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ホラーティウス『書簡集』2巻2歌205-216 (完結)

'non es avarus: abi. quid? cetera iam simul isto 205
cum vitio fugere? caret tibi pectus inani
ambitione? caret mortis formidine et ira?
somnia, terrores magicos, miracula, sagas,
nocturnos lemures portentaque Thessala rides?
natales grate numeras? ignoscis amicis?   210
lenior et melior fis accedente senecta?
quid te exempta levat spinis de pluribus una?
vivere si recte nescis, decede peritis.
lusisti satis, edisci satis atque bibisti:
tempus abire tibi est, ne potum largius aequo 215
rideat et pulset lasciva decentius aetas.'

「お前は貪欲ではないと.よろしい.ではどうか?今,お前のその
悪徳と同時に,他の悪徳も逃げ去ったのか?お前の胸は,虚しい
野心はなくなっているか?死の恐怖と怒りはなくなっているか?
夢,魔術の恐怖,奇跡,魔女ども,
夜の悪霊ども,テッサリア*1の怪物を,お前は笑い飛ばせるか?
誕生日を感謝とともに数えられるか?友人たちを赦せるか?
老年が近づくほどに,より穏やかに,より善良になれるか?
多くの刺の中から,一つを抜いたところで,どうしてお前に気休めとなろう?
もしお前が正しく生きることを知らねば,経験者たちに譲るがよい.
十分お前は遊び,十分飲み食いした.
普通以上にたっぷり飲んだくれたお前が,やんちゃをするほうが似合う世代に
笑い者にされ,打擲されずに済むように,お前の去るべき時が来たのだ」


*1 地図CcDc.魔術で有名であった.


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【2012/08/04 03:32】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ホラーティウス『書簡集』2巻2歌180-204

'gemmas, marmor, ebur, Tyrrhena sigilla, tabellas, 180
argentum, vestes Gaetulo murice tinctas
sunt qui non habeant, est qui non curat habere.
cur alter fratrum cessare et ludere et ungui
praeferat Herodis palmetis pinguibus, alter
dives et importunus ad umbram lucis ab ortu  185
silvestrem flammis et ferro mitiget agrum,
scit Genius, natale comes qui temperat astrum,
naturae deus humanae, mortalis in unum
quodque caput, voltu mutabilis, albus et ater.
utar et ex modico, quantum res poscet, acervo 190
tollam nec metuam, quid de me iudicet heres,
quod non plura datis invenerit: et tamen idem
scire volam, quantum simplex hilarisque nepoti
discrepet et quantum discordet parcus avaro.
distat enim, spargas tua prodigus an neque sumptum
invitus facias neque plura parare labores,    196
ac potius, puer ut festis quinquatribus olim,
exiguo gratoque fruaris tempore raptim.
pauperies immunda modo ut procul absit: ego utrum
nave ferar magna an parva, ferar unus et idem. 200
non agimur tumidis velis aquilone secundo:
non tamen adversis ducimus austris,
viribus, ingenio, specie, virtute, loco, re
extremi primorum, extremis usque priores.

「宝石,大理石,象牙,エトルリアの彫像,絵画,
銀器,アフリカ産の紫で染められた衣服を
持たないような人々,持つことを欲せぬ人がいる.
どうして兄弟の一方は怠け,遊び,香油を塗ることを
ヘロデ王の豊かなナツメヤシ以上に好み*1,一方は
裕福ながら無闇に日の出から日没まで
炎と鉄で森の畑を拓いているのか,ということは,
星を司る生まれついての伴侶であり,
人間の性の神であり,一人一人の中にある
死すべき存在で,顔のよく変わり,喜怒哀楽を表すゲニウス*2が知っている.
私は,必要とされる分だけ取り,そして用いるだろう,
そして,与えたそれ以上のものが見つからないという理由で,
自分について相続人がどう判断するかを,恐れはすまい.しかし,その私は
知りたいものだ,素朴で快活な者が,浪費家と
異なり,そしてどれほど節約する者が,貪欲な者と異なるかを.
なぜなら,お前が放蕩して自分の物をばらまくのか,それとも嫌々支出する
こともなく,またより多くの物を持とうと苦労することもなく,
そうしてむしろ,かつて子供の頃,五日祭*3の時にそうしたように,
短く楽しい時を急いで享受するのかでは,大きな違いがあるのだ.
汚らわしい困窮が,遠くにありさえすればよい!私の方は,
大船に乗ろうとも,小舟に乗ろうとも,一人の同じ私である.
順風の北風に膨らむ帆にて,私は運ばれてはいない.
しかしながら,逆風の南風とともに,人生を過ごしているわけでもなく,
力,才能,容姿,美徳,地位,財産の点で,
私は上位者群では最下位,下位者群では常に先行しているのだ.


*1 聖書に登場するヘロデ王.広大なナツメヤシの森を持っていた.
*2 個人の生まれついての守護神.
*3 ミネルワ女神の祭日で,3月19日(すなわち3月のIdus からその日も含めて数えて5日目)に祝われる.学童の祭りで,プレゼントなどがもらえた.



【2012/08/04 02:10】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ホラーティウス『書簡集』2巻2歌158-179

'si proprium est, quod quis libra mercatus et aere est,
quaedam, si credis consultis, mancipat usus:
qui te pascit ager, tuus est, et vilicus Orbi,    160
cum segetes occat tibi mox frumenta daturas,
te dominum sentit. das nummos, accipis uvam,
pullos, ova, cadum temeti: nempe modo isto
paulatim mercaris agrum, fortasse trecentis
aut etiam supra nummorum milibus emptum. 165
quid refert, vivas numerato nuper an olim?
emptor Aricini quondam Veientis et arvi
emptum cenat olus, quamvis aliter putat; emptis
sub noctem gelidam lignis calefactat aenum;
sed vocat usque suum, qua populus adsita certis 170
limitibus vicina refugit iurgia: tamquam
sit proprium quicquam, puncto quod mobilis horae
nunc prece, nunc pretio, nunc vi, nunc morte suprema
permutet dominos et cedat in altera iura.
sic quia perpetuus nulli datur usus et heres    175
heredem alterius velut unda supervenit undam,
quid vici prosunt aut horrea? quidve Calabris
saltibus adiecti Lucani, si metit Orcus
grandia cum parvis, non exorabilis auro?

「秤と銅銭とで*1人が買ったものが所有物となるものがあるなら,
あるものは,もし法律家を信じるならば,使用によって*2所有権を生ずる.
お前を養う畑は,お前のものであり,またオルビウスの管理人は,
やがてお前に穀物を与えるであろう耕作地を耕すことで,
お前が主人であると感じるのだ.お前は金を出し,葡萄を,
雛を,卵を,酒壷を手に入れる.明らかにそのようにして,
お前は少しずつ畑を買っているのだ.おそらく30万セーステルティウスか,
あるいはそれ以上で買われた畑をだ.
最近払ったもので食べていこうと,かつて支払ったもので食べていこうと,何の差があるか?
アリーキア*3の畑,ウェイイー*4の畑の買い手は,たとえ他の仕方でそうしていると思おうとも,
買った野菜を食べているのだ.買った薪で
寒い夜には湯沸かし釜を暖めるのだ.
しかし,確かな境界線に植えられたポプラが隣人との争いを
回避している所のことを,彼はずっと自分のものだと言う.
時の流れの中,嘆願で,力ずくで,最期の死によって,
一瞬でその主人を替え,他人の所有権に入るものが,
あたかも何でも自分のものであるかのごとくに.
なんとなれば,このように,いかなるものにも永遠の使用は許されず,また相続人が
別の人の相続人を追うのは,あたかも波が波を越えるが如くなのだから,
地所や穀倉が何の役に立つのか?あるいは,もし金でも籠絡できぬ死神が,
貧富ともども刈り取るのであれば,カラブリアの
森に続くルーカーニア*5が何の役に立つのか?


*1 mancipatioという習慣をさす.これは5人の成人の証人とlibripensという名でよばれる,青銅の秤を持った人の面前で,あるものの所有権を持とうとする人物が,青銅貨を手にもって「この物をローマ市民の法により私の物となると私は宣言し,そしてそれは私によってこの青銅貨と青銅の秤によって購われん」と宣言し,青銅貨で青銅の秤を打ち,自分に所有権を引き渡す人物に,対価の如くその貨幣を渡すというもの.
*2 1年ないしは2年の継続的使用により,所有権を生ずるという法律がある(usurpatio).ただし,文脈からは,この「使用」は,「もし法律家を信じるならば」の表現から想像できるような正確な法律的な意味ではなく,単に実際の使用のことを指しているようである.
*3 ローマの南南東に20kmほど離れた町.アッピア街道沿い.地図Ba.
*4 ローマから北北西に20km弱ほど離れたところの町.地図Ge.
*5 カラブリア(地図EbFb)とルーカーニア(地図GbHb)はもちろん,広大な土地.前者は冬に,後者は夏に,豊かな牧草を提供する.



【2012/08/02 02:50】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ホラーティウス『書簡集』2巻2歌146-157

'si tibi nulla sitim finiret copia lymphae,
narrares medicis: quod, quanto plura parasti,
tanto plura cupis, nulline faterier audes?
si vulnus tibi monstrata radice vel herba
non fieret levius, fugeres radice vel herba  150
proficiente nihil curarier: audieras, cui
rem di donarent, illi decedere pravam
stultitiam, et, cum sis nihilo sapientior, ex quo
plenior es, tamen uteris monitoribus isdem?
at si divitiae prudentem reddere possent,  155
si cupidum timidumque minus te: nempe ruberes,
viveret in terris te si quis avarior uno.

「もし,どんな大量の清水も,お前の乾きを止めぬのなら,
お前は医者たちに話すはずだ.多く備えれば備えるほどに,
より多くのものをお前が欲しくなることを,お前は誰にも打ち明ける勇気はないのか?
もし傷がお前に処方された根や薬草により
快方に向かうのでなければ,お前は根や薬草をよすだろう,
それらに何の薬効もないのだから.お前は聞いていたはずだ,
神々が財を送りし者からは,曲がった愚かさは
去るということを,そうでありながら,お前が金持ちになってから,
お前は全然より賢くなっていないが,それなのにお前は同じ忠告者を用いているのか?
一方,もし財産がお前を賢明にし,
お前の貪欲さも小心も減ずるということなら,当然お前は赤面するはずだ,
もし誰かお前よりも貪欲な者がこの世に一人でもいれば*1


*1 つまり財産が人間を賢明にするなら,財産を得ようとする気持ちである貪欲は人間を賢明にするということになってしまう.当然貪欲が貪欲自体を減ずることはないので,お前より貪欲な人間がいれば,それだけで自分の間違いがわかって恥ずかしくなるだろうということ.(Brink ad loc.参照)



【2012/07/30 02:41】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ホラーティウス『書簡集』2巻2歌126-145

praetulerim scriptor delirus inersque videri,
dum mea delectent mala me vel denique fallant,
quam sapere et ringi. fuit haud ignobilis Argis,
qui se credebat miros audire tragoedos
in vacuo laetus sessor plausorque theatro,  130
cetera qui vitae servaret munia recto
more, bonus sane vicinus, amabilis hospes,
comis in uxorem, posset qui ignoscere servis
et signo laeso non insanire lagoenae,
posset qui rupem et puteum vitare patentem. 135
hic ubi cognatorum opibus curisque refectus
expulit ellaboro morbum bilemque meraco
et redit ad sese, 'pol, me occidistis, amici,
non servastis' ait, 'cui sic extorta voluptas
et demptus per vim mentis gratissimus error.' 140
nimirum sapere est abiectis utile nugis
et tempestivum pueris concedere ludum,
ac non verba sequi fidibus modulanda Latinis,
sed verae numerosque modosque ediscere vitae.
quocirca mecum loquor haec tacitusque recordor: 145

自分の欠点が嬉しかったり,あるいはそもそもそれに気付かないうちは,
理性的だとか,自分に牙を剥いているとか見られるよりは.狂った作家,へたくそな作家と
見られる方を,僕は好むかもしれません,かつてアルゴスに,極めて高貴な人がおり,
その人物は,自分がすばらしい悲劇を聞いていると信じて,
空っぽの劇場に嬉々として座り,拍手をしていましたが,
人生の他の務めは真っ当な仕方で
守り,実によき隣人であり,愛想の良い主人で,
妻には気さくで,酒瓶の封印を損なっても
奴隷たちを容赦することができて怒り狂う事もなく,
断崖や開いた竪穴も避ける事ができるような人でありました.
この者が,親類たちの助力と気遣いにより,
純粋なエッレボルス*1の処方で狂疾を追い出して回復し,
我に返って言うには「やれやれ,友人たちよ,君たちは
私を殺したのであって,救ったのではありません.この私からこんな風に楽しみが奪われ,
力ずくで最も嬉しい精神の誤謬が奪い取られたのですから」
当然,より有益なのは,下らぬことを捨てて分別を持ち,
子供の時にする遊びは子供たちに譲り,
ラティウムの弦に調子を合わせられる言葉を探すのではなくて,
真の人生の韻律と旋律を熟知することのほうです.
それ故,次のようなことを僕は独り言ち,黙って思い出すのです.


*1 狂気に効くとされた薬草.クリスマスローズともいわれる.http://de.wikipedia.org/wiki/Schneerose参照.



【2012/07/28 14:15】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ホラーティウス『書簡集』2巻2歌106-125

ridentur mala qui componunt carmina; verum
gaudent scribentes et se venerantur et ultro,
si taceas, laudant quidquid scripsere beati.
at qui legitimum cupiet fecisse poema,
cum tabulis animum censoris sumet honesti:  110
audebit, quaecumque parum splendoris habebunt
et sine pondere erunt et honore indigna ferentur,
verba movere loco, quamvis invita recedant
et versentur adhuc intra penetralia Vestae;
obsecurata diu populo bonus eruet atque    115
proferet in lucem speciosa vocabula rerum,
quae priscis memorata Catonibus atque Cethegis
nunc situs informis premit et deserta vetustas;
adsciscet nova, quae genitor produxerit usus.
vemens et liquidus puroque simillimus amni   120
fundet opes Latiumque beabit divite lingua;
luxuriantia compescet, nimis aspera sano
levabit cultu, virtute carentia tollet,
ludentis speciem dabit et torquebitur, ut qui
nunc Satyrum, nunc agrestem Cyclopa movetur. 125

ひどい歌を書く者たちは笑いものです.しかし
彼らは書いているのが楽しくて,そして自らを崇めもし,
もし君が黙っていれば,彼らが書いたものを何でも自ら賞賛します.
一方,全うな詩を書くことを望む者は,
蝋板と一緒に,よき検閲者の心構えも持つのです.
何であれ,あまり輝きを持ちそうにない言葉,
重みを持たなそうな言葉,名誉に相応しくないと言われそうな
言葉は,敢えて彼らはその場所から削ります.それらの言葉がたとえ出て行くことを拒もうと,
ウェスタの内奥*1に今までいたものであろうともです.
彼は,長い間知られずにいたものを,実直に掘り起こし,そうして
古のカトーやケテーグス*2らによって用いられていたものの,
今はひどい埃と,人のよりつかぬ古さの下に推し込められている,
諸物の適切な用語に日の目を見させるでしょう.
また,慣用が父親となって生み出した,新しい言葉も受け入れるでしょう.
勢いよく,そして流麗に,清純な川にも全くそっくりに,
彼は財を注ぎ,豊かな言葉により,ラティウムを富ましめます.
繁茂しすぎるものは切りつめ,あまりに荒れたものは
健全に養い和らげ,力なきものは取り除き,
遊ぶものの相好はしているでしょうが,苦心をする様は,
あたかも時にサテュロスを,時に野卑なキュクロープスを演じるもの*3の如くです.


*1 ウェスタの神殿の内奥には,それに属する者以外入る事はできなかった.
*2 前者は前213年-149年,後者は前204年ごろ執政官.どちらも弁論で有名.
*3 簡単に踊っていても,実際には厳しいトレーニングの結果ということ.



【2012/07/27 18:24】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ホラーティウス『書簡集』2巻2歌87-105

frater erat Romae consulti rhetor, ut alter
alterius sermone meros audiret honores,
Gracchus ut hic illi, foret huic ut Mucius ille.
qui minus argutos vexat furor iste poetas?   90
carmina compono, hic elegos. Mirabile visu
caelatumque novem Musis opus! adspice primum,
quanto cum fastu, quanto molimine circum-
spectemus vacuam Romanis vatibus aedem:
mox etiam, si forte vacas, sequere et procul audi, 95
quid ferat et qua re sibi nectat uterque coronam.
caedimur totidem plagis consumimus hostem
lento Samnites ad lumina prima duello.
discedo Alcaeus puncto illius; ille meo quis?
quis nisi Callimachus? si plus adposcere visus, 100
fit Mimnermus et optivo cognomine crescit.
multa fero, ut placem genus irritabile vatum,
cum scribo et supplex populi suffragia capto;
idem, finitis studiis et mente recepta,
obturem patulas impune legentibus aures.   105

ローマでは,弁論家は法律家の兄弟のごとくで,一方は
一方の褒め言葉しか話の中では聞かず,
あちらにとってはこちらはグラックス*1,こちらにとってはあちらはムーキウス*2となるほどでした.
どうしてこんな狂気が,声朗々たる詩人を,それ以上に悩ませないということがあるでしょう?
僕は叙情詩を書き,この者はエレゲイアを書きます.なんと見るも驚くべき,
九柱のムーサらにより彫琢された作品か!まず見てください,
どれほどの誇らしさと,どれほどの尊大さとともに,
我々がローマ詩人のために空けられた神殿*3を見渡しているかを.
やがてまた,もしたまたま時間があれば,ついて来て,離れた所から聞いてください,
二人とも何を差し出し,何でもって自分の花冠を編むのかを.
我々は,サムニウム剣闘士*4のごとく,緩慢な戦いを,夕暮れまで行いつつ
切られ合い,同じ回数ぶんだけ,打撃で相手を消耗させます.
彼の投票で,僕はアルカイオスとなって退場します.彼は僕ので,何になるのか?
カッリマコス以外の何になるでしょう*5?もし彼がもっと大きいものを要求するようなら,
彼はミムネルモス*6になり,また,望む呼び名を取ってより尊大になります.
僕が詩を書いており,そして拝んで人々の票あつめをする間,
詩人たちという気難しい種族を宥めるために,僕は多くのことを我慢します.
その僕も,熱意は尽き,正気を取り戻した今,
朗読している者に対して,開いた耳を閉ざしても,罰はあたりますまい.


*1 グラックスの改革で有名なグラックス兄弟のこと.弁論家としても有名.
*2 著名な法律家のP.ムーキウス・スカエウォラは,数名の可能性があるが,おそらく,前133年に執政官で,個人法の創始者であるそれのこと.
*3 『書簡集』2巻1歌216(*3)参照.
*4 イタリア中部のサムニウム(地図Da)人風の出で立ちで戦う剣闘士.
*5 この部分は,ローマのカッリマコスを自称したプロペルティウスを指すとも言われているが,反対意見も多い.
*6 コロポーン(地図Bc)のエレゲイア詩人(前6世紀).



【2012/07/25 05:22】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ホラーティウス『書簡集』2巻2歌65-86

praeter cetera me Romae poemata censes   65
scribere posse inter tot curas totque labores?
hic sponsum vocat, hic auditum scripta, relictis
omnibus officiis; cubat hic in colle Quirini,
hic extremo in Aventino, visendus uterque.
intervalla vides humane commoda. 'Verum    70
purae sunt plateae, nihil ut meditantibus obstet.'
festinat calidus mulis gerulisque redemptor,
torquet nunc lapidem, nunc ingens machina tignum,
tristia robustis luctantur funera plaustris,
hac rabiosa fugit canis, hac lutulenta ruit sus:  75
i nunc et versus tecum meditare canoros.
scriptorum chorus omnis amat nemus et fugit urbem,
rite cliens Bacchi somno gaudentis et umbra:
tu me inter strepitus nocturnos atque diurnos
vis canere et contracta sequi vestigia vatum?  80
ingenium, sibi quod vacuas desumpsit Athenas
et studiis annos septem dedit insenuitque
libris et curis, statua taciturnius exsit
plerumque et risu populum quatit: hic ego rerum
fluctibus in mediis et tempestatibus urbis    85
verba lyrae motura sonum conectere digner?

何よりも,ローマで僕が詩を書くことができると君は思うのですか?
これほど多くの心配事とこれほど多くの苦労の中にあって?
ある者は保証人にするために,ある者は書いたものを聞かせるために呼びつけ,
僕はすべての仕事を後にすることになります.ある者はクィリーヌスの丘*1で,
あるものはアーウェンティーヌスの丘*1で病に伏しており,どちらも見舞わねばなりません.
その感覚ときたら,ご存知のとおり,御丁寧にも都合良い距離です.「しかし
街路は清潔で,思索を妨げるものも何一つ無い程です」
熱心な請け負い業者は,驢馬と驢馬引きと共に急いでおり,
クレーンは時に石を,時に木材を巻き上げ,
悲しみの葬列は,頑丈な荷車と争い,
あちらでは怒り狂う犬が逃げ,あちらでは泥まみれの豚が突進します.
さあ君,行きたまえ,そうして自分で麗しき詩行を思索して見たまえ.
作家の群は皆,森を愛し,都を避けますが,
それは本性通り,眠りと日陰を愛でるバッコス*2の被庇護民たるがゆえです.
君は僕に,昼夜を問わず続く騒音の中で
歌うことを,かつ詩人達の残した細い足跡を踏んで行く*3ことを望むのですか?
人気のないアテーナイを選んで,そうして
七年間の研究に身を捧げ,本と心労とに
老いた天才が,彫像よりも黙りこくって外に出ると,
大抵は人々を笑いころげさせることになります.
人波の真っ只中,そして都の嵐の真っ只中で,
リュラの音を揺さぶるであろう言葉を,僕はつなぐ気になるでしょうか.


*1 地図A参照.クィリーヌスの丘は北のほう,アーウェンティーヌスの丘は南端.距離にしておよそ2km離れている.
*2 『歌集』3巻25歌参照.
*3 カッリマコス的な詩人の立場は,あまり踏まれた事の無い道を行くこと.カッリマコス『縁起集』断片1.25-8行参照.比喩的に語られているところの,人にあまり踏まれていない小径(すなわち,あまり他の人が歌っていないテーマ)と,現実のローマの喧噪に満ちあふれた雑踏が対比されている.



【2012/07/25 00:17】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ホラーティウス『書簡集』2巻2歌41-64

Romae nutriti mihi contigit atque doceri,
iratus Grais quantum nocuisset Achilles.
adiecere bonae paulo plus artis Athenae,
scilicet ut vellem curvo dinoscere rectum
atque inter silvas Academi quaerere verum.   45
dura sed emovere loco me tempora grato,
civilisque rudem bellli tulit aestus in arma
Caesaris Augusti non responsura lacertis.
unde simul primum me dimisere Philippi,
decisis humilem pinnis inopemque paterni    50
et laris et fundi paupertas impulit audax,
ut versus facerem. sed quod non desit habentem
quae poterunt umquam satis expurgare cicutae,
ni melius dormire putem quam scribere versus?
singula de nobis anni praedantur euntes:    55
eripuere iocos, venerem, conviva, ludum,
tendunt extorquere poemata: quid faciam vis?
denique non omnes eadem mirantur amantque:
carmine tu gaudes, hic delectatur iambis,
ille Bioneis sermonibus et sale nigro.      60
tres mihi convivae prope dissentire videntur,
poscentes vario multum diversa palato.
quid dem? quid non dem? renuis tu, quod iubet alter.
quod petis, id sane est invisum acidumque duobus.

僕はローマで養われ,そうして,怒れるアキッレウスが
どれほどギリシア勢に損害を与えたのか*1を教育される機会を得ました.
よきアテーナイ*2は,もう少し多くの教養を加えてくれました.
すなわち,僕は曲がったことから正しいものを区別したいと欲し,
そうしてアカデーモス*3の森の中,真理を探求したいと思うに至るほどでした.
しかし,厳しい時代が僕を心地よい場所から引き離し,
そうして市民戦争*4という苦難が,新兵の僕に武具をまとわせました,
その武具はアウグストゥス様の腕力には応えるべくもないものでしたが,
そうして,ピリッピー*5の戦いが僕を解放するや否や,
羽を切られて地に落ちて,先祖代々の家神も
地所も欠いた僕を,赤貧が追い立て,
詩行を書くこととなりました.しかし,欠ける物とてなき僕を,
一体どんな毒人参が十分清めることができるでしょうか,
詩を書くよりも寝ているほうがよいと思っているので無い限り?
過ぎ行く年は,僕から一つ一つものを奪って行きます.
それは冗談を,愛を,諍いを,見世物を奪い取り,
今詩をもぎ取ろうとしています.僕に何をすることを君は望むのですか?
最期に言えば,皆が同じものを賛嘆し,愛好する訳ではありません.
君は叙情詩を喜び,この者はイアンボスが,
かの者はビオーン*6風の談話とブラックジョークが楽しいのです.
三人の宴客が,異なる味の好みから,大いにかけ離れたものを望んで,
殆ど一致をみないかのごとくのように思われます.
何を僕は出しましょう?何を出さずにおきましょう?他の人の注文を,君は嫌だといいます.
君が望むものは,それは他の二人には全く嫌いで不味いものなのです.


*1 ホメーロス『イーリアス』の内容.
*2 ローマの若者は,教育の仕上げとして,しばしばアテーナイへ留学した.
*3 アテーナイの英雄.その墓所の周りの森に,プラトーンの学園アカデーメイアがあった.
*4 前42年11月-12月,共和制派でカエサル暗殺者,マールクス・ブルートゥス,カッシウスらと,カエサル派アントーニウス,オクターウィアーヌスらの決戦のこと.ホラーティウスは共和制派で出兵.
*5 ピリッピーはマケドニアの町(地図Fa.旧名クレーニデス).市民戦争の戦場となる.
*6 前300年頃の犬儒派の哲学者詩人.



【2012/07/24 05:11】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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ホラーティウス『書簡集』2巻2歌26-40

Luculli miles collecta viatica multis
aerumnis, lassus dum noctu stertit, ad assem
perdiderat: post hoc vehemens lupus et sibi et hosti
iratus pariter, ieiunis dentibus acer,
praesidium regale loco deiecit, ut aiunt,     30
summe munito et multarum divite rerum.
clarus ob id factum donis ornatur honestis,
accipit et bis dena super sestertia nummum.
forte sub hoc tempus castellum evertere praetor
nescio quod cupiens hortari coepit eundem   35
verbis, quae timido quoque possent addere mentem:
'i, bone, quo virtus tua te vocat, i pede fausto,
grandia laturus meritorum praemia. — quid stas?'
post haec ille catus, quamvis rusticus, 'ibit,
ibit eo, quo vis, qui zonam perdidit', inquit.   40

ルクッルス*1の兵士の一人が,多くの苦難とともに集めた
貯金を,夜に疲れていびきをかいているうちに,一文に至るまで
失ってしまいました.この後,彼は激した狼となり,自分と敵とに
等しく腹を立て,空腹で歯を鋭くして,
王*2の守備隊を,極めて防御が行き届き,
多くの財で満ちていた場所から追い出したということです.
この行為で名を挙げ,彼には立派な褒賞が与えられ,
そして二千セーステルティウスの金を受け取りました.
たまたまこの事があったすぐ後,指揮官がどこか知らない要塞を
破壊することを欲して,同じ兵士を,
臆病な兵士にも勇気を注入できそうな言葉で,鼓舞し始めました.
「行くがよい,良き兵よ,お前の勇気が呼ぶところへ,幸運もたらす足にて
功績に対する巨大な褒美を得んとして行くがよい.——なぜ突っ立っている?」
この言葉の後,彼は田舎者ではありましたが,機敏にも「行くでしょう,
あなたの欲するところに行くでしょう,胴巻を無くした奴が」と言いました.


*1 L.リキニウス・ルクッルス(前118-前56年).このエピソードは前76-64年の第3次ミトリダテース戦争のもの.ルクッルスは前74年-前76年に,ミトリダテース王に勝利して,逃亡させている.
*2 ミトリダテース王.



【2012/07/23 04:41】 Horatius Epistulae | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) | 記事修正

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