ラテン語徒然  ラテン語の翻訳・覚え書きなど
log-in  ラテン語入門 作家別インデックス 文法資料 リンク集 ギリシア語フォントについて アーカイブ他
歴史地図 伊北 伊南 希北 希南 小ア PHI Perseus POxy KVK CiNii L-S Georges Gildersleeve 省略記号 Text Archive BMCR DCC

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


【--/--/-- --:--】 スポンサー広告 | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』2巻2歌146-157

'si tibi nulla sitim finiret copia lymphae,
narrares medicis: quod, quanto plura parasti,
tanto plura cupis, nulline faterier audes?
si vulnus tibi monstrata radice vel herba
non fieret levius, fugeres radice vel herba  150
proficiente nihil curarier: audieras, cui
rem di donarent, illi decedere pravam
stultitiam, et, cum sis nihilo sapientior, ex quo
plenior es, tamen uteris monitoribus isdem?
at si divitiae prudentem reddere possent,  155
si cupidum timidumque minus te: nempe ruberes,
viveret in terris te si quis avarior uno.

「もし,どんな大量の清水も,お前の乾きを止めぬのなら,
お前は医者たちに話すはずだ.多く備えれば備えるほどに,
より多くのものをお前が欲しくなることを,お前は誰にも打ち明ける勇気はないのか?
もし傷がお前に処方された根や薬草により
快方に向かうのでなければ,お前は根や薬草をよすだろう,
それらに何の薬効もないのだから.お前は聞いていたはずだ,
神々が財を送りし者からは,曲がった愚かさは
去るということを,そうでありながら,お前が金持ちになってから,
お前は全然より賢くなっていないが,それなのにお前は同じ忠告者を用いているのか?
一方,もし財産がお前を賢明にし,
お前の貪欲さも小心も減ずるということなら,当然お前は赤面するはずだ,
もし誰かお前よりも貪欲な者がこの世に一人でもいれば*1


*1 つまり財産が人間を賢明にするなら,財産を得ようとする気持ちである貪欲は人間を賢明にするということになってしまう.当然貪欲が貪欲自体を減ずることはないので,お前より貪欲な人間がいれば,それだけで自分の間違いがわかって恥ずかしくなるだろうということ.(Brink ad loc.参照)


スポンサーサイト

【2012/07/30 02:41】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』2巻2歌126-145

praetulerim scriptor delirus inersque videri,
dum mea delectent mala me vel denique fallant,
quam sapere et ringi. fuit haud ignobilis Argis,
qui se credebat miros audire tragoedos
in vacuo laetus sessor plausorque theatro,  130
cetera qui vitae servaret munia recto
more, bonus sane vicinus, amabilis hospes,
comis in uxorem, posset qui ignoscere servis
et signo laeso non insanire lagoenae,
posset qui rupem et puteum vitare patentem. 135
hic ubi cognatorum opibus curisque refectus
expulit ellaboro morbum bilemque meraco
et redit ad sese, 'pol, me occidistis, amici,
non servastis' ait, 'cui sic extorta voluptas
et demptus per vim mentis gratissimus error.' 140
nimirum sapere est abiectis utile nugis
et tempestivum pueris concedere ludum,
ac non verba sequi fidibus modulanda Latinis,
sed verae numerosque modosque ediscere vitae.
quocirca mecum loquor haec tacitusque recordor: 145

自分の欠点が嬉しかったり,あるいはそもそもそれに気付かないうちは,
理性的だとか,自分に牙を剥いているとか見られるよりは.狂った作家,へたくそな作家と
見られる方を,僕は好むかもしれません,かつてアルゴスに,極めて高貴な人がおり,
その人物は,自分がすばらしい悲劇を聞いていると信じて,
空っぽの劇場に嬉々として座り,拍手をしていましたが,
人生の他の務めは真っ当な仕方で
守り,実によき隣人であり,愛想の良い主人で,
妻には気さくで,酒瓶の封印を損なっても
奴隷たちを容赦することができて怒り狂う事もなく,
断崖や開いた竪穴も避ける事ができるような人でありました.
この者が,親類たちの助力と気遣いにより,
純粋なエッレボルス*1の処方で狂疾を追い出して回復し,
我に返って言うには「やれやれ,友人たちよ,君たちは
私を殺したのであって,救ったのではありません.この私からこんな風に楽しみが奪われ,
力ずくで最も嬉しい精神の誤謬が奪い取られたのですから」
当然,より有益なのは,下らぬことを捨てて分別を持ち,
子供の時にする遊びは子供たちに譲り,
ラティウムの弦に調子を合わせられる言葉を探すのではなくて,
真の人生の韻律と旋律を熟知することのほうです.
それ故,次のようなことを僕は独り言ち,黙って思い出すのです.


*1 狂気に効くとされた薬草.クリスマスローズともいわれる.http://de.wikipedia.org/wiki/Schneerose参照.



【2012/07/28 14:15】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』2巻2歌106-125

ridentur mala qui componunt carmina; verum
gaudent scribentes et se venerantur et ultro,
si taceas, laudant quidquid scripsere beati.
at qui legitimum cupiet fecisse poema,
cum tabulis animum censoris sumet honesti:  110
audebit, quaecumque parum splendoris habebunt
et sine pondere erunt et honore indigna ferentur,
verba movere loco, quamvis invita recedant
et versentur adhuc intra penetralia Vestae;
obsecurata diu populo bonus eruet atque    115
proferet in lucem speciosa vocabula rerum,
quae priscis memorata Catonibus atque Cethegis
nunc situs informis premit et deserta vetustas;
adsciscet nova, quae genitor produxerit usus.
vemens et liquidus puroque simillimus amni   120
fundet opes Latiumque beabit divite lingua;
luxuriantia compescet, nimis aspera sano
levabit cultu, virtute carentia tollet,
ludentis speciem dabit et torquebitur, ut qui
nunc Satyrum, nunc agrestem Cyclopa movetur. 125

ひどい歌を書く者たちは笑いものです.しかし
彼らは書いているのが楽しくて,そして自らを崇めもし,
もし君が黙っていれば,彼らが書いたものを何でも自ら賞賛します.
一方,全うな詩を書くことを望む者は,
蝋板と一緒に,よき検閲者の心構えも持つのです.
何であれ,あまり輝きを持ちそうにない言葉,
重みを持たなそうな言葉,名誉に相応しくないと言われそうな
言葉は,敢えて彼らはその場所から削ります.それらの言葉がたとえ出て行くことを拒もうと,
ウェスタの内奥*1に今までいたものであろうともです.
彼は,長い間知られずにいたものを,実直に掘り起こし,そうして
古のカトーやケテーグス*2らによって用いられていたものの,
今はひどい埃と,人のよりつかぬ古さの下に推し込められている,
諸物の適切な用語に日の目を見させるでしょう.
また,慣用が父親となって生み出した,新しい言葉も受け入れるでしょう.
勢いよく,そして流麗に,清純な川にも全くそっくりに,
彼は財を注ぎ,豊かな言葉により,ラティウムを富ましめます.
繁茂しすぎるものは切りつめ,あまりに荒れたものは
健全に養い和らげ,力なきものは取り除き,
遊ぶものの相好はしているでしょうが,苦心をする様は,
あたかも時にサテュロスを,時に野卑なキュクロープスを演じるもの*3の如くです.


*1 ウェスタの神殿の内奥には,それに属する者以外入る事はできなかった.
*2 前者は前213年-149年,後者は前204年ごろ執政官.どちらも弁論で有名.
*3 簡単に踊っていても,実際には厳しいトレーニングの結果ということ.



【2012/07/27 18:24】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ドイツ語の勉強用

なかなか判りやすいドイツ語です.


[READ MORE...]
【2012/07/27 15:49】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


アウグストゥス研究

 ホラーティウスも全部翻訳できそうなので,ちょっと歴史の方からホラーティウスを見てみようかと思っています.そうするとまずはアウグストゥス研究ということになるでしょうか.

 いきなりマンガからですが,やっぱりこれが個人的には一番いいイントロダクションだと思います.これのイタリア語版の話がきているということを,監修者の方がおっしゃっていたのですが,どうなったでしょうね.

さかもと未明著 小堀馨子監修『マンガ ローマ帝国の歴史2 アウグストゥス,揺るぎなき帝国の礎』東京:講談社,2007年.


マンガ ローマ帝国の歴史2 アウグストゥス、揺るぎなき帝国の礎マンガ ローマ帝国の歴史2 アウグストゥス、揺るぎなき帝国の礎
(2007/04/21)
さかもと 未明

商品詳細を見る


 日本で殆ど唯一のアウグストゥス入門は,西洋古典の専門家でも西洋古代史の専門家でもない方がわざわざ訳してくださいました.そのためか,大変読みやすい明快な翻訳です.碩学グリマルのクセジュ文庫.原著の細かい年代などの間違いも直してありますが,フランス語の専門書ではよくあることだと,小耳に挟んだことがあります(が,本当かどうかは確認してください).訂正箇所は注で示してくださっています.

ピエール・グリマル 北野徹訳『アウグストゥスの世紀』文庫クセジュ.東京:白水社,2004年


アウグストゥスの世紀 (文庫クセジュ)アウグストゥスの世紀 (文庫クセジュ)
(2004/02)
ピエール グリマル

商品詳細を見る


 多少は洋書など.もう少しで出版される……と思っていたら,もう出版されていました.8月(August)出版というのは出版社のジョークだったのかもしれませんね.ガリンスキーのアウグストゥス本.

Karl Galinsky. Augustus: Introduction to the Life of an Emperor. 2012.08(forthcoming) 06.


Augustus: Introduction to the Life of an EmperorAugustus: Introduction to the Life of an Emperor
(2012/06/30)
Karl Galinsky

商品詳細を見る


 これは必読なのでしょうが,なんとなく読まずに今まで来てしまいました(というかそんな本ばかり……).Res gestae divi Augusti『神君アウグストゥス業績録』です.ちなみに res gestae というのは,我々のいう「歴史」にあたるラテン語です.最新の校訂本は,9月発売のケンブリッジ碑文マニュアル The Cambridge Manual of Latin Epigraphy の Alison E. Cooley氏が 2009年に出していました.

Alison E. Cooley Ed. Tr. and Comm. Res Gestae Divi Augusti: Text, Translation, and Commentary. Cambridge: Cambridge U. P., 2009.


Res Gestae Divi Augusti: Text, Translation, and CommentaryRes Gestae Divi Augusti: Text, Translation, and Commentary
(2009/05/14)
Augustus、Alison E. Cooley 他

商品詳細を見る


改めてアウグストゥス関係文献探してみると,最新の本を持っていないせいもあって,まともな書誌という感じにならないですね(いつも通りといえばそうですが).ガリンスキーが手に入ったらもう一度調べてみようかとおもいます.



【2012/07/26 05:30】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


2011年3月15日の関東被曝

 やはり3月15日の2号機ベントで,大量に放射性物質が漏れだしていたようです.このベントはもちろんフィルターなし.まああっても放射性ヨウ素などの気体は素通りだったでしょうが,セシウムぐらいは取れたかもしれません.原子炉の圧力を下げて,爆発を回避するためのやむを得ない処置というのは判りますが,問題は放射性物質の雲が堂々と東京のど真ん中まで通過しているのに,安全だ安全だというだけで全く警告しなかったことですね.天気予報は風向きまで伝えるのを止めていたぐらいですし.


 当時はいくつかの有志による放射性物質の観測が行われていて,僕もつきっきりで見ていましたが,やはりとんでもない量の放射性物質が通って行ったとおぼしき観測データーがでていて,茨城かどこかの研究者の方が必死に警告していましたが,概ねデマ扱いでしたね…… ただ,降雨量はあまりなかったようですから,警告を受け入れて,しっかり部屋に閉じこもって雲が通り過ぎるのを待っていれば,ある程度は被曝を回避できたかもしれません.
 碌な安全対策もとらずに,一番ヤバそうな原発から動かし始めているわけですから,遠からずもう一度ぐらいは放射性物質の大量漏出をやらかすことと思うので,その時は確実に被曝回避できるよう,情報には注意していましょう.


【2012/07/25 21:06】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』2巻2歌87-105

frater erat Romae consulti rhetor, ut alter
alterius sermone meros audiret honores,
Gracchus ut hic illi, foret huic ut Mucius ille.
qui minus argutos vexat furor iste poetas?   90
carmina compono, hic elegos. Mirabile visu
caelatumque novem Musis opus! adspice primum,
quanto cum fastu, quanto molimine circum-
spectemus vacuam Romanis vatibus aedem:
mox etiam, si forte vacas, sequere et procul audi, 95
quid ferat et qua re sibi nectat uterque coronam.
caedimur totidem plagis consumimus hostem
lento Samnites ad lumina prima duello.
discedo Alcaeus puncto illius; ille meo quis?
quis nisi Callimachus? si plus adposcere visus, 100
fit Mimnermus et optivo cognomine crescit.
multa fero, ut placem genus irritabile vatum,
cum scribo et supplex populi suffragia capto;
idem, finitis studiis et mente recepta,
obturem patulas impune legentibus aures.   105

ローマでは,弁論家は法律家の兄弟のごとくで,一方は
一方の褒め言葉しか話の中では聞かず,
あちらにとってはこちらはグラックス*1,こちらにとってはあちらはムーキウス*2となるほどでした.
どうしてこんな狂気が,声朗々たる詩人を,それ以上に悩ませないということがあるでしょう?
僕は叙情詩を書き,この者はエレゲイアを書きます.なんと見るも驚くべき,
九柱のムーサらにより彫琢された作品か!まず見てください,
どれほどの誇らしさと,どれほどの尊大さとともに,
我々がローマ詩人のために空けられた神殿*3を見渡しているかを.
やがてまた,もしたまたま時間があれば,ついて来て,離れた所から聞いてください,
二人とも何を差し出し,何でもって自分の花冠を編むのかを.
我々は,サムニウム剣闘士*4のごとく,緩慢な戦いを,夕暮れまで行いつつ
切られ合い,同じ回数ぶんだけ,打撃で相手を消耗させます.
彼の投票で,僕はアルカイオスとなって退場します.彼は僕ので,何になるのか?
カッリマコス以外の何になるでしょう*5?もし彼がもっと大きいものを要求するようなら,
彼はミムネルモス*6になり,また,望む呼び名を取ってより尊大になります.
僕が詩を書いており,そして拝んで人々の票あつめをする間,
詩人たちという気難しい種族を宥めるために,僕は多くのことを我慢します.
その僕も,熱意は尽き,正気を取り戻した今,
朗読している者に対して,開いた耳を閉ざしても,罰はあたりますまい.


*1 グラックスの改革で有名なグラックス兄弟のこと.弁論家としても有名.
*2 著名な法律家のP.ムーキウス・スカエウォラは,数名の可能性があるが,おそらく,前133年に執政官で,個人法の創始者であるそれのこと.
*3 『書簡集』2巻1歌216(*3)参照.
*4 イタリア中部のサムニウム(地図Da)人風の出で立ちで戦う剣闘士.
*5 この部分は,ローマのカッリマコスを自称したプロペルティウスを指すとも言われているが,反対意見も多い.
*6 コロポーン(地図Bc)のエレゲイア詩人(前6世紀).



【2012/07/25 05:22】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ひさびさにカッリマコス

なんだか久しぶりにカッリマコス詩論が出てきました.訳がある部分だったので,URLをコピペで済んで助かりました.『縁起集』のほうはまだ翻訳あまりしていないので,↓が手に入ったら翻訳してみようかとおもいつつ,高すぎで手がでません.現時点でも3万円だと,ちょっとやそっと円高が進んでも買えるようにはならなそう…….やはりペーパーバックに一縷の望みを託すしかないでしょうか.ともあれ,明日26日出版予定です.

Callimachus: AetiaCallimachus: Aetia
(2012/07/26)
Annette Harder

商品詳細を見る



【2012/07/25 00:39】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』2巻2歌65-86

praeter cetera me Romae poemata censes   65
scribere posse inter tot curas totque labores?
hic sponsum vocat, hic auditum scripta, relictis
omnibus officiis; cubat hic in colle Quirini,
hic extremo in Aventino, visendus uterque.
intervalla vides humane commoda. 'Verum    70
purae sunt plateae, nihil ut meditantibus obstet.'
festinat calidus mulis gerulisque redemptor,
torquet nunc lapidem, nunc ingens machina tignum,
tristia robustis luctantur funera plaustris,
hac rabiosa fugit canis, hac lutulenta ruit sus:  75
i nunc et versus tecum meditare canoros.
scriptorum chorus omnis amat nemus et fugit urbem,
rite cliens Bacchi somno gaudentis et umbra:
tu me inter strepitus nocturnos atque diurnos
vis canere et contracta sequi vestigia vatum?  80
ingenium, sibi quod vacuas desumpsit Athenas
et studiis annos septem dedit insenuitque
libris et curis, statua taciturnius exsit
plerumque et risu populum quatit: hic ego rerum
fluctibus in mediis et tempestatibus urbis    85
verba lyrae motura sonum conectere digner?

何よりも,ローマで僕が詩を書くことができると君は思うのですか?
これほど多くの心配事とこれほど多くの苦労の中にあって?
ある者は保証人にするために,ある者は書いたものを聞かせるために呼びつけ,
僕はすべての仕事を後にすることになります.ある者はクィリーヌスの丘*1で,
あるものはアーウェンティーヌスの丘*1で病に伏しており,どちらも見舞わねばなりません.
その感覚ときたら,ご存知のとおり,御丁寧にも都合良い距離です.「しかし
街路は清潔で,思索を妨げるものも何一つ無い程です」
熱心な請け負い業者は,驢馬と驢馬引きと共に急いでおり,
クレーンは時に石を,時に木材を巻き上げ,
悲しみの葬列は,頑丈な荷車と争い,
あちらでは怒り狂う犬が逃げ,あちらでは泥まみれの豚が突進します.
さあ君,行きたまえ,そうして自分で麗しき詩行を思索して見たまえ.
作家の群は皆,森を愛し,都を避けますが,
それは本性通り,眠りと日陰を愛でるバッコス*2の被庇護民たるがゆえです.
君は僕に,昼夜を問わず続く騒音の中で
歌うことを,かつ詩人達の残した細い足跡を踏んで行く*3ことを望むのですか?
人気のないアテーナイを選んで,そうして
七年間の研究に身を捧げ,本と心労とに
老いた天才が,彫像よりも黙りこくって外に出ると,
大抵は人々を笑いころげさせることになります.
人波の真っ只中,そして都の嵐の真っ只中で,
リュラの音を揺さぶるであろう言葉を,僕はつなぐ気になるでしょうか.


*1 地図A参照.クィリーヌスの丘は北のほう,アーウェンティーヌスの丘は南端.距離にしておよそ2km離れている.
*2 『歌集』3巻25歌参照.
*3 カッリマコス的な詩人の立場は,あまり踏まれた事の無い道を行くこと.カッリマコス『縁起集』断片1.25-8行参照.比喩的に語られているところの,人にあまり踏まれていない小径(すなわち,あまり他の人が歌っていないテーマ)と,現実のローマの喧噪に満ちあふれた雑踏が対比されている.



【2012/07/25 00:17】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


なにを今更なニュース



なんか判りきった事実のような気がしていましたが…….だって既に去年から,横浜で明らかに検出されて騒ぎになっていた放射性ストロンチウムが,東京で検出されないはずがないですからね.
 放射性ストロンチウムはカルシウムと似ているので,人体に吸収されれば骨にたまって,まず一生排出されず,白血病や骨癌などを引き起こす他,糖尿病の原因になるそうです.東京電力がたまに「間違って」何百トンと海に放出した高濃度汚染水は,放射性セシウムは濾過して取り除いていますが,放射性ストロンチウムはもともと液体なので,取り除けません.通常は放射性セシウムの量に応じて,ほぼ同量の放射性ストロンチウムがあるということなのですが,そういう事情のため,このバランスは海産物では保たれないでしょう.特に太平洋側の海産物は,たとえ放射性セシウムが検出されなくても,放射性ストロンチウム汚染は非常に深刻なはずです.要するに,日本の海産物は,太平洋側はほぼ終わったという状態でしょう.いずれは日本海側も徐々に汚染されて行くでしょうね.




【2012/07/24 21:07】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』2巻2歌41-64

Romae nutriti mihi contigit atque doceri,
iratus Grais quantum nocuisset Achilles.
adiecere bonae paulo plus artis Athenae,
scilicet ut vellem curvo dinoscere rectum
atque inter silvas Academi quaerere verum.   45
dura sed emovere loco me tempora grato,
civilisque rudem bellli tulit aestus in arma
Caesaris Augusti non responsura lacertis.
unde simul primum me dimisere Philippi,
decisis humilem pinnis inopemque paterni    50
et laris et fundi paupertas impulit audax,
ut versus facerem. sed quod non desit habentem
quae poterunt umquam satis expurgare cicutae,
ni melius dormire putem quam scribere versus?
singula de nobis anni praedantur euntes:    55
eripuere iocos, venerem, conviva, ludum,
tendunt extorquere poemata: quid faciam vis?
denique non omnes eadem mirantur amantque:
carmine tu gaudes, hic delectatur iambis,
ille Bioneis sermonibus et sale nigro.      60
tres mihi convivae prope dissentire videntur,
poscentes vario multum diversa palato.
quid dem? quid non dem? renuis tu, quod iubet alter.
quod petis, id sane est invisum acidumque duobus.

僕はローマで養われ,そうして,怒れるアキッレウスが
どれほどギリシア勢に損害を与えたのか*1を教育される機会を得ました.
よきアテーナイ*2は,もう少し多くの教養を加えてくれました.
すなわち,僕は曲がったことから正しいものを区別したいと欲し,
そうしてアカデーモス*3の森の中,真理を探求したいと思うに至るほどでした.
しかし,厳しい時代が僕を心地よい場所から引き離し,
そうして市民戦争*4という苦難が,新兵の僕に武具をまとわせました,
その武具はアウグストゥス様の腕力には応えるべくもないものでしたが,
そうして,ピリッピー*5の戦いが僕を解放するや否や,
羽を切られて地に落ちて,先祖代々の家神も
地所も欠いた僕を,赤貧が追い立て,
詩行を書くこととなりました.しかし,欠ける物とてなき僕を,
一体どんな毒人参が十分清めることができるでしょうか,
詩を書くよりも寝ているほうがよいと思っているので無い限り?
過ぎ行く年は,僕から一つ一つものを奪って行きます.
それは冗談を,愛を,諍いを,見世物を奪い取り,
今詩をもぎ取ろうとしています.僕に何をすることを君は望むのですか?
最期に言えば,皆が同じものを賛嘆し,愛好する訳ではありません.
君は叙情詩を喜び,この者はイアンボスが,
かの者はビオーン*6風の談話とブラックジョークが楽しいのです.
三人の宴客が,異なる味の好みから,大いにかけ離れたものを望んで,
殆ど一致をみないかのごとくのように思われます.
何を僕は出しましょう?何を出さずにおきましょう?他の人の注文を,君は嫌だといいます.
君が望むものは,それは他の二人には全く嫌いで不味いものなのです.


*1 ホメーロス『イーリアス』の内容.
*2 ローマの若者は,教育の仕上げとして,しばしばアテーナイへ留学した.
*3 アテーナイの英雄.その墓所の周りの森に,プラトーンの学園アカデーメイアがあった.
*4 前42年11月-12月,共和制派でカエサル暗殺者,マールクス・ブルートゥス,カッシウスらと,カエサル派アントーニウス,オクターウィアーヌスらの決戦のこと.ホラーティウスは共和制派で出兵.
*5 ピリッピーはマケドニアの町(地図Fa.旧名クレーニデス).市民戦争の戦場となる.
*6 前300年頃の犬儒派の哲学者詩人.



【2012/07/24 05:11】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』2巻2歌26-40

Luculli miles collecta viatica multis
aerumnis, lassus dum noctu stertit, ad assem
perdiderat: post hoc vehemens lupus et sibi et hosti
iratus pariter, ieiunis dentibus acer,
praesidium regale loco deiecit, ut aiunt,     30
summe munito et multarum divite rerum.
clarus ob id factum donis ornatur honestis,
accipit et bis dena super sestertia nummum.
forte sub hoc tempus castellum evertere praetor
nescio quod cupiens hortari coepit eundem   35
verbis, quae timido quoque possent addere mentem:
'i, bone, quo virtus tua te vocat, i pede fausto,
grandia laturus meritorum praemia. — quid stas?'
post haec ille catus, quamvis rusticus, 'ibit,
ibit eo, quo vis, qui zonam perdidit', inquit.   40

ルクッルス*1の兵士の一人が,多くの苦難とともに集めた
貯金を,夜に疲れていびきをかいているうちに,一文に至るまで
失ってしまいました.この後,彼は激した狼となり,自分と敵とに
等しく腹を立て,空腹で歯を鋭くして,
王*2の守備隊を,極めて防御が行き届き,
多くの財で満ちていた場所から追い出したということです.
この行為で名を挙げ,彼には立派な褒賞が与えられ,
そして二千セーステルティウスの金を受け取りました.
たまたまこの事があったすぐ後,指揮官がどこか知らない要塞を
破壊することを欲して,同じ兵士を,
臆病な兵士にも勇気を注入できそうな言葉で,鼓舞し始めました.
「行くがよい,良き兵よ,お前の勇気が呼ぶところへ,幸運もたらす足にて
功績に対する巨大な褒美を得んとして行くがよい.——なぜ突っ立っている?」
この言葉の後,彼は田舎者ではありましたが,機敏にも「行くでしょう,
あなたの欲するところに行くでしょう,胴巻を無くした奴が」と言いました.


*1 L.リキニウス・ルクッルス(前118-前56年).このエピソードは前76-64年の第3次ミトリダテース戦争のもの.ルクッルスは前74年-前76年に,ミトリダテース王に勝利して,逃亡させている.
*2 ミトリダテース王.



【2012/07/23 04:41】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』2巻2歌 フロールス君へ 1-25

Flore, bono claroque fidelis amice Neroni,
si quis forte velit puerum tibi vendere natum
Tibure vel Gabiis et tecum sic agat: 'hic et
candidus et talos a vertice pulcher ad imos
fiet eritque tuus nummorum milibus octo,    5
verna ministeriis ad nutus aptus eriles,
litterulis Graecis imbutus, idoneus arti
cuilibet, argilla quidvis imitaberis uda;
quin etiam canet indoctum, sed dulce bibenti.
multa fidem promissa levant, ubi plenius aequo 10
laudat venales, qui volt extrudere, merces.
res urguet me nulla; meo sum pauper in aere.
nemo hoc mangonum faceret tibi; non temere a me
quivis ferret idem. semel hic cessavit et, ut fit,
in scalis latuit metuens pendentis habenae:   15
des nummos, excepta nihil te si fuga laedit'
ille ferat pretium poenae securus, opinor.
prudens emisti vitiosum, dicta tibi est lex:
insequeris tamen hunc et lite moraris iniqua?
dixi me pigrum proficiscenti tibi, dixi      20
talibus officiis prope mancum, ne mea saevus
iurgares ad te quod epistula nulla rediret.
quid tum profeci, mecum facientia iura
si tamen attemptas? quereris super hoc etiam, quod
exspectata tibi non mittam carmina mendax.  25

フロールス*1君,善良かつ高名なネロー*2の忠実なる友よ,
もしひょっとして誰かが君に奴隷を売りたくて,
それはティーブル*3かガビイー*4生まれのですが,君とこんな風にやりとししたとします.「この
頭のてっぺんから踵の底にいたるまで,美しくかつ立派なやつは,
八千セーステルティウス*5であなたのものになり,あなたのものであり続けるでしょう.
国内産の奴隷で,主人の指示にすぐ応じ,
ギリシア語をかじっており,どんな手作業にも
向いており,白粘土が湿っているがごとく,思い通りの姿に似せられるでしょう.
さらにいえば,歌は拙いものを歌うでしょうが,飲んでいる人には十分上手です.
早くはけさせようと,普通以上に奴隷の価値を褒めると,
多く約束しすぎて信用を落とすものです.
私が困る事情はなにもございません.私は借金には乏しいのです.
奴隷商の誰一人,こんなことをあなたにするはずはないですよ.誰でもが私から,簡単には
同じ条件を得ることはないはずです.只一度だけ,こいつは怠けてしまい,そして,よくあるように,
吊られている鞭をおそれて,階段の下に隠れました.
お代金を下さい,開示しましたこの逃亡が,あなたに気になるのでなければですが」
彼は罰を受ける恐れなく,代金を受け取ると,僕は思います.
君は判った上で,欠陥のある男を買いました,法的条件は君に告げられています.
しかしながら,君はこの男を追求し,そして不当な訴訟で時間を取らせるのですか?
僕は出発する君に,自分はのろまだと言いました,
このような仕事には,自分はほとんど不具者だと言いました.それは君が,
自分の所に僕の返事の手紙が全然来ないといって,厳しく叱責せぬようにするためでした.
それじゃあ僕は何をしたことになるのでしょう,僕に法的正義があるのに,
それなのに君が僕を攻撃するのなら?これに加えて,君は不平さえ言います,
待ちこがれている歌を自分に送ってこない僕は嘘つきだと.


*1 ユーリウス・フロールス.『書簡集』1.3 参照.
*2 後にティベリウス帝となる,ティベリウス・クラウディウス・ネロー.
*3 地図Gf.
*4 地図Gf.
*5 貨幣価値の換算は難しいが,40万-80万円ぐらいか.



【2012/07/22 23:46】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ラテン語動画

 かなり上手い(けどちょっとドイツ語訛りっぽい)ラテン語ニュース動画がありました.判らない方のために,ドイツ語の字幕がついていますから安心です.動画は read more 以下でどうぞ.


[READ MORE...]
【2012/07/22 00:37】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』2巻1歌245-270 (完結)

at neque dedecorant tua de se iudicia atque   245
munera, quae multa dantis cum laude tulerunt
dilecti tibi Vergilius Variusque poetae,
nec magis expressi voltus per aenea signa
quam per vatis opus mores animique virorum
clarorum apparent. nec sermones ego mallem  250
repentes per humum quam rescomponere gestas
terrarumque situs et flumina dicere et arces
montibus impositas et barbara regna tuisque
auspiciis totum confecta duella per orbem
claustraque custodem pacis cohibentia Ianum  255
et formidatam Parthis te principe Romam,
si quantum cuperem possem quoque; sed neque parvum
carmen maiestas recipit tua, nec meus audet
rem temptare pudor, quam vires ferre recusent.
sedulitas autem stulte, quem diligit, urguet,   260
praecipue cum se numeris commendat et arte:
discit enim citius meminitque libentius illud,
quod quis deridet, quam quod probat et veneratur.
nil moror officium, quod me gravat, ac neque ficto
in peius voltu proponi cereus usquam      265
nec prave factis decorari versibus opto,
ne rubeam pingui donatus munere et una
cum scriptore meo capsa porrectus operta
deferar in vicum vendentem tus et odores
et piper et quidquid chartis amicitur ineptis.   270

あなたの愛好される詩人たるウェルギリウスとワリウスは,
彼らに下されたあなたの判断と恩賞の価値を減じはせず,
その恩賞を,下賜されるあなたへの多大な賞賛とともに,彼らは戴いているのです.
また,銅像によって顔が表現されて注目される度合いは,
詩人の作品により,高名な人物の人となりが注目される度合いに
勝ることはありません.また,この私も,歴史と
大地の様相,河川と山中に置かれた
要塞,そして蛮族の王国,そうしてあなたの
御威光により全世界にわたって戦いが終結したこと,
平和の見張り役たるヤーヌスを閉じ込める閂,
そしてあなたを第一人者と抱く,パルティアにとり脅威たるローマ*1を差し置いて.
地を這う談話なぞのほうを語りたいとは思いますまい,(251-2)
ただもし,自分が欲するだけのことを私ができたらばの話ですが.しかし,小さき
歌を,あなたの偉大さは受け取ることはせず,また私の恥を知る気持ちも
力が耐え切れないことを敢えて試みることはしません.
さらにいえば,サービス精神が好む相手を圧迫するとなれば,それは愚かしいことです.
とりわけ,韻律と芸術に勤しむ時にはそうです.
というのも,人は馬鹿にするもののほうを,人が認め崇めるもの以上に,
より早く学び,より好んで覚えるものです.
私は自分の重荷になる仕事には,全くかかわるつもりはありませんし,また
蝋人形とされ,劣化した顔を作られて人前に置かれることも,
ひどい出来の詩行によって賞賛されることも望みません.
それは,無様な贈り物を与えられて私が赤面せぬよう,そして
私のことを書いた作者とともに,閉じた本入れの中に横たわって,
香や香料や胡椒や,何でもいらない紙に包まれているものを売る町へと
私が運ばれていかないようにするためです.


*1 Hor. C. 4. 15. 1-16参照.



【2012/07/21 19:52】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


なんかもうお金の使い道が……

剥製状態にされた「奇跡の一本松」って全然奇跡の一本松じゃないとおもうのですが,どうでしょう.「防腐処理などの費用に1億5000万円、年間の維持管理費に約20万円を見込む」

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120720-OYT1T01194.htm

被災者で困ってる人はもういなくなったとでもいうのでしょうか.



【2012/07/21 05:20】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』2巻1歌229-244

sed tamen est operae pretium cognoscere, quales
aedituos habeat belli spectata domique    230
Virtus, indigno non committenda poetae.
gratus Alexandro regi magno fuit ille
Choerilus, incultis qui versibus et male natis
rettulit acceptos, regale nomisma, Phillippos.
sed veluti tractata notam labemque remittunt 235
Atramenta, fere scriptores carmine foedo
splendida facta linunt, idem rex ille, poema
qui tam ridiculum tam care prodigus emit,
edicto vetuit, ne quis se praeter Apellen
pingeret aut alius Lysippo duceret aera    240
fortis Alexandri voltum simulantia. quodsi
iudicium subtile videndis artibus illud
ad libros et ad haec Musarum dona vocares,
Boeotum in crasso iurares aere natum.


しかしながら,いかなる神殿守を,戦時も平時も
崇められる「徳」がもつべきかを,認識することはやる価値のあることです.
それは相応しくない詩人に任されるべきではありません.
アレクサンドロス大王にお気に入りのかの
コイリロス*1は,洗練に欠ける生まれ損ないの詩行の代金として
王の通貨たるピリッポス*2を受け取りました.
しかし,あたかもインクが触れると,痕やしみが残るように,
大抵は,おぞましい歌によって作家は
すばらしい業績に泥を塗ることになります.かくもばかばかしい
詩をかくも高額に出し惜しみなく買った,その同じ王は,
アペッレース*3以外は誰も自分を描かかぬよう,
あるいはリュシッポス*4以外は誰も
強大なアレクサンドロスの顔を模す銅像をかたどらぬよう,法令で禁止しました.
しかしもし,視覚芸術に対するかの繊細な判断を,
あなたが書物とムーサのこの贈り物とにも向けられているなら,
あなたは,かの王はボイオーティアの重い空気の中に生まれた*5と誓って言うはずです.


*1 カリアのイアソス(地図Bd)の詩人で,アレクサンドロス大王に従い,その勝利の叙事詩を書いた.拙い詩人とされる.
*2 ピリッポス王にちなんでつけられた,マケドニアの金貨.
*3 アレクサンドロス大王と同時期に活躍した,ギリシア最大と称される画家.
*4 前4世紀に活躍した,偉大な彫刻家.
*5 ボイオーティアの空気は重く,そのため人の性質も愚鈍であるという見解があった(Cic. Fat.7 ... crassum (sc. caelum) Thebis, itaque pingues Thebani et valentes. テーバイの空気は重々しく,したがってテーバイ人は愚鈍で頑強である).



【2012/07/21 01:38】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(3) | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』2巻1歌208-228

ac ne forte putes me, quae facere ipse recusem,
cum recte tractent alii, laudare maligne:
ille per extentum funem mihi posse videtur   210
ire poeta, meum qui pectus inaniter angit,
irritat, mulcet, falsis terroribus implet,
ut magus, et modo me Thebis, modo ponit Athenis.
verum age et his, qui se lectori credere malunt
quam spectatoris fastidia ferre superbi,    215
curam redde brevem, si munus Apolline dignum
vis complere libris et vatibus addere calcar,
ut studio maiore petant Helicona virentem.
multa quidem nobis facimus mala saepe poetae
— ut vineta egomet caedam mea —, cum tibi librum 220
sollicito damus aut fesso; cum laedimur, unum
si quis amicorum est ausus reprehendere versum;
cum loca iam recitata revolvimus irrevocati;
cum lamentamur, non apparere labores
nostros et tenui deducta poemata filo;     225
cum speramus eo rem venturam, ut, simul atque
carmina rescieris nos fingere, commodus ultro
arcessas et egere vetes et scribere cogas.

またひょっとして,私が自分ではするのを拒むものを,他の人々が上手くやっているから,
悪意をもって評価していると,あなたが思わぬように言いますが,
私の胸をありもしないことで不安にさせたり,
刺激したり,宥めたり,偽の恐怖で満たしたり,
魔法使いの如く,時にテーバイに,時にアテーナイ*1に私を置けるような詩人は,
私には張ったロープを渡って歩くことができる*2と思われます.
しかし是非,傲慢な観衆の悪意に耐えるよりも,
自分を読者に委ねるほうを欲する者たちにもまた,
少しのご配慮を下さいますよう.もしあなたが,アポッローンに相応しい捧げもの*3
本で満たし,そして詩人たちに拍車をかけて,
より大きな熱意をもって,青々繁るヘリコーンを求めさせることをお望みならばですが.
確かにしばしば,我々詩人は,我々自身に害をなします.
——ちょうど私自身が自分の葡萄を切るように——それはあなたがお悩みの時や
お疲れの時に,我々が本を差し上げる時ですし,誰か友人の一人が
詩行を一行でもあえて非難して我々が傷つく時ですし,
既に朗読をしたところをアンコールもないのに開き直す時ですし,
我々の苦労と,繊細な糸にて編んだ詩とが,
日の目を見ないと嘆く時ですし,
我々が詩を書いているとあなたが知るや否や,
あなたがご自分から好意をもって我々を呼び寄せ,
欠乏すること無きように言い,書くことを要請するような時が来ることを望む時です.


*1 多くの劇が上演された代表的な場所.
*2 そのように,私にありありと情景を思い浮かばせ,劇の中に熱中させるような詩人は,特別に難しいことをこなす能力があるということ.
*3 パラーティーヌスの丘のアポッローン神殿内にアウグストゥスが作った図書館のことを指す.前28年にアポッローンに捧げられる.地図B右下あたりの"T. of Apollo".




【2012/07/20 23:43】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』2巻1歌194-207

si foret in terris, rideret Democritus, seu
diversum confusa genus panthera camelo   195
sive elephas albus volgi converteret ora;
spectaret populum ludis attentius ipsis,
ut sibi praebentem nimio spectacula plura,
scriptores autem narrare putaret asello
fabellam surdo. nam quae pervincere voces  200
evaluere sonum, referunt quem nostra theatra?
Garganum mugire putes nemus aut mare Tuscum,
Tanto cum strepitu ludi spectantur et artes
divitiaeque peregrinae, quibus oblitus actor
cum stetit in scaena, concurrit dextera laevae. 205
dixit adhuc aliquid? nil sane. quid placet ergo?
lana Tarentino violas imitata veneno.


デーモクリトスがもし下界にいれば,
衆目を集めているのは駱駝と掛け合わされた合いの子の豹*1なのか,
それとも白い像なのかと,笑うことでしょう.
あまりにもよい多くの見せ物を自分に提供しているといって,
劇そのもの以上に注意深く人々を観察するでしょう,
だが彼は,作家たちは聾の驢馬に劇を
語っていると思うでしょう.というのも,どんな声に,
我々の劇場が響かせる音を打ち負かす力があるでしょう?
あなたは,ガルガーヌスの森*2が,あるいはエトルリア海*3が呻いていると思うでしょう,
それほどの騒音とともに,劇と,そして演技と
外国の高価な衣装が見られるのです.それらをごたごた身につけて,役者が
舞台に立つと,右手が左手に打ち合わされます*4
——ここまで彼は何か言ったのか?——別に何も.——何がそれでは気に入っているのか?
——タレントゥムの染料*5で,スミレを模した羊毛です


*1 キリンのこと.
*2 アプリアの半島部の山.地図Ea-Fa.
*3 イタリア半島西側の海.
*4 拍手のこと.
*5 タレントゥム(カラブリアの町.地図Gb)のスミレの紫の染料は有名であった.



【2012/07/19 04:49】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』2巻1歌177-193

quem tulit ad scaenam ventoso Gloria curru,
exanimat lentus spectator, sedulus inflat:
sic leve, sic parvum est, animum quod laudis avarum
subruit aut reficit. valeat res ludicra, si me    180
palma negata macrum, donata reducit opimum.
saepe etiam audacem fugat hoc terretque poetam,
quod numero plures, virtute et honore minores,
indocti stolidique et depugnare parati,
si discordet eques, media inter carmina poscunt 185
aut ursum aut pugiles: his nam plebecula gaudet.
verum equitis quoque iam migravit ab aure voluptas
omnis ad incertos oculos et gaudia vana.
quattuor aut plures aulaea premuntur in horas,
dum fugiunt equitum turmae peditumque catervae; 190
mox trahitur manibus regum fortuna retortis,
esseda festinant, pilenta, petorrita, naves,
captivum portatur ebur, captiva Corinthus.

「栄光」が風切る車にて舞台へと上げた者を,
気乗りしない観衆は気落ちさせ,熱狂的なら意気を上げさせます.
このように些細で,このようにちっぽけなものが,賞賛に貪欲な気持ちを
押し潰すか癒すかするものなのです.劇なぞご免です,もし私が
賞が拒否されればやつれて,与えられれば太って家路につく,ということになるのであれば.
しばしば大胆な詩人さえ逃げ出させ,怯えさせるものは,次のようなことです.
すなわち,数において多数派で,人徳にも名誉にも劣る,
無知で愚鈍で,もし騎士階級の人でもノーと言えば,
暴力も辞さぬ者どもが,作品のまっただ中で,
熊やら拳闘士たちを要求することです.実にこれらを小市民どもは喜ぶのです.
しかし,騎士階級の喜ぶものも,今やすべて耳から
落ち着かぬ目と虚しい喜びへと移っています.
四時間あるいはそれ以上,幕は開けられたまま,
その間騎兵の一体が,歩兵の一軍が逃げてゆきます.
やがて至福なりし王侯たちが後ろ手にされて引かれ,
二輪戦車,女性用馬車,箱馬車,船が急ぎ,
戦利品の象牙,戦利品のコリントゥス*1が運ばれます.


*1 ギリシアのコリントゥスは,青銅器で有名であった.



【2012/07/19 02:38】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


Graecia capta ferum victorem cepit

 前に投稿した翻訳記事の冒頭は,数あるラテン語の格言のなかでも有名な一節です.『アウグストゥス宛書簡』の殆ど中央部にあるのですが,前後を合わせてなかなか読む機会はないかと思います.読める翻訳は,実質的には田中・村上訳しかないわけなので(例の全集は読むのは無理),再版するか,これも新たに西洋古典叢書で出すかしてもらいたいですね.

 半分ほど訳が終わった段階で,Brinkの例の注釈書が届きました.

C. O. Brink. Horace on Poetry: Epistles Book II: The Letters to Augustus and Florus. Cambridge: Cambridge U.P., 1982. paperback, 2011.

早速開封する際に,ページで指を切ってしまいました.どうやら神の如き注釈は生き血で宥められることを要求しているようです…… というのはともかく,これがなかなかすごい注釈でした.もちろん初心者にはおすすめし難いところもありますが,これを読めばどのように一流の学者が理解のために,思い悩み,データーを集め,諸学説をまとめ,自分の解釈を提示するかが判ります.ちょっとした記述にも,極普通に一言一句に悩みながら,それに対する解答を地道に準備しているというのが見える,非常に人間的な注釈書だと思います.本来母語でなかった英語も,むしろ我々には非常に判りやすいですね.

 Wikipediaを調べたら,Brinkの記事がありました.元々ドイツ生まれ(1907年)のいわゆるユダヤ人で,名前もユダヤ系のKarl Oskar Levyだったそうです.Brinkは,後にプロテスタント教会に入信した時に変えた名前で,さらにイギリスに移住して,市民権を得てから,名前をCharles Oskarにしたとのこと.1994年没.ナチスの迫害と第二次大戦など,大変な時期を生き抜いた世代だったのですね.


【2012/07/17 04:04】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』2巻1歌156-176

Graecia capta ferum victorem cepit et artes
intulit agresti Latio: sic horridus ille
defluxit numerus Saturnius, et grave virus
munditiae pepulere; sed in longum tamen aevum
manserunt hodieque manent vestigia ruris.   160
serus enim Graecis admovit acumina chartis
et post Punica bella quietus quaerere coepit,
quid Sophocles et Thespis et Aeschylus utile ferrent.
temptavit quoque rem, si digne vertere posset,
et placuit sibi, natura sublimis et acer:     165
nam spirat tragicum satis et feliciter audet,
sed turpem putat inscite metuitque lituram.
creditur, ex medio quia res arcessit, habere
sudoris minimum, sed habet comoedia tanto
plus oneris, quanto veniae minus. adspice, Plautus 170
quo pacto partes tutetur amantis ephebi,
ut patris attenti, lenonis ut insidiosi,
quantus sit Dossennus edacibus in parasitis,
quam non adstricto percurrat pulpita socco:
gestit enim nummum in loculos demittere, post hoc 175
securus, cadat an recto stet fabula talo.

征服されたギリシアは,野蛮な勝利者を征服し,そして諸芸術を
田舎臭いラティウムに持ち込みました.このようにして,かの荒っぽい
サトゥルヌヌス律*1は流れが絶え,そしてひどい毒気を
気品が駆逐しました.しかしながら,長い年月の間,
その痕跡は残っておりましたし,田舎には今日も残っています.
というのも,ローマは遅くになってギリシアの書物に重点を移し,
そして,ポエニー戦争の後,平和になってから,
ソポクレースが,テスピス*2が,アイスキュロスが何の益をもたらすかを探求し始めたのです.
そして,翻訳しうるに相応しいものがあれば,それを試みもしました.
そして,気質の点で気高く明敏であるがゆえ,満足行く結果となりました.
実際ローマは悲劇の才能が十分あり,そして敢えて行ったことも良い結果となりますが,
しかし,愚かにも推敲をみっともないことと考え,恐れました.
日常からテーマが来ているので,
労力は一番小さいと思われていますが,しかし喜劇は
手加減が少ない分だけ,より大きな負担があります.ご覧下さい,プラウトゥスが
どんな風にして年頃の恋人の役を演じ切り,
いかに締まり屋の父親の役を,悪巧みする女衒の役を演じるか,
どこまで貪欲な食客の中のドッセンヌス*3でいるか,
いかにぶかぶかのスリッパ*4を履いて舞台を駆け回るかを.
彼は金庫に銭を投げ入れることばかりを切望して,その後は,
劇が転けたか,それともしっかり地に足がついているかには,無関心なのです.


*1 古いイタリア固有の韻律.
 ᴗ — ᴗ — ᴗ — × || — ᴗ — ᴗ — — (ᴗ は — または ᴗ ᴗ に変わりうるほか,完全に消えてもよい)
*2 アテーナイで悲劇を演じた最初の伝説的役者.
*3 即興の幕間喜劇のアテッラ劇に登場するstock figure.この部分の意味は判りにくいが,Brink (p.213)に従うなら,プラウトゥスがどれほどあか抜けていないアテッラ劇のドッセンヌス的に演じているか,ということが言われているようである.
*4 喜劇ではスリッパを履いた.ぴったり合っていないスリッパは,プラウトゥスの配慮の行き届かない詩作スタイルの暗喩.



【2012/07/17 03:01】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』2巻1歌139-155

agricolae prisci, fortes parvoque beati,
condita post frumenta levantes tempore festo 140
corpus et ipsum animum spe finis dura ferentem,
cum sociis operum et pueris et coniuge fida,
Tellurem porco, Silvanum lacte piabant,
floribus et vino Genium memorem brevis aevi.
Fescennina per hunc inventa licentia morem  145
versibus alternis opprobria rustica fudit,
libertasque recurrentes accepta per annos
lusit amabiliter, donec iam saevus apertam
in rabiem coepit verti iocus et per honestas
ire domos impune minax. doluere cruento   150
dente lacessiti, fuit intactis quoque cura
condicione super communi, quin etiam lex
poenaque lata, malo quae nollet carmine quemquam
describi; vertere modum, formidine fustis
ad bene dicendum delectandumque redacti.  155

古の農夫らは,逞しく僅かなもので幸福であったのですが,
穀物を収穫した後,祭りの時に
肉体と終わりが来ることの望みによって辛さを耐えた心を癒しつつ,
仕事仲間と子供たちと忠実な妻とともに,
大地を豚で,シルワーヌス*1を乳で宥め,
人生の短さ知るゲニウス*2は花々と葡萄酒で宥めたものでした.
フェスケンニアの無礼講が,この習慣により考えだされ,
交互に交わされる詩行で田舎臭い悪態が吐き出されました.
この自由は繰り返し年毎に受け入れられ,
愛嬌もって遊ばれたのですが,ついには激しい冗談があからさまな
憤怒へと変わり始め,そして罰されることもない脅威となって
立派な家々に次々と矛先を向け始めました.人々は血塗られた
歯により攻撃されて苦しみ,無事であった人々にとってもまた,
共同体の有様についての危機感が生じました.ついには
悪意ある歌によっていかなる人物も描写されてはならぬという
法律と罰則が設けられました.棍棒への恐怖から,人々は調子を変え,
褒め言葉を言い,人を喜ばすほうに変わりました.


*1 イタリアの森と土地の神.
*2 ここでは個人を守る守護神.実際は様々なもののゲニウスが存在する.



【2012/07/17 00:37】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』2巻1歌118-138

hic error tamen et levis haec insania quantas
virtutes habeat, sic collige: vatis avarus
non temere est animus; versus amat, hoc studet unum;
detrimenta, fugas servorum, incendia ridet;   121
non fraudem socio puerove incogitat ullam
pupillo; vivit siliquis et pane secundo,
militiae quamquam piger et malus, utilis urbi,
si das hoc, parvis quoque rebus magna iuvari.  125
os tenerum pueri balbumque poeta figurat,
torquet ab obscaenis iam nunc sermonibus aurem,
mox etiam pectus praeceptis format amicis,
asperitatis et invidiae corrector et irae:
recte facta refert, orientia tempora notis    130
instruit exemplis, inopem solatur et aegrum.
castis cum pueris ignara puella mariti
disceret unde preces, vatem ni Musa dedisset?
poscit opem chorus et praesentia numina sentit,
caelestes implorat aquas docta prece blandus,  135
avertit morbos, metuenda pericula pellit,
impetrat et pacem locupletem frugibus annum.
carmine di superi placantur, carmine manes.

しかしながら,過ちであり,そして些細な狂気であるこのこと*1が,どれほどの
長所を持っているか,あなたは次のように考えをお改め下さい.詩人の心は
軽々しくは貪欲になりません.詩行を愛し,これ一つに専心します.
損害,奴隷の逃亡,火事も笑い過ごします.
同僚や孤児の子供になんらの欺瞞も
企てません.豆類と,二級品のパンで暮らし,
兵役にはのろまで役立たずですが,都には有益です.
もし,あなたが,小さい物事によって,大きな物事が助けられるとお認めならばですが.
子供の柔弱でたどたどしい口を詩人は教化し,
その耳を,この頃からふしだらな言葉から引き離し,
粗暴さと妬みと怒りを矯正しつつ,
やがては親身の教えにより,その精神を形成します,
正しく事実を語り,著名な手本により,
成長期を教育し,貧しい者,病んだ者を慰めます.
穢れなき少年たちと,夫を知らぬ少女は
どこから祈りを学べばいいのでしょう,もしムーサが詩人をよこさなければ?
歌舞隊は加護を祈願し,神威がおわすのを感じ,
天よりの恵みの雨を,教わった祈りにより神々の機嫌をとりつつ嘆願し,
病を除け,恐るべき危険を払い,
平和と実り豊かな一年を授かります.
歌により天上の神々は宥められ,歌により地下の神々も宥められるのです.


*1 詩を書くこと.



【2012/07/16 12:05】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』2巻1歌103-117

Romae dulce diu fuit et sollemne reclusa
mane domo vigilare, clienti promere iura,
cautos nominibus rectis expendere nummos,  105
maiores audire, minori dicere, per quae
crescere res posset, minui damnosa libido.
mutavit mentem populus levis et calet uno
scribendi studio; puerique patresque severi
fronde comas vincti cenant et carmina dictant. 110
ipse ego, qui nullos me affirmo scribere versus,
invenior Parthis mendacior, et prius orto
sole vigil calamum et chartas et scrinia posco.
navem agere ignarus navis timet, abrotonum aegro
non audet nisi qui didicit dare, quod medicorum est 115
promittunt medici, tractant fabrilia fabri:
scribimus indocti doctique poemata passim.

ローマで長い間好まれ,習慣となっていたのは,朝早くに起きて
家を開け,被庇護民に法律上のことを回答し,
確かな担保で用心深く貸金をし,
年長者の言を聞き,年少者には何によって
財産は増やし得るか,何によって有害な欲情を減ずるかを語ることでした*1
大衆は軽薄にも心を変えて,そして只一つ
書くことへの情熱に燃えています.少年たちも厳格な父親たちも,
葉を髪に巻き付けて晩餐をし,そして歌を口述するのです.
いかなる詩行も書かないと断言しているこの私自身,
パルティア人よりも嘘つき*2だということがわかります.そして,日が昇る前に
私は起きだして,葦ペンと用紙と本ケース*3を求めます.
船を知らぬ者は,船を動かすことをおそれ,カワラヨモギ*4を病人に
処方するのは,与え方を学んだ者でなければ敢えてしませんし,医師の仕事は
医者たちが仕事として引き受け,職人道具は職人が扱います.
我々は素人も玄人も,詩をあちこちで書き散らかしています.


*1 ローマでは有力な者は被庇護民を持っていた.早朝に被庇護民は庇護者の所へお伺いをたてにゆき,それに対して庇護者は椅子に座って回答していた.
*2 パルティア人は逃げる様子をみせて欺き,後ろ向きに矢を射かける戦法をしていた.
*3 カプセル状の,巻物の本を入れるケース.ローマの詩人は,本を書く際に,様々な本を参考にしていたようである.カトゥッルスの68歌33-40行では,詩を書けないのは,自分の持って来ている本が少ないためでもあると語っている.
*4 古来薬草として用いられ,現在でもスパイスや漢方など民間療法で使われる薬草.岡山理科大学のカワラヨモギのページ参照.



【2012/07/16 02:58】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


カトゥッルスとホラーティウスを歌う

カトゥッルスとホラーティウスの朗読ではなく,朗唱のCDが出ていました.

Katharina Kimm. Lieder Von Catull Und Horaz: Lateinische Lyrik, Gesungen Zur Harfe. Göttingen: Vandenhoeck & Ruprecht, 2011.


Katharina Kimmさんが,曲をつけてハープ(現代のそれ)を演奏しているとのこと.CDでは20曲が収録されているそうです.上の書名のところに埋め込んだリンク先で,ホラーティウス『歌集』3巻30歌カトゥッルス5歌が試聴できます(Hörproben のところのタイトルをクリック).色々ちょっと検索してみたら,Katharina KimmさんのHPも見つけました.もともと音楽家として音楽学校で研鑽を積んだ後に,2007年からゲッティンゲン大学でラテン語を勉強している方のようです.


Lieder Von Catull Und Horaz: Lateinische Lyrik, Gesungen Zur HarfeLieder Von Catull Und Horaz: Lateinische Lyrik, Gesungen Zur Harfe
(2011/06/15)
Katharina Kimm

商品詳細を見る



【2012/07/16 00:24】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』書誌

 『書簡集』が案外調子良く読めているので,ホラーティウス全部和訳もそんなに非現実的ではなくなってきた感じですね.やっぱりホラーティウス全集完成させるのが,今年の目標になるでしょうか.
 そんなわけで,『書簡集』関係,特に研究するつもりもありませんが,せっかくなのでちょっと書誌など探して見ました.しかしなんというか,あんまり研究最近されてないのかな,という雰囲気です.Brinkのtrilogyが出てしまって,おいそれと手を付ける訳にいかない分野になったということなのか,これはというものは最近はでてないような印象ですね(あくまで印象ですが).とりあえず入手したい気がするのはこの一冊でしょうか.

Kirk Freudenburg Ed. Horace: Satires and Epistles. (Oxford Readings in Clasical Studies). Oxford: Oxford U.P., 2009 .


これに "recent scholarship"(pp.1ff.)も入っているので,書誌としてもいいかもしれません.ドイツ語やイタリア語で書かれていた論文なども英訳されているので,外国語の勉強にも役立つかもしれませんね.


Horace: Satires and Epistles (Oxford Readings in Classical Studies)Horace: Satires and Epistles (Oxford Readings in Classical Studies)
(2009/07/15)
Kirk Freudenburg

商品詳細を見る


 


【2012/07/15 04:10】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』2巻1歌76-102

indignor quicquam reprehendi, non quia crasse
compositum illepideve putetur, sed quia nuper,
nec veniam antiquis, sed honorem et praemia posci.
recte necne crocum floresque perambulet Attae
fabula si dubitem, clament periisse pudorem   80
cuncti paene patres, ea cum reprehendere coner,
quae gravis Aesopus, quae doctus Roscius egit:
vel quia nil rectum, nisi quod placuit sibi, ducunt,
vel quia turpe putant parere minoribus et, quae
inberbi didicere, senes perdenda fateri.     85
iam Saliare Numae carmen qui laudat et illud,
quod mecum ignorat, solus volt scire videri,
ingeniis non ille favet plauditque sepultis,
nostra sed impugnat, nos nostraque lividus odit.
quod si tam Graecis novitas invisa fuisset,    90
quam nobis, quid nunc esset vetus? aut, quid haberet,
quod legeret tereretque viritim publicus usus?
ut primum positis nugari Graecia bellis
coepit et in vitium fortuna labier aequa,
nunc athletarum studiis, nunc arsit equorum,   95
Marmoris aut eboris fabros aut aeris amavit,
suspenditque picta voltum mentemque tabella,
nunc tibicinibus, nunc est gavisa tragoedis;
sub nutrice puella velut si luderet infans,
quod cupide petiit, mature plena reliquit.    100
[quid placet aut odio est, quod non mutabile credas?]
hoc paces habuere bonae ventique secundi.

101 Del. C. G. Schütz. Post 107 trans. Lachmann,
post 102 Vollmer



私が不当に思うのは,粗野だとか魅力なく作られていると
判断されるためではなく,最近作られたという理由から,何でもかんでもが,非難されており,
また,古い作品には,寛容ではなく,名誉と褒賞が要求されていることです.
アッタ*1の劇が,サフラン*2と花々の中上演されたのが
正当かどうか,私が疑えば,殆ど全部の古い世代の人々は,
偉大なアエソープス*3と,博識のロースキウス*3が行ったことを
私が非難しようとしたということで,恥を知る気持ちは死んでしまったと叫ぶでしょう,
それは,彼らは自分が気に入ることでなければ,なにも正しいと思わないからか,
あるいは,若輩の者たちに従い,そして髭もないころに習ったことを,
年取ってからあれは抹消されるべきだと認めるのはみっともないと思うからです.
さらにいえば,ヌマの作ったサリイーの歌*4を讃え,
私同然知らないその歌を,自分だけが知っていると見られたがる者は,
埋もれた才能を愛好し喝采しているわけではなく,
我々の才能を攻撃し,我々と我々の才能を鈍色になって憎んでいるのです.
しかしもし,ギリシア人にとって,新しさが厭われていた度合いが,
我々と同じほどであったら,どの古い作品が今存在することになったでしょう?あるいは,
大衆は,読んでは各々再読するようなものとして,何を持つことになったでしょう?
ギリシアは戦争が終わって*5道楽に
走り,そして,幸運のうちに悪徳に堕落しはじめるや否や,
かつは競技者への熱狂,かつは馬への熱狂に燃え,
大理石や象牙や銅の職人を愛好し,
絵画には顔も心もうっとりとして見蕩れ,
かつは笛吹きを,かつは悲劇俳優に喜びました.
乳母のもとの幼き女児のごとくに,
欲しい欲しいとねだったものを,すぐに満足して捨てました.
[あなたが不変と考えるものが,好かれたり嫌われたりするでしょうか?]*6
よき平和と順境がこのような状態をもたらしていたのです.


*1 ローマ喜劇作家.前78年死亡.
*2 舞台はサフラン水で香りがつけられた.
*3 キケロー時代の有名な役者.
*4 ヌマ・ポンピーリウス.伝説では前715-前673に生きたとされるローマの二代目の王.宗教的行事などを制定し,サリイーと呼ばれるマールスの神官もヌマが創設した.マールス祭には武器を持って踊り,歌を歌ったが,この歌は時代の経過とともに,意味が分からなくなっていった.
*5 ペルシア戦争のこと.プラタイアの戦い(479年)などの後,ギリシアからペルシア軍が追い払われたあと,ギリシア諸国はデーロス同盟を結び(478年),来るべきペルシア軍の襲来に備えて,軍資金を出し合うことになる.もともとアテーナイがこの同盟で指揮権も実質管理も担っており,その上,後にアテーナイに金庫がうつされ,この資金は流用し放題となった.アテーナイはこれにより文化的繁栄を享受することになる.
*6 恐らく後の挿入.



【2012/07/15 00:23】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


ホラーティウス『書簡集』2巻1歌50-75

Ennius, et sapiens et fortis et alter Homerus,   50
ut critici dicunt, leviter curare videtur
quo promissa cadant et somnia Pythagorea.
Naevius in manibus non est et mentibus haeret
paene recens? adeo sanctum est vetus omne poema.
ambigitur quotiens, uter utro sit prior, aufert   55
Pacuvius docti famam senis, Accius alti,
dicitur Afrani toga convenisse Menandro,
Plautus ad exemplar Siculi properare Epicharmi,
vincere Caecilius gravitate, Terentius arte.
hos ediscit et hos arto stipata theatro      60
Spectat Roma potens, habet hos numeratque poetas
ad nostrum tempus Livi scriptoris ab aevo.
interdum volgus rectum videt; est ubi peccat.
si veteres ita miratur laudatque poetas,
ut nihil anteferat, nihil illis comparet, errat;    65
si quaedam nimis antique, si pleraque dure
dicere credit eos, ignave multa fatetur,
et sapit et mecum facit et Iove iudicat aequo.
non equidem insector delendave carmina Livi
esse reor, memini quae plagosum mihi parvo   70
Orbilium dictare: sed emendata videri
pulchraque et exactis minimum distantia miror.
inter quae verbum emicuit si forte decorum,
si versus paulo concinnior unus et alter,
iniuste totum ducit venditque poema.      75

批評家達のいうところでは,賢人で,力強く,
ホメーロスの再来であるエンニウス*1は,ピュータゴラースの夢の約束*2
どのような結果になるか,あまり気にしていないように見えます.
ナエウィウス*3は,ほとんど最近の人のように,人の手にとられ,
そして心に残らないでしょうか.それほどまでに,古の詩はすべて神聖化されています.
どちらがどちらより上かが論争される度に,
パークウィウス*4は博識の古典作家の名声を,アッキウス*5は深淵な古典作家のそれを獲得し,
アーフラーニウス*6のトガはメナンドロス*7にも似合うといわれ,
プラウトゥス*8はシチリアのエピカルモス*9の手本にならってきびきびしており,
カエキリウス*10は荘重さで,テレンティウス*11は芸術性で勝ると言われます.
大ローマはこれらを暗記し,そしてこれらを狭い劇場に詰め込まれて
眺め,これらを,作家リーウィウス*12の世代から,
我々の時代までの詩人とみなし,数えるのです.
時には,大衆は正しくものを見ます.間違える時もあります.
もし古の詩人達を,何ものもそれ以上にはならず,
何ものも彼らに比較されないような形で賛嘆するのなら,彼らは間違っています.
もし,それらの詩人が,あるものをあまりに古くさく,大抵は荒っぽく
語っていると信じ,あるいは多くを締まりなく語っていると認めるなら,
彼らは見る目があり,私に与するもので,そして判断を下しても,ユッピテルの機嫌を損ねません.
私としては,リーウィウスの詩を苛むつもりもなく,あるいは消し去るべきだ
とも思いません.思い起こせばその詩を,小さい頃の私に,鞭の好きな
オルビリウス*13が暗唱してくれましたが.しかし,それが推敲がされたものと見られたり,
すばらしく,そして完璧に極めて近いと見られるのには驚きます.
その詩の中に,偶々光るものが輝いていたり,
詩行が少しばかりましにできているのが一つや二つあるなら,
それが不当にも詩全体をプロデュースして売るのです.


*1 前239-前169.ローマ史の叙事詩 Annales や悲劇・喜劇などを書く.
*2 Annalesの冒頭で,夢の中で彼はホメーロスの生まれ変わりだと語っている.ピュータゴラースは転生を主張していた.
*3 前270頃-前201年.劇作家,叙事詩作家.カルタゴ戦争叙事詩を書く.
*4 前220頃-前130頃.悲劇詩人.エンニウスの甥.
*5 前170-前86頃.悲劇詩人.
*6 前150頃-? ローマが舞台の喜劇 togata (ローマ人の服装であるトガを来て演じるという意味で)を書く.
*7 前343頃-前293頃.ギリシア新喜劇の最重要作家.
*8 前284-前184.もちろん有名な喜劇詩人.
*9 前550-前460頃.コース島生まれで,シチリアに暮らした喜劇詩人.
*10 前180頃.喜劇詩人.
*11 前185-前159.もちろん有名な喜劇詩人.
*12 Livius Andronicus. 前240頃.タレントゥム出身のギリシア人の詩人で,ローマにおける詩の創始者とされる.彼のオデュッセイアのラテン語訳は教科書として使われた.
*13 ベネウェントゥム出身の文法家で,ローマで教師をしており,ホラーティウスの先生であった.



【2012/07/12 03:00】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ


パンダが星になった

センセンだのカクカクだの,変な名前つけようとしたからかな…… 貴重なパンダ誕生を純粋な気持ちで喜べなくなった日本では,死ぬべくして死んだのかもしれません.最悪のDQNネームで呼ばれる事なく死んだというのは,多少は慰めになるでしょうか.今度は中国の大自然の中で産まれて来て欲しいですね.




【2012/07/12 00:02】 COMMENTARII DIURNI | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

TOPへ




PROFILE

  • Author:メレアグロス
  • 気が向いた時にラテン語を訳したりしています.
    ヘレニズムのギリシア語もたまに訳しています.

    問い合わせ先(メールフォーム)
  • RSS1.0
  • CM, TB, ARCHIVE

    COMMENT
  • メレアグロス [06/06 15:20] 
  • outis [06/05 21:42] 
  • メレアグロス [06/05 10:37] 
  • outis [06/01 22:33] 
  • メレアグロス [05/28 18:31] 
  • outis [05/26 23:35] 
  • Succarum [09/24 20:12] 
  • メレアグロス [09/24 00:15] 
  • Succarum [09/23 16:32] 
  • メレアグロス [11/06 01:49] 
    TRACKBACK
  • えいじゅなすの本棚 - 英語, 医学, 投資の専門書レビューブログ:Wheelock's Latin(05/26)

  • ARCHIVE
  • 2016年07月 (1)
  • 2016年05月 (1)
  • 2016年01月 (1)
  • 2015年08月 (1)
  • 2015年07月 (1)
  • 2015年06月 (1)
  • 2015年05月 (2)
  • 2015年04月 (1)
  • 2015年03月 (4)
  • 2015年02月 (1)
  • 2015年01月 (1)
  • 2014年12月 (4)
  • 2014年11月 (24)
  • 2014年10月 (6)
  • 2014年08月 (1)
  • 2014年07月 (3)
  • 2014年06月 (10)
  • 2014年04月 (3)
  • 2014年03月 (3)
  • 2014年02月 (1)
  • 2014年01月 (2)
  • 2013年12月 (3)
  • 2013年11月 (4)
  • 2013年10月 (25)
  • 2013年09月 (1)
  • 2013年08月 (5)
  • 2013年07月 (6)
  • 2013年06月 (1)
  • 2013年05月 (2)
  • 2013年04月 (1)
  • 2013年03月 (1)
  • 2013年02月 (2)
  • 2013年01月 (2)
  • 2012年12月 (1)
  • 2012年10月 (6)
  • 2012年09月 (27)
  • 2012年08月 (32)
  • 2012年07月 (47)
  • 2012年06月 (50)
  • 2012年05月 (3)
  • 2009年10月 (1)
  • 2009年09月 (2)
  • 2009年08月 (12)
  • 2009年07月 (7)
  • 2009年06月 (14)
  • 2009年05月 (2)
  • 2009年03月 (40)
  • 2009年02月 (14)
  • 2009年01月 (75)
  • 2008年12月 (26)
  • 2008年11月 (22)
  • 2008年10月 (60)
  • 2008年09月 (95)
  • 2008年08月 (68)
  • 2008年07月 (42)
  • 2008年06月 (54)
  • 2008年05月 (49)
  • 2008年04月 (49)
  • 2008年03月 (35)
  • 2008年02月 (9)
  • 2008年01月 (27)
  • 2007年12月 (40)
  • 2007年11月 (35)
  • 2007年10月 (26)
  • 2007年09月 (43)
  • 2007年08月 (10)
  • 2007年05月 (33)
  • 2007年04月 (8)
  • 2007年03月 (61)
  • 2007年02月 (51)
  • 2007年01月 (75)
  • 2006年12月 (68)
  • 2006年11月 (23)
  • 2006年10月 (56)
  • 2006年07月 (1)
  • 2006年06月 (7)
  • 2006年05月 (125)
  • 2006年04月 (77)
  • 2006年02月 (34)
  • 2006年01月 (69)
  • 2005年12月 (54)
  • 2005年11月 (50)
  • 2005年10月 (7)
  • 2005年09月 (106)
  • 2005年08月 (38)
  • 2005年07月 (4)
  • 上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。