてくれた,さわやかな牧歌概説という感じです.もちろん,一般向けの講演を元に編集されたもののようで,それほど学術専門的な議論をしてはいませんが,おそらく背後にはそれらとの数知れない格闘が見えない形であると思います.衒学的雰囲気とは無縁の,楽しむための文学理解をそっと手助けしてくれるような論集だと思います.外面的にも,装丁から文章レイアウト,適度な挿絵の入れ方なども,派手ではありませんがセンスを感じる本で(例えば p. 29 のパトロクロスの墓の挿絵),クリスマスプレゼントにいいかと思います.
 最後の論文が西洋音楽史研究の大家,金澤正剛先生で,これもびっくりしました.金澤正剛先生の論文であげられている,あまり耳にすることなさげな音楽を貼付けておきましょう.



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【2013/10/20 01:54】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ラテン語入門 15 規則動詞の直説法現在時制能動態 (2) 規則動詞の概観と第1変化 (ā幹) 動詞

 書き直しました


 前回では,第2変化動詞の直説法現在時制能動態の変化を覚えました.ここでは,規則変化動詞の5タイプを一旦全て見ておきましょう.


規則動詞dōnō「贈る」, videō「見る」, legō「読む」, capiō「つかむ」,audiō「聞く」の直説法現在時制能動態の変化と現在時制能動態不定詞

第1変化(ā幹) 第2変化(ē幹) 第3変化(子音幹・u幹) 第3b変化(i幹) 第4変化(ī幹)

一人称「私は」 dōnō「私は贈る」 videō「私は見る」 legō「私は読む」 capiō「私は掴む」 audiō「私は聞く」
二人称「君は」 dōnās vidēs legis capis audīs
三人称「彼は」 dōnat videt legit capit audit

一人称「私達は」 dōnāmus vidēmus legimus capimus audīmus
二人称「君達は」 dōnātis vidētis legitis capitis audītis
三人称「彼らは」 dōnant vident legunt capiunt audiunt
現在能動態不定詞
 dōnāre「贈ること」
 vidēre「見ること」
 legere「読むこと」
 capere「つかむこと」
 audīre「聞くこと」


 先に見たように,規則動詞は,幹末母音(赤色)の違いにより,5つのタイプに別れます.幹末音は第一変化では ā,第二変化では ē,第3b変化では i,第4変化では ī,となります(第1変化の一人称単数 dōnō の幹母音消失は,この記事後半で説明します).
 第3変化では音色が i と u になり,不定詞は e が入っています.これは元々の由来が,幹母音と言われる,挿入母音に由来します.これは,例えば leg- のような,子音などに終わる語幹部分と,語尾の部分の直接接触を避けるためのクッションのようなもので,発音のしにくさの回避と語幹と語尾の独立性をたもつために挟まれた挿入母音です.これが,母音と -nt- の前では o, それ以外は e という現れをしていたのです.これはラテン語になってから,語頭アクセントによる弱化を受けて,e だったものは i に,o だったものは u に変化したものです(厳密にいうと,もう少し詳しい説明が必要になるので,それは別の機会に書くと思います).第3b変化,第4変化の三人称複数では,実は幹末母音 i と ī のあとに,この幹母音があるはずなのですが,殆ど脱落し(この原因はまだ解明には至っていないようです),三人称複数のみに,これも弱化で u になった幹母音の名残が見られます(このあたりは,第3変化,第3b変化,第4変化を覚える際に,もう少し詳しく説明します).
 第3変化以降は,やや幹末母音の統一性が乱れるところはありますが,赤くマーキングしている幹末母音と幹母音の部分を除くと,語尾の部分はすべて -o -s -t -mus -tis -nt となっていることがわかります.ですから,覚えることは多いとは言え,関連性は十分あるので,前回の第2変化を覚えた今となっては(覚えていればですが),覚えにくいことはないと思います.

 表の一番下の欄は,現在能動態不定詞です.これは,「……すること」の意味を表す,動詞の名詞的な形態です.英語でいえば,to 不定詞にあたるものです.ラテン語では,不定詞には -re という語尾を動詞語幹につけます(実は元は -se で,母音間で s > r となる,ロータシズムという有名な変化が起きた).dōnā-re,vidē-re, audī-re についてはこの語尾はそのままついています.第3変化は,これも leg- に -re を付けるのですが,やはり幹母音が加わって,legere になりました(弱化は受けているのですが,r の前では e に弱化するだけなので,かわらない).第3b変化は,これももとは i 幹で *capire だったのですが,これも弱化を経て capere になりました.このあたりは,第3b変化,第4変化を覚える際に,もう少し詳しく説明します.

 ラテン語の動詞は,直説法現在時制能動態の一人称単数の形に,現在能動態不定詞の形を添えると,上の5つのタイプのどれかが判明します.一人称単数の形だけだと,第1と第3変化が dōnō と legō で同じ形なのでわかりませんし,不定詞では第3と第3b同じで legere と capere なので,わかりません.両方で5つのタイプを区別します.そして,この5つのタイプの区別がわかれば,動詞の変化のほぼ半分ぐらいが自明となります.さらに,直説法完了時制能動態一人称単数,スピーヌムとよばれる形の2つを加えると,今度は全ての変化がわかります.そのため,辞書の見出しは,

  直説法現在時制能動態一人称単数,現在能動態不定詞,直説法完了時制能動態一人称単数,スピーヌム

という順で四つの形があげられます.上の表の動詞の,辞書での見出しは普通

  dōnō, dōnāre, dōnāvī, dōnātum「贈る」
  videō, vidēre, vīdī, vīsum「見る」
  legō, legere, lēgī, lēctum「読む」
  capiō, capere, cēpī, captum「つかむ」
  audiō, audīre, audīvī, audītum「聞く」

のようになっているはずです(辞書によっては,不定詞は -āre など,語尾で表されたり,自明の時は変化のタイプを数字で表すなど,多少違う形になっていることもあるので,その辞書の方針をよく見て下さい).この4つの形を,動詞基本型と呼びます.まだ完了形やスピーヌムの説明はしていませんが,これからは,新しい動詞をあげる時には,動詞4基本型を常にあげて行きます.特に完了形とスピーヌムは,上の動詞の5つの変化とは別に,単語によってとる形が決まっているので,セットで覚える必要があります.
 ちなみに,前回の練習で用いた第2変化動詞の動詞4基本型は……

  taceō, tacēre, tacuī, tacitum「黙る」 
  rīdeō, rīdēre, rīsī, rīsum「笑う」
  fleō, flēre, flēvī, flētum「泣く」
  valeō, valēre, valuī, valitūrus「元気である」

となります.第2変化の不定詞の形も,ここで覚えてしまってください.ちなみに valeō には目的分詞形がないので,未来分詞 valitūrus で代用.ラテン語ではこのように,一部の変化形が欠けていることがあります.


 さて,動詞の全体像を見たあとで,こんどは第1変化(ā幹)動詞をマスターして行きましょう.まずは変化表から.

第1変化 (ā 幹) 動詞 dōnō「贈る」直説法現在時制能動態の変化
  単数 複数
一人称 dōnō 「私は贈る」  dōnāmus 「私達は贈る」
二人称 dōnās 「君は贈る」 dōnātis 「君達は贈る」
三人称 dōnat 「彼(彼女,それ)は贈る」 dōnant 「彼ら(彼女ら,それら)は贈る」

 上述のように,第1変化動詞は,幹末母音(上の表で赤で示しています)の ā が特徴です.
 一人称単数 dōnō では,この幹末母音があらわれません.上でも簡単に解説しましたが,もう少し詳しく説明すると次のようになります.
 まず,元は *dōnāō.これが,moneō の一人称単数で起こったように,母音の前で長母音が短母音化(公式:Ṽ > / _V)し,*dōnāō > *dōnaō となります.母音 a o が接触していると融合します.この場合は,後ろの長母音 ō の音色になり,dōnaō > dōnō となります.
 dōnat と dōnant の短母音 a は,videō の第2変化動詞の場合と同じです.三人称単数で *dōnāt が dōnat となるのは,語末の -r -l -m -t の前では,長母音は短母音化するためで,三人称複数で *dōnānt が dōnant となるのは,流音 (r l) 鼻音 (m n) 半母音 (i [j] v) + 子音の前で,長母音は短母音化するためです(オストホフの法則).

 さて,第1変化動詞の変化を暗記してしまいましょう.

 動詞変化表

     単数複数
一人称 
二人称 
三人称 
  
 
 

      


以下の第一変化の動詞でも練習してみて下さい.単語にカーソルを当てると,変化がでます.

  cantō, cantāre, cantāvī, cantātum 「歌う」
  saltō, saltāre, saltāvī, saltātum 「踊る」
  clāmō, clāmāre, clāmāvī, clāmātum 「叫ぶ」
  amō, amāre, amāvī, amātum 「愛する」
  habitō, habitāre, habitāvī, habitātum「住む」

ついでに,いくつか他の単語も覚えましょう.

 接続詞の et と -que も覚えましょう.どちらも「そして」にあたりますが,et は A et B で「A と B」,-que は後ろの単語の後ろにつくエンクリティックで,「A Bque」となります.この時,-que の直前の音節にアクセントが来ます.

  cantat et saltat. = cantat saltátque. 彼は歌い,踊る.

 amō 「愛する」という動詞がありながら,目的語がないのは少し寂しいので,代名詞の目的語の形を二つだけ,簡単なので覚えて下さい.

  tē 「君を」 mē 「私を」   例: tē amat. 「彼は君を愛している」

 ラテン語では語順は比較的自由です.ですから,「私は君を愛する」は,tē amō. でも,amō tē. でもかまいません(が,tē amō. がどちらかというと普通です).

 前回の nōn「……ない (英語の not)」ですが,全文を否定する時には,動詞の前におきます.文の一部を否定する時には,その前におきます.

   例: tē nōn amat. 「彼は君を愛していない(彼は君を愛しているの全体を否定)」 
      nōn tē amat.「彼は君のことは愛していない(君だけを否定.別な人を愛している,など)」
       (下のような場合はちょっと翻訳が難しくなりますね)

 日本語はラテン語に,ラテン語は日本語に訳して下さい.問題文にカーソルを当てると解答がでます.

dōnās.    
nōn dōnat.    
dōnāmus.    
君たちは贈らない.    
私は贈る.    
nōn tē amō.    
tē nōn amat.    
mē amātis.    
彼らは私を愛していない.    
君は私を愛している.    
clāmant.    
clāmātis.    
nōn clāmō.    
彼は叫ばない.    
君は叫ぶ.    
cantat saltatque.    
cantāmus saltātisque.    
cantō et saltās.    
私は歌い,そして君達は踊る.    
彼らは歌い,そして踊る.    
Rōmae habitō. (Rōmae は「ローマに」)    
nōn Rōmae habitāmus.    
Rōmae habitātis.    
君はローマに住んでいる.    
彼らはローマには住んでいない.    
clāmātis.    
cantat et saltat.    
nōn mē amat.    
nōn dōnās.    
Rōmae habitātis.    
彼らは叫んでいない.    
彼らは贈る.    
君たちは踊り,私は歌う.    
我々はローマに住んでいる.    
君は私を愛していない.    
      



最後に有名な一文.

  cum tacent, clāmant. 彼ら(=元老院議員たち)は黙っていることによって,叫んでいるのだ(キケローのカティリーナ追放すべしという意見に賛同して).(キケロー『カティリーナ弾劾』1.21)

語句:taceō, tacēre, tacuī, tacitum「黙る」(前回も上でもでていますが)
 cum は時間を表す従属文を導く接続詞ですが,ここでは「……する時,そのことによって」という意味になります.
 



【2013/10/19 13:18】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ラテン語入門 14 規則動詞の直説法現在時制能動態 (1) 第 2 変化 (ē 幹) 動詞と動詞の分析


 書き直しました

 ラテン語の動詞は,主語の人称に応じて語尾を変化させます.大半の動詞は,5つのタイプの規則的な変化をするので,それらは規則動詞とよばれます.若干の,しかし重要で使用頻度の高い,やや独自の不規則な変化をする不規則動詞もあります.
 ここでは,ラテン語動詞の変化の特徴をとらえるために,五つの規則動詞のうち,一番見通しのいい動詞,第2変化動詞の直説法・現在時制・能動態を例に見て行きます.とりあえずは最初の動詞です.

第2変化動詞 videō「見る」直説法現在時制能動態の変化表
  単数 複数
一人称 videō 「私は見る」  vidēmus 「私達は見る」
二人称 vidēs 「君は見る」 vidētis 「君達は見る」
三人称 videt 「彼(彼女,それ)は見る」 vident 「彼ら(彼女ら,それら)は見る」

 法・時制・態については,また回を改めて見て行くことにしましょう.今は,直説法現在時制能動態は,「現時点である行為をする」あるいは「している」という意味であると理解してください.上では「私は見る」で通していますが,「私は見ている」でももちろんかまいません.人称については,自分と相手と第三者がそれぞれ一・二・三人称で,それぞれに単数・複数がありますから,計六つとなります.ラテン語の動詞は,それぞれの時制で,この六つの人称で変化します.
 上の表の,左側一段目,一人称単数の部分を見て下さい.日本語では,「私は見る」にあたるものが,ラテン語では,videō の一語だけで,「私は見る」という意味を表しており,その下の二人称単数の部分では,vidēs の一語で,「君は見る」という意味が表されています.どちらも一語で,「私はみる」「君は見る」といった,他の言語なら二語になりそうなものを表しています.この videō, vidēs を比較すると,違いは語尾の部分の -ō -s,それからその直前の母音 e と ē にあることがわかります.実はラテン語では,語尾の部分の -ō -s によって,動詞の主語の人称を表しているのです. -ō が「私は」で, -s が「君は」となります.この語尾を除いた部分 vidē- あるいは vide- が「見る」という意味をになっています.
 六つの人称の語尾だけをまとめてみると,

ラテン語の直説法現在時制能動態の人称語尾
  単数 複数
一人称 -ō 「私は」  -mus 「私達は」
二人称 -s 「君は」 -tis 「君達は」
三人称 -t 「彼(彼女,それ)は」 -nt 「彼ら(彼女ら,それら)は」

となります.この語尾を,人称語尾といいます.

 人によっては,例えば ō だけで「私は」という意味になりそうな気がするかもしれませんが,これは語尾として使われる時に限って「私は」を表すことができます.切り離されると,人称語尾は無意味な音か,音の連続と化します.-s も -t も -nt も,単独では「君は」「彼は」「彼らは」を表すどころか,音としてすら独立することはできません.動詞の基本的意味をになう,vidē- あるいは vide- の後についた時にのみ,これらの語尾は,その動詞の人称を表すことができる文法形式なのです.それどころか,単数と複数の間にも,殆ど共通点はありません.三人称のみ,なんとなく単数 -t と複数 -nt の比較から,n が複数らしきものを予測させますが,それは一人称・二人称の単複には見いだされません.それぞれが無関係に独自の形式で,「私は」「君は」「彼(彼女,それ)は」 「我々は」「君達は」「彼ら(彼女ら,それら)は」を表しているのです.
 その一方で,この人称語尾を取った形が,主語を省略した日本語の「見る」にあたるかというと,そうではなく,vidē という形は,「君は見よ」という,二人称が主語になる命令形になります.このように,ラテン語の動詞は,常にその主語の人称を表し,二人称への命令を除き,常に人称語尾をもちます.主語の人称をあらわさない形は,基本的に動詞として使われる場合には,存在しません.非人称動詞ですら,三人称単数の形をとります.動詞の名詞的用法(たとえば 現在時制能動態不定詞vidēre「持つこと」)などは,主語の人称を表しませんが,その場合も,それ独自の語尾を持ちます.
 ちなみに,このように,あたかも一部を折り曲げて様々な形をつくるように,語の一部で取り外しのきかない部分を変化させることで,人称などの文法的意味を表すことを屈折といい,そのような語尾を屈折語尾といいます.

 さて,もう一回,表にもどりましょう.
第2変化動詞 videō「見る」直説法現在時制能動態
  単数 複数
一人称 videō 「私は見る」  vidēmus 「私達は見る」
二人称 vidēs 「君は見る」 vidētis 「君達は見る」
三人称 videt 「彼(彼女,それ)は見る」 vident 「彼ら(彼女ら,それら)は見る」

 人称語尾を取り除いた形は,この部分を語幹と呼びます(もちろん二人称命令法以外に独立しては存在はできませんが).上の vidē- ないし vide- は,現在時制の形を作る語幹なので,現在語幹といいます.この語幹のうち,赤くマーキングした部分,vidē- ないしは vide- の -ē- あるいは -e- の部分ですが,この部分は幹末母音と呼ばれます.この幹末母音が,ラテン語の規則動詞の 5 つのタイプを決める特徴です.

 第2変化動詞は,-ē- の幹末母音が特徴になります(第2変化に属する他の動詞では,rīdeō「笑う」,fleō「泣く」など).そのため,ē 幹動詞とも呼ばれます.他の変化では,例えば,第4変化動詞では,ī の語幹末母音が特徴になります(audiō「聞く」).
 この -ē- の幹末母音は,続く人称語尾の音によって短縮して,videō, videt, vident では短母音の -e- が出てくるのです.実はもともとは,*vidēō, *vidēs, *vidēt ... *vidēnt (*は資料として残っていなくても,推定によって得られる語形につけます)のように,全て長母音でした(実は動詞によって違うものも混じっているのですが,とりあえずこうしておきます).この母音が短くなる条件は……

1. 母音の前の長母音は短母音化.(公式:Ṽ > / _V)
 これにより,一人称単数は *vidēō > videō「私は見る」となります.

2. 語末の -r -l -m -t の前では,長母音は短母音化.(公式:Ṽ > / _(r, l, m, t)# (# は語境界))
 これにより,三人称単数は *vidēt > videt (二人称複数 vidētis は語末でないので短くならない)となります.ただし,この変化が起こったのは比較的あたらしく,古ラテン期の詩では長いままのことがあります.

3. 流音 (r l) 鼻音 (m n) 半母音 (i [j] v) + 子音の前で,長母音は短母音化.前述のオストホフの法則です.(公式:Ṽ > / _(r, l, m, n, i[j], v)C)
 これにより,三人称複数は *vidēnt > vident となります.

 この幹末母音 -ē- は何かということになると, videō の場合は,古くさかのぼるなら,語幹の部分は *wid-ē-je/o- (e/o は語尾によって変る,幹母音と呼ばれる物です)という形で,ある静止状態に入ることを示す後接辞 -ē- と単純現在を表す後接辞 -je/o- が融合したもの(*-ē-je/o- で,母音間の j は後に落ちて融合して -ē- になる)だったようで,その前の vid- (*wid-)の部分(語の基本的な意味を担う部分なので語根といいます)に「見る」の意味がありました.しかし,ē 幹動詞の ē にはこれ以外にも幾つかの由来によるものがあります.例えば fleō「泣く」では,語根(*flē-)に直接人称語尾がついており,語根の母音が幹末母音です.出自は複数ありますが,最終的にそれらが ē 幹動詞というカテゴリーにまとまったのです.
 元々の ē の部分の意味は,語の意味内容に何らかの反映はされているかもしれませんが,古典ラテン語の段階になると,語幹全体として意味をなしていて,ē の意味を認識することはラテン語話者でもできなかったと思います.

 さて,理論はこの辺で十分だと思います.実際の動詞の変化を覚えましょう.

第2変化動詞 videō「見る」直説法現在能動態
  単数 複数
一人称 videō 「私は見る」  vidēmus 「私達は見る」
二人称 vidēs 「君は見る」 vidētis 「君達は見る」
三人称 videt 「彼(彼女,それ)は見る」 vident 「彼ら(彼女ら,それら)は見る」


 まずは変化を長短まで正確に覚えて下さい.上の表を見ないで暗唱できて,下の空欄に,表を見ないでスムーズにタイピングできればほぼ大丈夫だと思います.タイピングの時には,できれば長音記号を付けて下さい.長音記号は打ちにくいですから(U.S.Extended のキーボードにはありますが),ラテン語式のアペクスにならって á é í ó ú でも,日本語のローマ字の長母音につかう曲アクセント â ê î ô û でもいいと思います.リセットで打ち込んだものが消えるので,何度でも消してタイプ練習してみてください.

動詞変化表

     単数複数
一人称 
二人称 
三人称 
  
 
 

      


 同様の変化をする動詞は,次のようなものです.これを変化させて,上の変化表に打ち込んでみてください.残念ながらワンタッチで答え合わせはできませんが,カーソルをあわせると解答がでます.

  taceō「黙る」 
  rīdeō「笑う」
  fleō「泣く」
  valeō「元気である」


最後に簡単な練習問題.ラテン語を日本語に,日本語はラテン語にしてみてください.ついでに動詞以外の単語 nôn を覚えましょう.

  nōn「……ない(英語の not)」 例:nōn valēs. 君は元気ではない.(位置は動詞の前において下さい)

これをやっている時に,変化表を見てしまうようではだめで,変化表なしで一気にできるようになるまで,一生懸命変化表を練習してからやって下さい.練習では全部「見ている」のようにしていますが,「見る」でもどちらでも大丈夫です.空欄に解答を書いて下さい.カーソルを問題文の上におけば解答が出てきます.リセットで全部消えます.

vidēs.    
vidēmus.    
nōn vident.    
videō.    
私は見ていない.    
君達は見ている.    
tacēmus.    
tacet.    
nōn taceō.    
私達は黙っていない.    
君は黙っている.    
君達は黙っている.    
rīdēmus.    
nōn rīdent.    
rīdētis.    
君は笑っている.    
彼らは笑っている.    
私達は笑っていない.    
valeō.    
nōn valent.    
valētis.    
彼は元気である.    
君は元気である.    
私達は元気ではない.    
flētis.    
nōn fleō.    
flēs.    
彼は泣いていない.    
彼らは泣いている.    
flēmus.    
nōn valent.    
tacētis.    
vidēmus.    
君は見ている.    
彼らは笑っている.    
私達は元気である.    
君たちは黙っていない.    

      



 数は多いですが,難しくはないとおもいます.難しいと思ったら,表のほうの暗記をし直して下さい.

 最後にキケローから極短いですが一文.

  Quid tacēs? なぜお前(カティリーナ)は黙っているのか?(キケロー『カティリーナ弾劾』1.1)

   語句:quid [疑問詞]「なぜ?」


 なお,単語ですが,変化ともども,なるべく暗記して下さい.ラテン語は名詞も動詞も変化が大変なので,つい単語のほうの暗記を怠りがちですが,実際にラテン語の本文を読み始める時には,辞書はいやでも沢山ひくようになります.その時に全く知らない単語ばかり大量に辞書を引くことになるようだと,意味がわかって,次の単語に行くころには,既に忘れているという状態になりがちです.できれば,テクストを読み始める時には,できれば6-7割はすでに知っている単語という状態にしたいものですね.幸いラテン語の語彙数は少ないです.Oxford English Dictionary が 20冊で,同じ方針で作られた Oxford Latin Dictionary が現在2巻本ですから,大雑把に10分の1でしょう.入門が終わるまでに語彙が2000程度あれば,相当楽になるはずです.このブログでも,いずれ基礎語彙をまとめようと思っています.

 まあこんな調子でやっていると,ラテン語入門だけで300回は超えそうですね…….しばらくは広告がでないで済みそうです.




【2013/10/18 19:30】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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練習用テーブルの試作

タイプで打ち込んで変化表の練習ができるようにしました.タブキーで順に下の空欄に移動できます.一番下まで行ったら右側に移動するので,普通の暗記する順番にタイプできます.リセットで全部消えます.ちなみにブログで下書きしている最中に,リアルタイムプレビューのリセットボタン押したら記事も消えました…….書き直し二度目です.


動詞変化表

     単数複数
一人称 
二人称 
三人称 
  
 
 

      



名詞変化表

     単数複数
主格 
属格 
与格 
対格 
奪格 
呼格 
  
 
 
 
 
 

      


【2013/10/17 09:33】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ラテン語入門 13 文字と発音など(13) 付記: 複数子音の前の母音の長短

 発音についてもうちょっと書いておくことが今更みつかりました.ただ,入門ですぐ読む必要もないので,面倒なら飛ばしてください.

 自動的に母音の長短が決まって来るケースがいくつかあります.入門書では大抵長音記号がついているので,長短を気にせずに勉強できないこともないのですが,いずれテキストを読む際には,長音記号なしで読むことになるので,今のうちから語彙などとともに,覚えておくと,あとから色々役に立ちます.

 実際の長短のどちらを採用すればいいか,判断が難しいところもあります.ラテン語の音の長短を確認する際に大きな手がかりとなるのは,音節の長短による韻律をもった詩です.これによって,音節が短い部分と,母音に続く子音が1つ以下のところは,明確に母音の長短がわかるのですが,母音に子音が二つ以上続く場合には,母音が短くても長くても「位置(positiō)によって長い」ことになるので,長短の判断がわからなくなります.
 そのような場合には,古代の文法家の記述・碑文などの長母音表記法(AA, Á, I, EI, OU)など(ラテン語入門 3 参照)に頼ることになります.あるいは比較言語学的に,語源とラテン語に起こったと思われる母音の長短にかかわる音変化,それからロマンス語との比較から推測することになります.もちろん,正反対の事実を互いに示していたりする場合には,論議の対象となってきます(下の 5 の例を参照).

 このように,複数子音の前の母音については,ラテン語では問題になることが多々あるのですが,その一方で,この部分が「位置によって長い」ので,長短の判断をしないで,長音記号を一切付けないという辞書が結構あります.例えば Oxford Latin Dictionary では proficīscor は proficiscor, īnfēlīx を infēlix という見出しにしています.意味と用法の記述に集中するためだとは思いますが,ラテン語の言語の実体を記述するのが辞書だとすると,残念な処置ではあると思います.初学者用の手頃な辞書などでも,このような場合があるので,もしそういう辞書を使うとすれば,入門の段階から使いはじめて,機会があるごとに,長短の記述を付けてゆくのがいいと思います.

 前置きがやたらと長くなりましたが,当面の長母音・短母音の判断につかえる,子音連続のパターンがいくつかあります(これを書きたかっただけですが).ここではいくつか選んでここでは書いておくことにします.

1. 母音に -ns, -nf, -nct, -nx が続く時には,その母音は長くなります.
公式: V > Ṽ / _ns, _nf, _nct, _nx

  īnfēlīx「不幸な」  cōnficiō「完成させる」  īnsula「島」  cōnsul「執政官」
  sānctus「神聖な」 iūnxī「つないだ(iungō の完了形)

例外: lynx「山猫」の y は短いですが,これは外来語.


2. 動詞の -āscō, -ēscō, -īscō, -īscor の-sc の前の母音は長い.大体 -scō は nōscō「知る」,pāscor「放牧する」などの様に長いですが,pŏscō「要求する」は短い.
  collabāscō 「ぐらつき始める」 conticēscō / conticīscō 「黙る」 proficīscor 「出発する」


3. gn の前の母音は長母音化しますが,口語では短い.
公式: V > Ṽ / _gn [ɲn] (ただし正統的ラテン語で)

  māgnus sīgnum (ラテン語入門10参照)


4. 流音(r l) 鼻音(m n) 半母音(i[j] v) + 子音の前の母音は短い(オストホフの法則).ただし,1 のパターンを除く.長短に疑問が残るものもあります.これについては下記の 5 も参照.
公式: V > / _(r, l, m, n, i[j], v) C
(HTML では大文字 V に短音記号がつかないので,無理矢理スタイルをいじって で表しています.フォントによってはずれるかもしれませんが……)

  ā 幹動詞 amănt「彼らは愛する」 amăndus「愛されるべき」vs. amās「君は愛する」
  amāns「愛している」現在分詞単数主格 (1 の規則参照) vs. amăntis 現在分詞単数属格
  vĕntus「風」 kalĕndae「ついたち」


5. 上のオストホフの法則による短母音化の規則が働くはずのケースで,長短の揺らぎがみられるもの.

 母音の後に r + 子音が続く場合に,オストホフの法則で短母音化するはずの母音に,散発的に長母音の例が見られます.ロマンス語との対比でも,長かったり短かったりしています.特定の社会集団でのみ長母音化が起こったと考えられているようです.辞書も迷っているようです.

  fīrmus / fĭrmus「しっかりした」 (イタリア語 fermo は短母音 ĭ を示し, 碑文では FIRMI の I longa で長母音が示されているものがある.語源的には短母音)
  fōrma / fŏrma「姿」(イタリア語 forma は半狭の o なので長母音.語源的にはおそらく短母音)

 それ以外でも……

  nūntius / nŭntius「使者」 ūndexim / ŭndecim「11」
   どちらもロマンス語との比較では短母音.語源的には長母音.



【2013/10/16 14:42】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ラテン語入門 12 文字と発音など (12) 句読点

 発音についてまだ書くようなことがあったような気がしますが,残っているのは句読点とパンクチュエーションの問題だけでした.まあどうでもいいようなことかもしれませんが,一応書いておきます.

 句読点は古代ローマ時代には存在しないどころか,単語の分かち書きさえ殆どありません.時々,単語の区切りを(・)で表したりすることはありますが,それが文章の区切りにくる訳ではありません.ガッルスパピュルスは珍しく語の間に区切りをほぼ全部にいれています(http://classics.uc.edu/~parker/paleography%20files/gallus.html)が,これが普通であったかどうかはわかりません(しかもこのパピュルスは偽作の疑いもあります).最古の古典作品の大文字写本 Codex Vaticanus latinus 3256 では,ごくたまに使われている程度です.

 現代のテクストでは,先に書いたように,基本的に小文字主体で書かれます.長音記号は普通つけません(学習用を除く).大文字の使用法は,概ね英語と同じですが,文の先頭の文字でも小文字というケースも多いです.また,ドイツで出版されている校訂本でも,ふつう名詞をすべて大文字にするということはしません.
 分かち書きはもちろん行い,句読点は現代ヨーロッパの言語のそれをほぼそのまま用います.コンマ(,) ピリオド (.) セミコロン (;) コロン (:) 疑問符 (?) 感嘆符 (!),必要があれば括弧 ( ) やダーシ (—) が使われ,引用符は “ ” や ‘ ’ 国によっては « » が使われます.< > と [ ] は校訂のための特殊記号で,前者は欠けている部分を憶測で補う場合,後者は後の挿入で,作者の真筆ではない(と判断される)ことを示すのに使われます.
 どこにコンマを打つかなど,文章内でのパンクチュエーションの具体的な方法は,校訂をしている人の言語習慣にあわせることになるようです.我々が校訂するとすれば,さすがに日本語の句読点を使う訳にはいかないので(あえてやったらすごいですね),英語式などを使うことになるでしょうか.

 これで文字と発音などについては一通りやったと思います(そう信じたいです).次から文法のほうですね.




【2013/10/16 01:31】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ラテン語入門 11 文字と発音など(11) 音節の長短とアクセント規則

 いよいよ文字と発音についても,ほとんど最後のアクセント規則です.

 ラテン語のアクセントがどのようなものだったかについては,諸説あります.一つは高低アクセント,つまりアクセントのある音節をない音節より音程的に高い音にする,いわば音楽的アクセントで,日本語と同じものです.もう一つは,強弱アクセント,つまりアクセントのある音節を強い音にする,現代の欧米語で普通のアクセントです.それとその間の折衷案です.
 高低アクセント説も強弱アクセント説もどちらもそれなりに根拠はあるようで,おそらく高低に強弱が加わったもだったという折衷案的な考え方が個人的には正しそうと思います.ラテン語の子孫のロマンス語はすでに強弱アクセントですが,ひょっとすると古典期には正統的ラテン語と口語ラテン語ではアクセントのタイプが異なっていたということもあったかもしれません.もし実際に発音するとすれば,日本語式にアクセントのある音節を高く発音しつつ,強勢を置くという感じがいいのではないかと思います.


 ラテン語のアクセント規則は次のようにまとめられます.

 ラテン語のアクセントは後ろから三つ目までにしか来ません.特に重要なのは後ろから二つ目の音節で,パエヌルティマ(paenultima「殆ど(paene)最後(ultima)」)と呼ばれます.このパエヌルティマ音節の長短により,アクセントの位置が決まるので,ラテン語のアクセントの規則はパエヌルティマの法則と呼ばれます.最後の音節はウルティマ(ultima「一番最後」),後ろから三番目はアンテパエヌルティマ(antepaenultima「パエヌルティマ(paenultima)の前(ante)」)と呼ばれます.

 アクセントを見いだす手順はこんな感じです.

1. まず後ろから三つ目までの母音をチェックします.その母音のうち,最後の母音がウルティマの母音,後ろから二番目の母音がパエヌルティマの母音,後ろから三番目の母音がアンテパエヌルティマの母音になります.
 それぞれに,最後の母音ウルティマは 1,次のパエヌルティマは 2,その前のアンテパエヌルティマは 3 と,数字をふっていきます(それ以上はアクセントと無関係なので付ける必要はないです).dēmōnstrō「示す」だと,dē₃mō₂nstrō₁ という感じですね.
 簡単でしょうが,注意しなければいけないのは,二重母音 ae oe ei ui au eu は,前述のように,一つの長母音ですし,二つ母音が続いていても,二重母音の組み合わせでないものは別々の母音です.それから子音として扱われる i [j] も注意(以下ではその場合には ( ) 内に示しています).また,qu, su [sᵂ], ngu [ŋgᵂ]の u も母音ではないので注意.
 以下の単語でやってみると……

  iam (jam)「今や」 casa「家」 beātus「恵まれた」 animal「動物」
  amīcus「友人」 frūmentum「穀物」 tunc「その時」 cōnfirmō「断言する」
  abstineō「遠ざける」 tenebrae「暗闇」  obsecrō「懇願する」  pulcher「綺麗な」 
  supra「上に」 Periclēs「ペリクレース」 cōnsuētus「慣れた」
  concilium「集会」 collēga「同僚」 Pompeius (Pompejjus)「ポンペイユス」
  colloquor「話し合う」 maiestās (majjestās)「威厳」 pōns「橋」

 こんな感じになるでしょうか.

  ia₁m (jam)「今や」 ca₂sa₁「家」 be₃ā₂tu₁s「恵まれた」 a₃ni₂ma₁l「動物」
  a₃mī₂cu₁s「友人」 frū₃me₂ntu₁m「穀物」 tu₁nc「その時」 cō₃nfi₂rmō₁「断言する」
  absti₃ne₂ō₁「遠ざける」 te₃ne₂brae₁「暗闇」 o₃bse₂crō₁「懇願する」 pu₂lche₁r「綺麗な」
  su₂pra₁「上に」 Pe₃ri₂clē₁s「ペリクレース」 cō₃nsuē₂tu₁s「慣れた」
  conci₃li₂u₁m「集会」 co₃llē₂ga₁「同僚」 Po₃mpe₂iu₁s (Pompejjus)「ポンペイユス」
  co₃llo₂quo₁r「話し合う」 maiestās (majjestās)「威厳」 pō₁ns「橋」

2. さて,ここからが具体的なアクセントの位置になります.

(1) 1 音節からなる語(上で数字が 1 しかつかないもの)は,その語にアクセント.

   iá₁m (jam)「今や」 tú₁nc「その時」 pṓ₁ns「橋」

(2) 2 音節からなる語(上で数字が 2 までしかつかないもの)は,2 がついている母音,つまり先頭の母音にアクセント.

   cá₂sa₁「家」 sú₂pra₁「上に」

(3) 3 音節以上からなる語(上で数字が 3 までつくもの)については,まず 2 の数字がついている母音を見ます.この母音をもつ音節が長ければ,そこにアクセントが来ます.

 (a) 2 の数字がついている母音が長母音か二重母音であれば,その音節は長いので,そこにアクセント.(フォントによってはアクセントが見にくいかもしれませんが,2 の母音の上にアクセントがあります.)

   be₃ā́₂tu₁s「恵まれた」 a₃mī́₂cu₁s「友人」 cō₃nsuḗ₂tu₁s「慣れた」 co₃llḗ₂ga₁「同僚」

 (b) 2 の数字がついている母音が短母音であっても,後ろに二つ以上の子音が続く場合(母音間 i [jj],x, z も2子音分)には,その音節は「位置(positio)によって長い」とされ,そこにアクセント.ただし,下の(d)のケースを除く.以下では二つ続く子音を太字にします.この場合,母音が長く発音されるわけではないので注意.

   frū₃mé₂ntu₁m「穀物」(フルーメントゥム.フルーメーントゥムに発音しないように!)
   cō₃nfí₂rmō₁「断言する」 ma₃ié₂stā₁s (majjestās)「威厳」
   Po₃mpé₂iu₁s (Pompejjus)「ポンペイユス」(母音間の i は[jj] !)

 (c) 2 の数字がついている母音が短母音で,後ろに子音が続かないか,一つしか続かない場合には,その音節は「位置(positiō)」を作らず,短いことになります.この場合,アクセントは 3 のついている,アンテパエヌルティマにきます.
    
   á₃ni₂ma₁l「動物」 abstí₃ne₂ō₁「遠ざける」 có₃llo₂quo₁r「話し合う」(qu は子音一つ分)

 (d) 2 の数字がついている母音の後に,二つ以上の子音が続く場合でも,「閉鎖音(p, t, c, b, d, g) + 流音(r, l)」の組み合わせ(muta cum liquida「流音つき黙音(=閉鎖音)」)の場合には,「位置(positio)」を作らずに,その音節は短いことになります.アクセントは 3 のついている,アンテパエヌルティマになります.

   té₃ne₂brae₁「暗闇」 ó₃bse₂crō₁「懇願する」 Pé₃ri₂clē₁s「ペリクレース」

注:この「位置(positiō)によって長い」というのは,もともとはギリシア語では 「合意θέσιςによって複数子音の前の母音が長い」,と言われていたのが,ラテン文法家によりθέσιςの別の意味の「位置」と間違えられたためにできた用語です.
    

3. ただし,このアクセント規則には,幾つか例外があります.

例外1. -que「そして」, -ve「あるいは」, -ne「なのか?」 など,アクセントを持たず,直前の語にもたれてようやく存在する非自立語であるエンクリティックがつく場合,上の規則と無関係に,自動的にエンクリティックの直前にアクセントが移動します.

  árma virúmque「武器と人とを」(ウェルギリウス『アエネーイス』1巻冒頭)
  fī́lius fīliáque「息子と娘」
  bóna maláve「良き事々あるいは悪い事々」
  vidḗsne?「君は見ないのか?」

(エンクリティック(enclitc)という用語は,古くは後倚辞(こういじ),最近は前接語,後接語(一体どっちだ!)など,めちゃくちゃに訳されているので,enclitic の音転写のままで使います)

ただし,-que がつくもので,「そして」の意味を失って,単語の一部となったものは規則通りのアクセント.

  itáque「そしてそのように」(ita「そのように」+ que「そして」)  ítaque「したがって」(一単語)

例外2. 語末にあるべき母音が落ちた場合(アポコペーと言います)や,語末の母音が融合した場合,以前のアクセントの場所を保持します.この場合,最後の音節ウルティマにアクセントが来ることも起こりえます.

  illī́c「あそこに」(本来 *illī́ce で,末尾の -e がアポコペーで落ちたもの(*は推定形を示します))
  vidḗn? 「君は見ないのか?」(上の vidḗsne? で,末尾の -e がアポコペーで落ちたもの)
  Vergílī「ウェルギリウスの」(一見 Vérgilī になりそうですが,Vergíliī の -iī が融合したもの)

 その他,詳しく調べると色々な例外が古今の文法家によってあげられているようです.これについては Leumann: pp. 238-242 などにあげられています(まとめるというよりは,様々な例を挙げてゆくという形なので,読みにくいです).fenestra などはエトルリア語由来で,そのアクセントを残して fénestra (上の規則通りならパエヌルティマの母音のあとに3つ子音が続くので fenéstra のはず)にだったらしい,など,ありそうなものから疑わしいものまで色々混乱しそうな例が並んでいて,うかうか朗読などできなくなりそうです(笑).このあたりはもはや研究対象でしょうね.
 Kühner-Holzweissig: pp. 239-240 では,長母音のアクセントに,普通のアクセントに加えて,一旦音をあげてから下げる曲アクセントまで出て来ています.多分ギリシア語の文法家のギリシア語のアクセントの記述をそのまま取り入れたラテン文法家の説を元にしているのだと思いますが,現在これが本当だと思っている人はいないかと思います(本当だとすると明らかにラテン語は高低アクセントということになりますが).

 これでラテン語の文字と発音については大体全部書いたと思います.あとはもう少しだけ細々としたことなどですね.なお,アクセント規則のところでは綴り分けについても書く必要があるのですが,これはこれでちょっと問題があるので,いずれまた.




【2013/10/14 21:12】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ラテン語入門 10 文字と発音など(10) 子音(6) qu, ngu, su, gn, x, z, 二重子音など

 最後といいながらまだ残ってました…….ここでは子音群あるいは単独の文字で子音群を表すものを見て行きます.

 唇軟口蓋音半母音(接近音)の v の音が,子音の発音の直後(あるいは同時?)に来るものがあります.

 [k] の直後に v が続く [kᵂ] の場合,qu の綴りが用いられます(qv には普通しない).カタカナを付けるなら,qua クヮ, qui クィ, quu クゥ, que クェ, quo クォのようになるでしょうか.文字の上では二つの音ですが,これは一つの子音になります.例をあげると……

  aqua 「水」アクヮ quiēs「休息」クィエース loquor「話す」ロクォル
  aequus「公平な」アエクゥウス queror「不平をいう」クェロル

 [g] の直後に v が続く時は,必ずその直前に n の音が入り,ngu の形になります.この場合,n の音は g の音に同化して,going の ng のようになるので,ngu の発音記号は [ŋgᵂ] になります.ngu は子音二つ分に勘定します.あまり沢山はないので,実例でみたほうが早いでしょう.

  lingua「舌,言葉」リングヮ sanguis「血」サングィス languidus「ぐったりした」ラングィドゥス
  pinguis「太った」ピングィス

もちろん母音が続く場合にのみ,ngu は [ŋgᵂ] になります.そうでない場合,例えば singulī「それぞれの」シングリーの u は普通の母音です.

 [s] の直後に v が続く [sᵂ] も,su のように綴り,これも子音1個に相当します.ただし,もちろん母音が続く場合にのみです.また,母音が続いてもすべての su が [sᵂ] になるわけではないので,注意してください(例えば suus「自分の」スウス).そもそも実例は僅かしかありません.

  suāvis「甘い」スヮーウィス cōnsuēscō「慣れる」コーンスェースコー
  Suētōnius「スェートーニウス(歴史家の名)」


 gn の音の連続は,注意が必要です.この子音連続は,碑文でしばしば ngn と表記されており,最初の g は高口蓋鼻音 [ɲ] になっていて,[ɲn] のように発音されていたようです.その一方で,この子音連続の前では,母音が長母音化されるのが正統的ラテン語です.たとえば signum「印」[sīɲnum] シーングヌムというぐあいです.碑文で SIGNUM SEIGNUM のように長母音を示す表記が取られているものがあり,長母音になってることがわかりますが,この語に縮小辞のついた形 sigillum は短いままなので,gn にの前に長母音化の規則が働いていることがわかります.しかしながら,ロマンス語との比較ではこの部分は短い(イタリア語 segno.もし長ければ signo になるはず)はずで,おそらく一旦長母音化したのちに,ロマンス語の先祖になる口語のラテン語では短母音化したと考えられています.つまり正統的ラテン語は sīgnum, 口語で signum ということになります.この入門では,このような場合には長母音はつけないことにします(Leumann:p.113 にならう).辞書の見出しでは,必ずしも gn の前の長短の統一がとれているとは限らないので,注意してください.

   ignis「火」イ(ー)ングニス pugna「戦い」プ(ー)ングナ magnus「大きい」マ(ー)ングヌス

元々語源的に長母音であった rēgnum「王国」レーングヌムはそのまま長音記号をつけます.


 一つの文字で,二つ分の子音を表すものが二つあります.
 x は [ks] の子音連続です.もちろん,二子音分に勘定されます.

  pāx「平和」パークス rixa「けんか」リクサ exiguus「僅かな」エクスィグウス
  uxor「妻」ウクソル

 z は外来語に用いられる文字で,[dz] の音です.日本語のザジズゼゾの音です.音声学では破擦音と呼ばれますが,これも二つの子音と見なします.(詳しくは下に補足)

  gaza「宝物」ガザ zōna「帯」ゾーナ zephyrus「西風」ゼピュルス


 同じ子音が連続している場合は,日本語の促音などのようになります.ph, th, ch は pph, tth, cch と表記され,qu の場合は cqu になります.

  mittō「送る」ミットー tollō「持ち上げる」トッロー currus「車」クッルス 
  quiddam「何かあるもの」クィッダム 
  nummus「貨幣」ヌンムス nōnne「…ではないか?」ノーンネ
  bracchium「腕」ブラッキウム Sapphō「サッポー(レスボス島の女流詩人)」サップフオー
  quicquam「何も」クィックヮム

 次でようやくアクセント規則など.



補足:z の発音について

 コメントで z の文字の実際の発音について,[dz] の破擦音と断ずるのは危険とのご指摘いただきました.どうもありがとうございます.資料などあまりないので,少しだけですが,調べ直してみました.これは実際,ご指摘の通りで,Leumann でも明快に答えは避けたような印象がある記述でした.すくなくとも Leumann がはっきり書いているところをまとめると(p.11 の特に Zusätze a, さらに簡単に p.19),語頭(例えば zōna 「帯,地帯」)と,語中 zb, zd, zm では,有声の摩擦音 [z] (たとえば Zmaragdus「エメラルド」Lezbia「レズビア」など,これらにはSmaragdus, Lesbia と s による表記もあって,現代のテクストでは s のほうが普通だと思います)としています.Leumann は母音間では [dz] の可能性があると(p.19)といっていますが,そうでない可能性については多分 [zz] の可能性を言っているのでしょう.とすると,概ね [z] で,母音間 [zz] とすると,むしろ有声摩擦音として記述すべきかもしれません.しかし,母音間の z が2子音分 [zz] というのは抵抗がないわけではないのと,ウンブリア語,オスク語では z は [ts] の音に用いられていたことを考えると,破擦音の可能性もあるかなとも思います.
 その他の専門的な議論を目にしていませんし,それかラテン語話者が耳にするギリシア語の z の発音の可能性についての議論もよくしらないので,何とも言えませんが,個人的な想像をいえば,ラテン語話者は,z の音については,日本語話者が日本語以外の言語で耳にする有声摩擦音 [z] に対するのと同様に,これを [z] にも [dz] にもとっていたのではないか,さらに言えば,ひょっとして区別もつかなかったんじゃないかと思います.いずれにしても,2子音分ということを考えると,初歩段階ではとりあえず(間違いかもしれませんが),[dz] としておいていいのではないかと思います.まあこのブログでわざわざラテン語文法を勉強するという奇特な方々は,ご自身でいずれ Leumann などを読まれると思います(僕の責任放棄ですが……).


【2013/10/13 12:17】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(1) | 記事修正

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ラテン語入門 9 文字と発音など(9) 子音(5) 閉鎖音(黙音)

 最後は閉鎖音です.これも古い用語では,黙音と呼ばれていました.
 ラテン語の閉鎖音は,無声閉鎖音 p t c (k) と有声閉鎖音 b d g があります.さらに,無声帯気閉鎖音 ph, th, ch が,ギリシア語の影響で使われます.調音点はそれぞれ順に唇,歯茎,軟口蓋になります.これらをまとめて表にすると……

  唇    歯茎    軟口蓋  
 無 声 ptk
 有 声 bdg
 無声帯気 phthch

 無声閉鎖音 p t c は,t が若干注意が必要なぐらいでしょう.t はタティ(!)トゥ(!)テトの音になります.p はパピプペポの音,c (k) はカキクケコの音です.発音の難しさは,p t c ではほとんどないと思いますが,ここでもヨーロッパの現代語を勉強している人には,c が [s] (フランス語の ciel など)や [tʃ] (イタリア語 cielo など)の発音にならないように注意してください.c は常時 [k] の発音です.例を挙げると……

  porcus「豚」ポルクス  cīvis「市民」キーウィス  caput「頭」カプト
  vetus「古い」ウェトゥス  taceō「黙る」タケオー  piscis「魚」ピスキス
  populus「市民」ポプルス  

 c について補足ですが,ラテン語では,文字導入の際に,[k] の音を表すのに,C と K と Q の文字があり,当初は K は後ろに a の母音,C は e i の母音,Q は o u の母音が続く時に使われていましたが,次第に C のみで [k] を表すようになり,古典期には K は Kalendae「ついたち」カレンダエ(カレンダーの語源)にしか使われないようになりました.Q のほうは,後で書きますが,QU の組み合わせで [kᵂ] の発音を表すためだけに使われるようになりました.

 有声閉鎖音 b d g についてもそれほど問題はないと思いますが,d は日本語のダヂヅデドではなく,ダディ(!)ドゥ(!)デドの音になるのは注意.他はそのまま b はバビブベボ,d は,g はガギグゲゴの音です.

  bibō「飲む」ビボー  barba「ヒゲ」バルバ  ūber「ウーベル」肥沃な
  dēdūcō「引き下ろす」デードゥーコー  medicus「医者」メディクス  damnum「損害」ダムヌム
  ager「畑」アゲル  nūgae「悪戯」ヌーガエ  gravis「重い」グラウィス

 追記:なお,有声閉鎖音 b が,p t c s f といった無声子音の前にくる時,無声閉鎖音 p になります(公式化すると b > p / _ p t c s f ).例えば……

  urbs「都」ウルプス  obsidēs「人質たち」オプシデース obtineō「占拠する」オプティネオー

同じ現象は,d g が無声子音の前にくる時にも起こり,それどころか単語の境界をはさんでも起こるようです.Leumann: p.196 では at tēgulās (= ad tēgulās)「瓦屋根に(?)」アトテーグラースなどが引用されていますが,まあ入門でそこまで気にすることはないかもしれませんし,個人的にはそう発音される時もあれば,そうでないこともある,というようなバリエーションであったかもとも思います.
  
 無声帯気音 ph th ch は,音声記号で書くと [pʰ] [tʰ] [kʰ] のようになります.これらは気息音を伴った [p] [t] [k] で,プファ,プヒ,プフ……トハ,トヒ,トフ,クハ,クヒ,クフのようになります.実は英語やドイツ語の他の子音が前後にない p, t, k の発音はこの音です.元々ラテン語にはない音で,外来語の人名などに見られたものだったのですが,紀元前100年頃,ギリシア語の帯気音の発音をラテン語本来の p t c にまで適用することが流行り,乱用された時期がありました(カトゥッルスはそれを皮肉った詩を書いていますhttp://litterae.blog8.fc2.com/blog-entry-177.html).この流行にはさすがに抵抗もあり,結局本来の p t k は概ね元通りに発音することになったのですが,それでも幾つかの単語にその名残が残っているほか,碑文などでも散発的に本来的でない帯気音の表記が見られるようです.キケローも一時期すべて帯気音の発音をやめていたと発言しているぐらいですから,発音できなければ普通の p t c と同じでもおそらく差し支えはないと思います.下の単語は,キケローがその後に帯気音付きで発音することにしたものです.

  pulcher「綺麗な」プルクヘル  triumphus「凱旋式」トリウンプフス
  Carthāgō「カルタゴ」カルトハーゴー  Cethēgus「ケテーグス(家名)」ケトヘーグス



【2013/10/12 13:08】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ラテン語入門 8 文字と発音など(8) 子音(4) 摩擦音 s f と気息音 h

 人によってはもう訳が分からなくなっているかもしれませんが,それは説明が多分まだわかりにくいからだとおもうので,大変申し訳なく思います.ただ,わからなくてもとりあえず目を通しておいて,ある程度全体がわかってからもう一度勉強し直すのが独学のコツだと思うので,まあ発音の部分が終わるまで読み通してみて下さい.こちらも発音部分だけでかなり消耗しています……

 ラテン語では,摩擦音 s f と気息音が別枠になっていますが,音声学ではすべて摩擦音です.有声・無声の区別ならびに調音点(狭めや閉鎖が起こっている場所)といっしょに記述するなら,正確には s は無声歯茎摩擦音,f は無声唇歯摩擦音 h は無声声門摩擦音となります.

 まず発音には問題ないかと思いますが,若干の注意だけ.

 ヨーロッパ近代語を勉強している方は,s の発音が有声化して [z] にならないように注意すべきでしょう.また,日本語のシは,[si] ではなく [ʃi] なので,ラテン語の si「もし」のような単語を発音するときには,スィという感じで発音されたほうがいいと思います.つまり,s はカタカナにすれば,サスィ(!)スセソの音です.

 f はカタカナで表すなら,ファフィフフェフォになりますが,これも日本語の場合はすべて両唇摩擦音で,唇歯音にはなっていません.まあそれでもいいと思いますが,正確に発音したいなら,鏡をみて上の歯を見せたままファフィフフェフォといえば,大体正確な f 音がだせると思います.ラテン語では基本的に語の最初に出て来る音です(元の bʰ, dʰ, gᵂʰ が語頭でのみ f になり,語中では別の音になった).f 音が語中で出てくる場合は,合成語などの場合です.

 h 音はハヒフヘホの音ですが,フは上のように,両唇摩擦音なので,まあそれでもいいと思いますが,気になるならのどの奥の摩擦になるようにしたらいいと思います.ちなみに h 音は特に日常語ではよく脱落していたことが,碑文などからわかります.おそらくあまり強い摩擦ではなかったと想像されます.イタリア語フランス語などを見てもわかるように,最終的には h 音はすべて発音されなくなるのですが,これは古典ラテン語の段階からすでに起こっていたことです.
 最後に例など……

  silva「森」スィルウァ  sēdēs「席」セーデース  salvē「こんにちは!」サルウェー  
  sumus「我々はいる,…である」スムス  miser「あわれな」ミセル
  familia「家族」ファミリア  fūmus「煙」  fīlia「娘」フィーリア
  ferō「持って行く」フェロー  fōrma「形,姿」フォールマ
  haereō「固着する」ハエレオー  vehō「運ぶ」ウェホー  herī「昨日」ヘリー
  hodiē「今日」ホディエー  humus「地面」

 なお,su によって [sᵂ] の音が表されることがありますが,これはまた別のところでまとめます.



【2013/10/12 00:45】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ラテン語入門 7 文字と発音など(7) 子音(3) 共鳴音(流音 r l 鼻音 m n)

 子音の続きです.

 r l m n は,有声の母音で,ラテン語などでは共鳴音としてひとくくりにされます.

 r l の二つは,ラテン語では流音という名前でくくられています.まあこれは比較言語学などでもひとまとめに考えた方が都合がいいことが多いためですが,多分現代の音声学者がみたら腰を抜かすほどの古風な呼び名でしょう.r はふるえ音(イタリア語などで使われる,いわゆる巻き舌の r)で,l は側面音です.幸い英語と違って,r の方は巻き舌なので,区別は容易です.どちらもカタカナで表すなら,ラリルレロになってしまいますが.例をあげると……

  rēs「物」レース āra「祭壇」アーラ ōrātor「弁論家」オーラートル
  rīpa「川岸」リーパ carmen「歌」カルメン
  līnea「線」リーネア legō「集める,読む」レゴー color「色」コロル
  oleum「(オリーブ)油」オレウム lacrima「涙」ラクリマ

 厳密に言えば,l の音は,母音 e i が続く時と ll は「明るい l」,母音 a o u と他の子音が続く時には「暗い l」[ɫ] になりますが,まあ気にしないでもいいでしょう.

 m n は現代の音声学同様に,鼻音と呼ばれます.m はマミムメモ,n はナニヌネノの音です.例をあげると……

  mūs「ネズミ」ムース amīcus「親しい,友」アミークス mare「海」マレ homō「人」ホモー
  nōn「…でない」ノーン cinis「灰」キニス nūbēs「雲」ヌーベース nemus「森」ネムス
  omnis「すべての」オムニス anima「息,魂」アニマ




【2013/10/11 21:02】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ラテン語入門 6 文字と発音など(6) 子音(2) 母音間の半母音の i [j]

 母音に挟まれた i [j] は,殆ど(すべてではない),[jj] の発音になります.例えば,maior「より大きい」 は,実際の発音に即して書くなら,majjor で,マイヨルという発音になります.碑文では MAIIOR のように,iが重ねられて表記されているものがあります.同様の例は……

  peior (pejjor)「より悪い」ペイヨル  cuius (cujjus)「(関係代名詞属格)」クイユス
  eius (ejjus)「彼の」エイユス
  aiō (ajjō)「私は言う」アイヨー  aiunt (ajjunt)「彼らは言う」アイユント
  Pompeius (Pompejjus)「ポンペイユス」  Troia (Trojja)「トロイヤ」
  Baiae (Bajjae)「バイアエ」(『テルマエ・ロマエ』にも出て来たナポリ近辺の温泉景勝地.
   バイアエで定着していますが,発音はバイヤエがより正確でしょう.)

 このような場合,長音記号が [jj] の直前の音に付けられることがあります(例えば pēior, āiō のように)が,これは実際に母音が長い訳ではなくて,音節が長く勘定されることを示すために付けられるものです(これについてはアクセントの所で説明します).この入門では付けません.

例外になるものは次の通り.
 1. 母音に終わる語と,i [j] に始まる語との合成語.例えば sēiungō (sē+iungō)「引き離す」は sējungōで,セーユンゴーになります.
 2. plēbēius (plēbējus)「平民の」プレーベーユス.
 3. 人名の Gāius の母音間の i は独立した母音で,ガーイウスとなります(元々 Gāvios の v が落ちたもの).ギリシア語由来の固有名詞などには割とあるようです.例えば Lāius (λᾱ́ιος) ラーイウス(詳しくは Leumann: p.129).

 実は j は母音間に挟まれると自動的に [jj] という発音になるというわけではありません.こうなったのは母音間の半母音 [j] が,ラテン語前段階ですべて消失してしまって,[jj] だけ生き残ったということと,その表記がII を使わずに,単独の I だけになったことによります.生き残った [jj] も,最初から [jj] だったわけではないようで,[dj], [gj], [sj] の音の連続が [jj]に音変化したものが多く認められます(pedjōs > peior (pejjor), magjōs > maior (majjor), esjos > eius (ejjus)).もちろん由来が明らかでない [jj] もあります.

 母音に挟まれるわけではないですが,前置詞+iaciō「投げる」の合成語では,子音のあとに来る i は [ji] となります.例えば coniciō「投げ集める,推測する」は,con「集めて」 + iaciō「投げる」の合成語で,辞書などでは con-i-ci-ō となっていますが,二番目の i はただの母音ではなく [ji] で,conjiciō コンイィキオーという具合に発音します.同様に obicio (objiciō) オブイィキオーなど.




【2013/10/11 16:15】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ラテン語入門 5 文字と発音など(5) 子音(1) 半母音の i [j] と v [w]

 今まで母音をあつかってきましたが,ここから子音についてです.

 ラテン語では,半母音 [j] (大雑把に ia ヤ,iu ユ,ie イェ,io ヨ [ii] については下記参照)と [w](va ワ,vi ウィ,vu ウゥ,ve ウェ,vo ウォ)があります.この子音の開始音は実は母音の [i] と [u] の音と同じものですが,この音から次の音に移行する音色の変化を子音と認識する音で,音声学的には接近音です.ラテン語ではこれに特別な文字をつくらずに,母音と同じ I と U をそのまま当てたのですが,ある意味正確に聞いていたということになります.狭めができる場所(調音点)は,i のほうは硬口蓋,v のほうは唇と軟口蓋なので,前者は唇硬口蓋接近音,後者は唇軟口蓋接近音です.

 先に書いたように,現行の表記で一般的なやり方は,半母音 [j] は古代と同様に母音 I i の文字をそのまま使い,半母音 [w] には,v をあてます.この入門ではこの方式を取りますが,実は不統一な方法です.採用したのは,ただ一般的に使われているという理由と,やっているうちに何となくなれる(笑)という理由からです.この方式でやや誤解を招きそうな場合には, 補助的に j を使おうと思います.たとえば,iaciō「投げる」だと,語頭の i のみが半母音ですが,iaciō (jaciō) という具合に添えて明確にしようと思います.幾つか例を挙げると:

  iānua (jānua)「扉」ヤーヌア  iūs (jūs)「法」ユース  iecur (jecur)「肝臓」イェクル
  iocus (jocus)「冗談」ヨクス
  vacuus「空の」ウァクウス  vestis「服」ウェスティス  servus「奴隷」セルウゥス
  vīnum「葡萄酒」ウィーヌム  volūmen「巻物,巻」ウォルーメン

 表記の仕方としては,他に次の二通りがあります.
 1. 半母音 [j] [w] にそれぞれ J j V v を当てる.山下太郎先生の方式では 前者が使われています.入門ではこの方式が取られることも多いです.
 2. 古代の表記そのままに,母音と半母音ともに I i U u を使う.近年オックスフォードで出ている校訂本では広く使われていますし,Oxford Latin Dictionary もこの表記です.


【2013/10/11 13:29】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ラテン語入門 4 文字と発音など(4) 二重母音

ラテン語の二重母音は以下の六つです.

    ae [ae] アエ oe [oe] オエ ei [ei] エイ ui [ui] ウイ
    au [au] アウ eu [eu] エウ

元々は母音+[j],または母音+[w]から生まれたもので,実際の発音としては,後ろの母音を軽く添えるようになります.ai と oi は,後ろの i の開口度が広めになって,ae と oe になりました.そのため,この二つの後ろのエは,狭めのエになります.アエとアイ,あるいはオエとオイの中間ぐらいでしょうか.
 例をあげると……

  ae: aes「銅」アエス  saevus「荒れ狂う,残忍な」サエウゥス(cf. Lupa saeva 残忍な雌狼)
  oe: moenia「市壁」モエニア  proelium「戦い」プロエリウム
  ei: ei「彼に」エイ  deinde「ついで」デインデ
  ui: cui (関係代名詞単数与格)クイ huic「この者に」フイク hui「ああ!」フイ これ以外にはない
  au: aurum「黄金」アウルム  laudō「褒める」ラウドー
  eu: eurus「南東風」エウルス ēheu「ああ!」エーヘウ seu「あるいは……」セウ
     neu「あるいは……ない」ネウ

 二重母音の頻度としては,ei と ui と eu は少なくなります.
 ei については,古ラテンで ei だったものが長母音 ī になるということが起こり,ほとんど本来の ei はなくなっています.ラテン語にみつかる ei は,二つの母音の連続が口語で二重母音化して定着したものが主になります.上の ei と deinde も,eī と de-inde が正式で,口語で融合して二重母音になったものです.
 ui の例も上に挙げた三つぐらいしかありません.
 eu はギリシャ語からの借用語に多く,上で挙げた eurus「南東風」以外にも Eurōpa「ヨーロッパ」(エウローパ)などそれなりに数はありますが,ラテン語本来の eu は eu > ou > ū の道を辿ったので,元々のラテン語の語にはほとんどありません.seu も neu も,*sēve (これはさらに sīve になる) nēve の短縮形から出たものです.

 これ以外の母音の組み合わせは,二つの母音が並んでいるだけです.また,この組み合わせであっても,二重母音ではないものがあります.例えば aureus「黄金の」だと, au は二重母音ですが,eu も一見二重母音に見えます.しかし,この語の -us は格語尾で,この前に語の構成要素の切れ目があるため,二重母音ではなく,二つの母音 e と u が接触しているだけです.

 二重母音は長母音と同等とみなされます.このことは,後のアクセントの見極めの時に重要です.

   



【2013/10/11 01:09】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ラテン語入門 3 文字と発音など(3) 付記:ラテン語内での長母音記述の試み

 まあ入門で必要な知識ではありませんが,歴史研究や比較言語学をやりたい方など,将来的にラテン語碑文を読むことになるはずの方々には多少有益ではあるかもしれないので…….関係ないという方は飛ばしていいとおもいます.

 以上で見たように,ラテン語では長母音と短母音の区別があり,長短で意味の違いを生み出しうるのですが,ラテン語としては普通は長短を区別して記述する方法は一般的にはありませんでした.
 しかしながら,これは全くその試みがなされなかったというわけでもなく,長母音を表すための幾つかの方法は試みられていました.ただ,いずれも必ずしもすべての長母音を明確に示すというものではなかったようです.このあたりは,Leumann, Lateinische Laut- und Formenlehre. Beck: München, 1977: p. 12-14にまとまっていて,読める方はそれを見るほうが面白いと思います.これを適宜まとめると:

(1) ā ē ū については,aa ee uu のように母音を重ねることで,長母音を表す(紀元前140-75).AARA = āra「祭壇」ただし,他の母音については区別しなかったようですし,区別のある母音についてもすべて付けられるというわけでもないようです.例えば PAASTORES = pāstōrēs のように.

(2) 古ラテン語の二重母音から生じた長母音について,元の二重母音を長母音の代わりに使う.日本語の「おうさま(王様)を[o:sama]の発音に使うようなものでしょうか.
 ラテン語では古ラテン期の二重母音 ou が長母音 ū に変りますが,変化してしまった後にもしばらく ou が長母音 ū の表記に使われていました.紀元前100年ぐらいには廃れたようです.同様に ei も ī に変りますが,この ei もそのまま長母音 ī につかう.さらに,ei から生じた ī だけでなく,もともと ī だったものにもこれが適用されます.後者のほうがより広く使われたようです.こちらはガッルスパピュロス(http://classics.uc.edu/~parker/paleography%20files/gallus.html,大分昔のブログ記事http://litterae.blog8.fc2.com/blog-entry-16.html)の5行目fixa legam spolieis deivitiora tueis=fixa legam spoliīs dīvitiora tuīs (すべて古ラテン ei から生じた ī ですが)で使われています(もし本物であればの話ですが).

(3) ī について.ほかの文字より少し長めに I を書く.I longa「長い I」と呼ばれます.FELICI のような感じ.

(4) アクセント記号( ́)あるいはコンマ(,)のような印を文字の上につける,アペクス(apex「先端」)と呼ばれるもの.つまり,Á É Ó Ú のような形で,長母音を表します(なお Í はまれで,これには「長い I」が使われていたようです).クィーンティリアーヌスによって,乱用せずに,アクセントの違いで意味の生じる同じ字面の単語の区別にのみ限定して使うことが勧められています(1.7.2).

 まあ網羅的でもなく,常時使われて続けていたわけでもないですが,それでも,こういったラテン語自体でのラテン語の長短表記が残っている資料の価値が,非常に高いのはいうまでもありません.特に,子音が二つ以上続く場合の母音の長短(これについてはまた後から触れることになります)は,こういう記号がないとわからなかったりするようです.


【2013/10/10 23:19】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ラテン語入門 2 文字と発音など (2) 五つの母音とその長短,y

 ラテン語の母音の音色は a e i o u の五つで,それぞれに長母音 ā ē ī ō ū があります.概ね日本語のアエイオウ,アーエーイーオーウーにあたります.

 短母音           
  i [ɪ]        u [ʊ]
    e [ɛ]   o [ɔ]
      a [a]

 長母音
  ī [i:]        ū [u:]
    ē [e:]   ō [o:]
      ā [a:]

 細かい違いを言うと,実は a 以外の母音は,長短で音色がやや異なり,上で添えられている発音記号のように,短母音は開いた音色,長母音は閉じた音色になります.例えば短母音の e は,aのほうに近い開口母音の [ɛ] で,長母音の ē は i のほうに近い,閉口母音の [e:] です.それから,短母音の o も開口母音の [ɔ],長母音の ō は閉口母音の [o:] です.(国際音標文字のサイトで違いを確認できます.http://web.uvic.ca/ling/resources/ipa/charts/IPAlab/IPAlab.htm).入門のうちは日本語式のアイウエオで発音していいでしょう(というかここまで正確に発音する専門家がいるかどうかもわかりませんが).

 なお,ラテン語では,入門の間は,通常すべての長母音に長音記号(マクロン)がつけられますが,先に述べたように,通常のラテン語の本文では長短を表す記号は普通は使われません.ラテン語では長短によって,意味が変ってくるどころか,場合によっては文法的な違いも生じるので,入門の間にマクロンに頼り切らないで,それぞれの単語とその語形について,長短をしっかりと覚えることが重要になります(これを怠ると最終的に学習を続ける時に膨大な時間の無駄が生じると思います).なお,英語の辞書では,学習者にとっては長短の表記が不十分なものが多く,残念なことに,Oxford Latin Dictionary も例外ではないので注意して下さい.
 短母音には特別な記号は入門であっても普通つけませんが,もし短母音であることをはっきり示したい場合には短音記号(ラテン語式にはブレウェ?というはずですが,フォント名としてはブレーヴェと呼ばれるようです)をつけます.例えば ă ĕ のようになります.長短両方が可能であることを示す時には,長音記号の上に短音記号をのせることがあります(HTMLではうまく表示できないので省略).
 長短で意味の変るペアを挙げてみますと……

  pila「ボール」pīla「投げ槍(複数)」ピラ,ピーラ
  levis「軽い」lēvis「滑らかな」レウィス,レーウィス
  malus「悪い」mālus「マスト」マルス,マールス
  os「骨」ōs「口」オス,オース
  manus「手(単数主格)」manūs「手(単数属格・複数対格)」 マヌス,マヌース
  rosa「薔薇(単数主格)」rosā「薔薇(単数奪格)」ロサ,ロサー

 以上の5母音が本来のラテン語の母音ですが,ギリシア語由来の外来語では,ギリシア語のユプシーロンの文字(Y, y)で表される母音が登場します.この母音は,ドイツ語の ü の音と同じで,発音記号では [y] となります(国際音標文字のサイト:http://web.uvic.ca/ling/resources/ipa/charts/IPAlab/IPAlab.htm).概ね日本語のユの音と思っていいと思います.本来のラテン語の文字にはなく,ギリシア語由来の外来語の表記のために,共和制末期になって,文字表の最後に z とともに付け加えられました.例を挙げると……

  hydra「水蛇」ヒュドラ
  mystērium「秘密」ミュステーリウム
  Cȳrus「キューロス(王)」キュールス

ただしより古い外来語は u で取り入れられているのが普通で,後の y をつかった表記と並存していることがよくあります.

  cupressus / cypressus「糸杉」クプレッスス/キュプレッスス
  murtus / myrtus「ミルテ」ムルトゥス/ミュルトゥス



【2013/10/09 20:05】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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書いてるほうが挫折しそうなラテン語入門

 一ヶ月ブログ記入しないと強制的に宣伝が入るのですが,その度に原発の記事を買いてもしようがないので,ラテン語入門を適当な間隔で投稿しようと思います.ラテン語は入門で挫折する人が多いですが,こちらの入門は書いているほうが挫折しそうで,大層申し訳ないですが,お暇ならおつきあい下さい.ついでに滅多に開かないような Manu Leumann などもぱらぱら見ながらやっているので,書きながら大分訂正なんかも後から入ると思います.挫折しないでコンスタントに続いたとしても,最低1年半ぐらいはかかると思います.発音の説明だけでも2-3週間かかりそうな気もするので…….こちらの入門をやるよりは山下太郎先生の『しっかり学ぶ初級ラテン語』をやるほうがいいかと思うので,そちらの宣伝でも:

しっかり学ぶ初級ラテン語 (Basic Language Learning Series)しっかり学ぶ初級ラテン語 (Basic Language Learning Series)
(2013/08/20)
山下 太郎

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【2013/10/09 11:59】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ラテン語入門 1 文字と発音など(1)

 ラテン語で使われる文字はいわゆるローマ字です.通常以下の24文字が使われます.

 左から大文字,小文字,文字の名称,[ ] 内は発音記号,例で単語をあげています.現時点では単語の訳は大雑把なものと思って下さい.


大文字  小文字  名称発音       
A a    ā アー      [a, a:]   amā アマー「愛せよ」     
B b bē ベー[b]bibō ビボー「飲む」
C c cē ケー[k]canō カノー「歌う」
D d dē デー[d]decus デクス「飾り」
E e ē エー[e, e:]dēbeō デーベオー「しなければならない」   
F f ef エフ[f]fāma ファーマ「噂,名声」
G g gē ゲー[g]gladius グラディウス「剣」
H h hā ハー[h]hic ヒク「これ,この」
I i ī イー[i, i:][j]   [i, i:] ibī イビー「そこに」 [j] iam ヤム「今や」
K k kā カー[k]kalendae カレンダエ「ついたち」
L l el エル[l]līlium リーリウム「百合」
M m em エム[m]meminī メミニー「覚えている」
N n en エン[n]nōmen ノーメン「名前」
O o ō オー[o, o:]homō ホモー「人間」
P p pē ペー[p]pānis パーニス「パン」
Q q qū (kū) クー[kw]quīnque クィーンクェ「5」
R r er エル[r]rota ロタ「車輪」
S s es エス[s]sūs スース「豚」
T t tē テー[t]testis テスティス「証人」
U V u v ū ウー[u, u:] [w] [u, u:] ūnus ウーヌス「一つの」 [w] vīvō ウィーウォー「生きる」
X x ix イクス[ks]nix ニクス「雪」
Y y ȳ ユー[y, y:]tyrannus テュランヌス「専制君主」
Z z  zēta ゼータ[dz]zōna ゾーナ「帯」


 文字と音の対応は,例外はありますが,ほぼ1対1対応で,国語の時間に習うローマ字とほぼ同じように読みます.大雑把な発音は例を参照にしてください.詳しい解説は別の投稿で.

 上の表では,大文字と小文字がありますが,古代ローマ人は大文字のみを使用していました.小文字の登場は9世紀初め頃になります.現代のラテン語の表記は,英語などと同じく,文頭の語ならびに固有名詞の最初の一文字のみ大文字し,それ以外のすべてを小文字とする,小文字中心で書かれる表記が取られるのが普通です.また,文頭でも小文字で通し,作品の最初のみ,あるいは段落の初めのみ大文字にすることも多いです.例えばこんな感じ:http://litterae.blog8.fc2.com/blog-category-2.html

 上の表では,母音の上に横棒がついているものがあります(ā ō のように)が,これは長母音を表すための補助記号(長音記号あるいはマクロンと呼ばれます)で,本来はラテン語には使われませんでした(別の方法による長母音の表記法はあった).現在も,主に辞書や文法書や教科書,あるいは言語学関係の本のみで用いられ,普通のラテン語の書物で母音に長音記号をつけて書かれることは,語学教育的意図で書かれたものを除き,ほとんどありません.

 I i と U V u v について.I i は,母音 [i, i:] と子音 [j] の両方を表していました.U V と u v は,現代では違う文字ですが,ラテン語では同じ一つの文字で,これも母音 [u, u:] と子音 [w] の両方を表していました.現在一般的に用いられているラテン語表記では,母音 [i, i:] と子音 [j] は I i のみで表し,母音 [u, u:] は U u,V v は子音 [w] は V v で表します.この入門もそれに倣いますが,あえて説明のために子音 [j] を j で記述することはあります(なお,大文字は V のみで子音母音両方を表す,ということも多いです).




【2013/10/09 11:42】 ラテン語入門 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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